第5話 マイナスプラス
禊、この時間が私は一番好き。
シャワーを浴びているような感覚、夏はもっと最高。
子供が親元を離れて生活する事を、3年前の人々はどう思うだろうか?
この現在に屋根のある場所で子供が暮らすという事は、実は有難い事だ。
外の様子はあまり分からないけど、親に捨てられて施設を転々とした友達が言っていた。
今、施設の環境は劣悪らしい。
食べ物は虫が湧いているし、お風呂だって週に一度入れれば良い方、らしい。
私みたいに目が覚めたら道端に捨てられていたなんて人は、きっと当たり前のように居るはず。
そんな境遇を経て施設に入る子供達の中で私がこんな待遇であれる事は、きっと感謝すべき事だ。多分。
のあは私と同い年らしい。
「学校」の話をして盛り上がった時に気が付いた。
のあも七歳の頃、この世界が一転する日に立ち会ったらしかった。
でも、私達が経験した事を、自らがこの現在に放り出された日を、語り合う事でしか同い年であるということを証明できない。
これがどれだけ孤独な事だろう。
身一つで手放された私達ができることはなんなんだろう。
そう考えるだけで吐き気がした。
(もういっそこのまま勝手に心臓が止まってしまえば良いのに…)
そんな事ばかりを考えた。
ただただ毎日が残酷にも過ぎていくだけだった。
そして私達はそれをただただ見ている事しかできない。
きっとこれから何年経ったってこの現状は変わらないと思う。
でも私が変えたいなんて思わない。
だって兵士様だけに許された権利だから。
私達修道女は兵士様に尽くすだけ。
そう、きっと私達はそのために、
生まれてきたんだ。
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