第十二話 剣と魔法の練習
リラ神に迫られ、ヒィナの服を買い……忙しい一日だったなと思いつつ僕は布団に入る。
しかし……
「ダーリン!! 夢の中まで来ちゃった!」
「なんでだぁぁぁぁ!!!!」
「やんやんっ!」
なんと夢の中にリラ神が出てきた。今宵のハニーはウエディングドレスではなくメイド服を着ていた……
気がつくと僕はあの白い光がどこまでも続く真っ白な世界にいた。
まさかこのゴリラ、夢の中にまで出てくるとは……
そしてリラ神は言う。
「実は夢の中にまで出てきたのには理由があるの」
「今度は何……」
「ヒィナのことなんだけど」
「ヒィナのこと?」
僕は聞き返す。
「あの子、以前から人間になってみんなと一緒に遊んだりお洋服を着たりしたいって言ってたの。あの子は神の使い。今までたった一人でそう願っていたのよ」
「ふむふむ、そういえば今日、ずっと人間になりたかったって言ってたな」
「そうなのよ、それでさっきは言えなかったけど、人間になったあの子のことよろしく頼むわね」
「そっか、分かったよ」
神の使いヒィナのこと……僕には詳しく分からないけど、ヒィナも大変だったんだな……
「それと、ダーリン……今夜は夢の中で……うふっ」
「ひぃぃ……」
「冗談よ、何もしないわよ。これからもたまに夢に出るけど、よろしくね!」
「やめてけろぉぉぉぉ!!!!」
こうして夜は更けていった……
翌朝、僕はなんともいえない不快感とともに目を覚ました……まさかハニーが夢の中にまで出てくるなんて……
部屋から出てフィオーレたちと合流する。
「ふぁぁ……おはようフィオーレ……」
「おはようノゾム……ずいぶん疲れてるみたいね?」
「ちょっと嫌な夢見ちゃって……」
「そうなの……? それは大変だったわね」
「あぁん! お姉様!! そんなことよりチュッチュウ!!」
「やめてぇぇええええ!!!!」
アンナは今日も元気だなぁ……またフィオーレは襲われてるよ……
僕たちは食堂へ行き、朝食を取りながら話す。
「これから数日はリラの街でクエストを受けるわよ」
旅の支度をもう少し整えてから出発しようということか。
「それから、ノゾムには剣と魔法を練習してもらおうと思うの」
「うん、分かった」
「そうですわね、わたくしたちもいつかは魔王軍と戦いますわ……戦力が多い方がいいですものね」
「ノゾム、頑張って」
ヒィナも応援してくれている。頑張らねば、と僕は思う。
今のところ僕は剣も魔法も使えない。
実を言うと、使ってみたいと思っていたところだ。
「魔法ならわたくしが教えますわ」
「剣は私が教えるわね」
フィオーレが言う。
「フィオーレ、剣使えるの? 折れちゃうんでしょ?」
フィオーレは力が強すぎて剣を折ってしまう、とこのまえ言っていた。
「手加減すれば折れないはずよ」
本当に大丈夫だろうか……
「ということは敵を倒すために本気で戦うときは……」
「殴ったほうが早いわ!」
自信満々に言うフィオーレ……そっかぁ、剣で斬るより殴ったほうが早いのかぁ……
「……さすがだよフィオーレ」
「そうでしょ?」
皮肉が通じていない。最近、実はフィオーレはポンコツなんじゃないかと思い始めている。本人には内緒だけど。
僕たちは朝食を取り終わった後、リラの街郊外の森で修行を始める。
「私、これでも剣も魔法も練習してたのよ。だから教えてあげられるはずよ」
「そっか、それじゃあ頼むよフィオーレ」
僕は剣を持つ。
「ノゾム、頑張って」
ヒィナが応援してくれている。
「うん、ありがとうヒィナ」
それにしても剣は重い……最近、荷物を持ちながら旅をしているので重いものを持つのには多少慣れてきたような気がする。
だが剣の場合、振り回す必要がある……かなり練習が必要だぞ、これ。
しかも剣で戦うということは敵……つまり武装した人間や凶暴な魔物に突っ込んでいき接近戦をする必要があるということだ。
怪我をする可能性がある。勇気だって必要だ。それに勇気と蛮勇をはき違えてはならない。選択だって迫られる。
「それじゃあ素振りをしてみましょう」
「分かった」
しかしやらなければならない。僕は剣をなんとか振ってみる。
「うーん、かなり難しいね」
「場合によっては弓も考えたほうがいいわね」
弓か……それもそれで大変そうだ……とにかく今は剣を振ってみる。
それからかなりの時間、僕は剣の練習をした……
「ノゾム、このくらいにしましょう」
「はあ、疲れた……」
剣を使ってみて分かったが、やはりかなりの鍛錬が必要だ。それでもこれから魔物たちと戦うために練習していく必要があると実感する。
「剣を扱えるようになったら魔法剣という選択肢もありますわ」
アンナが言う。
「魔法剣?」
「そうですわ、魔法の力を剣に宿すのですわ。そうすることで魔物を倒しやすくなりますわ」
なるほど……それなら剣以外の武器にも魔法を宿すことはできるのだろうか?
