三人の夏

浅野浩二

第1話三人の夏

三人の夏


ある夏のイメージが思い出されるのであるが、その年は私にとって最も暗い年であり、一日中家にこもりきりだった。8月がおわってから、ある海岸へ行った。海には、一人の中学か、高校の女の子と、二人の男の子、きっと学校の友達だろう、が、いたが、その光景がすごくエロティックで、美しい。水をかけあったり、追い駆けっこをして、つかまえたり、もぐって水中からクラゲのようにチョッカイをかけたりしている。水着姿をみられることは、女にとって大変、恥ずかしい。同級生の男の子は、彼女に、海に行こう、と、ごく自然に、数学の時間のあと、言ったりして、彼女も、ごく自然に、うん、いいよ、なんぞと、言って、三人で海へ行ったのだが、彼女も男の子もうわべは、自然をよそおっていたが、彼女は、みられることに、刺されるような、恥ずかしい、ほのあまい、高校生くらいの年頃の子にとって、一番恥ずかしい、つらい快感を、そして、男は、近づきたいが、近づきすぎては、焼かれてしまう、イカルスのような切ない悩み、と、脳裏にやきついて、永遠に、死ぬまで、忘れない、いつもは、制服に、スカートの鎧で守っているのに、裸同然の姿を、みて、みられ三人は、たのしげに、夕風にふかれて、トロピカルジュースをのんだり、しているが、二人の男は、家に帰って、彼女の水着の輪郭を、思い出し、苦しく、何度も、はげしく自らを汚す。三人が二学期、学校で、あった時、彼女は、もう自分は、安全だとか、みせたのは、一度だけで、もうみせない、とか、二人が、あのあと、悩んだだろう、ことだとかを、優越感をもって、授業をうける。自分が女であることのよろこびを残暑に感じて。つまらない数学の授業だが、最高の夏だったと思いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三人の夏 浅野浩二 @daitou8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