第3話 トップシークレット
「エリザ、教えてくださらない?貴女の昔見ていた夢を……。」
私の夢?私がお嬢様のメイドになる前の夢?
「ちょっと待ってください。少し考えても宜しいでしょうか?」
「ええ、ゆっくり考えてください。ここがあなたの分岐点となる場所ですから。」
考えろ、私。まず、お嬢様が言っていた事を思い出せ。確か鑑定のスキルが使えるようになったと言っていたわね。と言うことは、私が休日に鈍らない程度にやっていたこと――――武術の心得があることは知っているって事でいいかな。ただ、諦めたものがあることは分かっている。でも、それが何かは判断がつかないってとこかな。だとすると、なぜ私なのかがよくわからないな。ここを聞いてみないとわからない。
「お嬢様。一つ質問があるのですが宜しいでしょうか?」
「ええ、いいですよ。」
「お嬢様は、なぜ私にその話をしたのですか?他の方――――旦那様や兄君、姉君、執事のセバスチャン様など、私より上の者がおります。その方々を差し置いてなぜ私なのかをお教えいたたければと思います。」
「それは、私のスキルの一つ【人材発掘】の効果です。私が顔を知っている人物でこれから先有望な人材を見抜くことができるスキルです。お兄さまやお姉さまもそうなのですが、あなたもスキルが反応したのです。ですから、いつもお世話になっているエリザにと、邪心もないですし。」
「えっ?いくつスキルがあるんですか。しかも邪心まで分かるんですね。で、他の人にはまだ【鑑定】できてないんで、まず信用できる私からと言うわけですか。」
「あ、スキルは19個、職業は3つですね。」
「はあっ!!何ですかそれ!スキルはともかく職業3つって!」
「はい、領主、賢者、狩人ですね。」
「いや、どんな職業かを聞いた訳じゃあ――――って、どうでもいいか。もうなんか規格外過ぎて……。」
「そうですね、【知識】スキルによると一般的には職業は1つ、職業レベルも最高10だそうですし、スキルレベルも職業レベルより上がらないらしいですし。私は両方とも20を超えてるものが多いですし。」
「あーそりゃあ信用できるものにしか話せないじゃない。6歳でその【鑑定】と【人材発掘】と【知識】のスキル持ちなんて、利用するだけ利用されるわ、こりゃ。」
「そうなることは目に見えてます。そして、お父様も心の中では私を利用する可能性を棄てきれません。」
「えっ?」
「万が一、そういう事になったら、私が自由になるためにこの屋敷を捨てなければならない。その時、私の身を護ってくれる人、私に付いてきてくれる人を先に確保しておく必要があるでしょ。」
「なるほど。」
なに、この子。どうなったとしても必ず生き延びるよう私に声を掛けてくれたんだ。
確かに、身の回りの世話をしている私が味方である意味がある。しかも、戦えるなら護衛を兼ねられる。確かに人材として、まず最初に確保するわ。しかも、ここまでぶっちゃけてくれると言うことは、私を完全に信用しているってことだし……。よしっ!腹括った!
「お嬢様。」
「はい。」
「一生お嬢様の側にて、貴女を守らせていただきます。」
「いいんですかっ!?」
「いや、それをお嬢様が言うんですか。まったく。」
「でも、一応あなたの雇い主はお父様ですよ?」
「配置換えされるなら、即辞めてお嬢様の護衛として雇ってもらうことにします。そうですね――――給与はお嬢様のお小遣いから出してもらいます。」
「そうですね。職業が魔法戦士なんで合ってますね。」
「魔法戦士って……私、魔法使えるんですか!」
「ええ使えます。火と土の魔法ですね。」
「そんなことまで分かるんだぁ……。ますます秘密にしなきゃ。」
「教えましょうか?私は使えませんけど、【魔術知識】のスキルがあるので大抵の魔法はわかりますよ。」
「もうホントなんなのこのトップシークレットの塊は!しっかりと守る体制ができなかったらヤバいじゃない。」
「エリザが最後の砦になるので、よろしくお願いします。」
「いや、よろしくって言われたって、私一人じゃ難しいですよ。」
「いえ、これから味方を増やしていく予定ですから。まあ先に逃走ルートですけど。」
「え、逃げるんですか?」
「最悪の場合ね。その場合は、逃げた先で人材を集めて男爵家を打倒し、お父様を廃して私か兄様姉様の誰かを男爵にしてか、冒険者になって有名になって爵位を貰うとかかな。」
「あ、結構考えてるみたいね。」
「ちなみに、どの場合でも私の隣にあなたはいるから。」
「あ、やっぱりそうなんだ……。まあ冒険者とか憧れてたからいいけど。」
「それが、エリザの幼少期の夢ですか?」
「あー、私の夢は、剣一つでどこまでできるかだったんだけど、お嬢様がメイドとしてでなく戦士としての才能で買ってくれたので十分です。あとはお嬢様を守るため、どこまで伸ばせるかですね。」
「期待してますよ。では、明日の予定なのですが……。」
そして、お茶の時間は終わった。
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