「他の武器にも魔法の力を宿すこともできるの?」
「できますわ。先ほど話した弓なんかにも魔法の力を付与できますわ」
ふむふむ、じゃあ魔法も練習しなきゃね。
「アンナ、今度は魔法を教えてほしいな」
「分かりましたわ、魔法についてお教えしますわね」
僕とフィオーレ、そしてヒィナはアンナの話を聞く。
「魔法はこの世界の力、世界樹のエネルギーを使って超自然的な現象を引き起こす技のことですわ」
アンナは説明し始める。
「精霊と契約して行使する魔法、精霊魔法……神の使う神聖な力、奇跡……」
「神様が使うのに魔法っていうの?」
「奇跡のような現象を引き起こすのが魔法、つまり魔法と呼ぶ場合もありますわ」
「ふむふむ……基本的には総じて魔法って呼ぶんだね。そういえばこの前アンナが使った魔法はフォノ系の炎魔法フォノザラだって言ってたよね? あれはどういうこと?」
「ええ、魔法にも色々ありまして、炎属性魔法フォノ系や水属性魔法ウォタ系などがあります」
ふむふむ、魔法にも魔法体系というものがあるということか。
「そして、特に大事なのは勇者の魔法……ライ系という雷属性の魔法がありますわ。聖なる光をいかずちに変えて操る魔法ですわ。これを使えるのは勇者や神などごく一部の存在のみとされていますわ」
「フィオーレだけが使えるんだね」
「そう……わたくしも使えない魔法です……お姉様だけが使える魔法のはずなのですが……」
「使えないわ!」
どや顔で言うフィオーレ……伝説の魔法も使えないのに本当に魔王を倒せるのだろうか……
「お姉様のそういうところもわたくし大好きですわぁぁぁぁ!」
ええ……アンナ……それはないでしょ……
「アンナ、話を戻して」
「そうでしたわ。いけませんわ。えっと、それから……今回ノゾムさんに練習していただきたいのは、フォノですわね」
「フォノか……炎の魔法だね」
「ええ、まずはそこから練習ですわね」
そういうば怪我や病気を治す魔法ってあるのだろうか?
「治療魔法とかないの?」
「ありますが……あれはかなり高度な魔法でして、特に魔法の才覚がある者にしか扱えませんわ。だから魔法で治療する方やそういうことができるお医者様は特別な扱いを受けますの」
なるほどね……
「とにかく今日はフォノを練習しますわ」
そう言ってアンナは手のひらに小さな炎を発生させる。
「お願いしますアンナ先生!」
その後、僕も手のひらに小さな炎を発生させるため練習を行う……
しかし……
「はあ……はあ……全然できない」
全然できない! 本当に僕は魔法が使えるようになるのだろうか……
「まあ、これからも合間を見つけて練習ですわね」
「お願いしますアンナ先生」
僕たちはこのあと時間を見つけてはアンナたちと剣と魔法の練習をする。そしてこれからも剣と魔法の修行をする。
そしてリラの街でいくつかクエストをこなし、旅の支度を整えてから次の街ローゼンブルクに向けて出発した。
次の導かれし者を見つけるために……いつか魔王を倒すために……
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