第6話 カタチの無いモノ
普段は私をどんな方法で虐めようかと作戦を考えてばかりな人達も、みんな自分の意思で同じ場所に集まる日があった。
週に一度、場所は大会室で。
実は大会室の壁には大きなテレビが付いている。
リミヤがしわくちゃな親指でリモコンのボタンを押すと、カチッと音を立ててテレビが付いた。
時間は十七時半。
テレビは輝かしい宮殿と、金色の装飾が部屋一面にされ、豪勢な家具で飾られた神秘的な光景を映している。
テレビの中の人達はみんなドレスやスーツで、部屋とテレビの中の明るさの違いからか別の世界のように見えた。
「聖女様のご入場です!」
マイクを持った女性が興奮しながら言った。
すると、金色の部屋の扉が開き、赤いマットの道を少女が歩いてくる。
「限り無く白色の髪に透き通るような青色の瞳、雪を写したような真っ白な肌に純白のドレスを身に纏う少女の姿は、まるで女神の生まれ変わりの様だ。」
国民は口を揃えてこう言った。
私も例外では無かった。
まつ毛から何から真っ白な少女はそっと瞬きをして、ほんのりピンク色の唇を動かした。
「ご来賓、ご視聴の皆様、ごきげんよう。私の為に集まってくれてありがとう。」
少女は微笑みながらその場に居る人々に語り掛ける。
「さて、この披露会を毎週行う事ができるのは、一重に国民の皆様のお陰でございます。この場でお礼申し上げます。」
少女は笑顔で頭を少し下に傾けた後、もう一度みんなの方を向き直って言った。
「私、聖愛は神の御加護を得る事ができますゆえ、毎日お祈りをさせて頂いております。私が毎日心を込めてお祈りをするお陰で、この国の安寧は守られるでしょう。」
「聖女様万歳!万歳!万歳!」
少女が後ろに下がると、人々は熱意と活気に満ち溢れた声で叫んだ。
その場は国民から少女への忠誠心で溢れかえっていた。
それを満足気な笑みを浮かべて見守る少女。
まるで世界の理不尽を突きつける様な光景に、相変わらず私は不満を抱かずには居られなかった。
(容姿や生まれだけでここまで待遇が違うのなら、自分は裕福な家庭に生まれたかったな。)
そして、しばらく偉い人達のお話があったあと番組は終わった。
王女「聖愛」
この日本において無くてはならない存在。
彼女が息をするお陰でこの国は最悪の事態を免れることが出来る、らしい。
国民は彼女をこれでもかと言うほど慕った。
身寄りの無い私達からすれば現実味の無いことだが、王女聖愛には両親がいる。
私がそれをどれだけ妬んだことだろう。
何不自由の無い環境や国民からの溢れんばかりの寵愛、そんなのよりずっと羨ましいもの、
それが家族の存在だ。
私には七歳頃まで両親がいた。
そして六歳の弟と、五歳になる妹がいた。
両親は二人を溺愛していた。
私は弟が生まれたくらいから、親に見向きもされなくなったと思う。
いや、見られてはいた、でも怒られるだけで褒められる事は無かった。
それに何も悪い事をしていなくても、弟達が悪い事をしたら「お前が姉らしくしていないから真似をしたんだ!この大馬鹿者!」と怒鳴り散らされた。
怒られた日は夕食抜きが当たり前、日によっては家を追い出された。
そうやって私が怒られる間、弟達は私を嘲笑っていた。
でもそれが辛くなかったのは、友達がみんなそうだったからそれが私の中で当たり前だったせいだろう。
弟や妹は綺麗な茶色の瞳と色白肌だった。
対して私は真っ黒な瞳に焼けた肌、髪の色も真っ黒だったのも親は気に入らなかったらしい。
毎日のように「不細工」「失敗作」と言われた。
でも何年か経つと、もう辛くも何とも無かった。
弟も妹も私の事を醜いと罵って嫌ったけど、私は嫌いになれなかった。
拝啓三年前の私達へ 美咲☆@ @Saki0602
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