第四話 はじめてのクエスト

 次の日、僕とフィオーレはお金を稼ぐため酒場に行った。


 「酒場でクエストを受けるわよ」

 「クエスト……?」

 「ええ、クエストっていうのは、簡単に言うと仕事の依頼よ。街の住民や自治体が冒険者に依頼を出すの」

 「ふむふむ……?」

 「それで冒険者はその依頼を引き受けて報酬をもらうの。その仲介は酒場にあるギルドがやってくれるのよ」


 話によると、旅慣れている冒険者にしか頼めないような依頼、例えば危険な森の奥に行って薬草を採ってくるとか、街に危険を及ぼす魔物を倒して欲しいとか、そういう依頼が酒場に集まるらしい。それらの依頼をクエストという。

 クエストは世界のあちこちにあるギルドと呼ばれる組織によって管理されていて、依頼主と冒険者の仲介をしたり、冒険者の腕前を認定したり、クエストを管理したりしているらしい。

 というのも、ギルドが依頼主と冒険者の間に立って中立的に仲介しなければ報酬において問題が起こったり、冒険者の腕前とクエストの難易度を見て管理しなければ冒険者が危険な目にあう可能性があったりするからだ。


 「だから、今回は簡単なクエストを受けてお金を稼ぐの」

 「なるほどね」


 僕たちは酒場に到着した。中はとても広く、普通のお客さんのほかにも冒険者がたくさん集まっている。


 「冒険者たちはこの酒場に集まって、情報を交換しているの。もちろんご飯を食べるために来ている人もいるわ」


 僕たちは巨大な掲示板の前に行く。


 「ここに依頼が貼られているの。うーん、何がいいかしら」

 「色々あるね」


 見ると、街の住人からの依頼や富豪や自治体からの依頼もある。冒険者が依頼を受けて森から何かを持ち帰ることで街の経済はまわっているようだ。


 「これなんかどうかしら」


 そう言ってフィオーレは貼り紙に指を差す。それは森の奥深くではなく街の近くで木の実や薬草を採ってきてほしいという依頼だった。


 「うん、いいと思う」

 「決まりね」


 僕とフィオーレは貼り紙を店主の元へと持っていく。


 「ああ、そのクエストね。ギルドカードを見せて」

 「私のギルドカードはこれよ」

 「あの、僕はそれ持ってないんだけど」

 「そうね。店主さん、あの、ノゾムのギルドカードを作りたいんだけど」


 こうして僕はフィオーレとパーティになり、クエストを受けることができた。


 「気をつけてね、お二人さん」


 店主さんはそう言って見送ってくれた。僕とフィオーレは酒場を後にし、森に向かって歩き出す。



 僕とフィオーレは森へと到着した。


 「今から指定された薬草や木の実を集めるわ。このあたりは危険な魔物や獣はいないはずよ」

 「なら安心だね」

 「ええ、でも森では何が起こるか分からないからね、気をつけて」

 「うん、そうだね。気をつけるよ」


 僕とフィオーレは薬草や木の実を集める。


 「この赤いのでいいかな?」

 「ええ、それからこっちに薬草があって……」


 なんとか目的のものを集めることに成功した。


 「あとは帰るだけね」

 「うん」


 すると……



 「うぇぇぇぇんんんん!!!! 怖いよぉぉぉぉ!!!!」



 森の奥のほうから女の子の声が聞こえてくる。


 「何かあったのかしら!!」

 「どうする!? 行ってみる!?」

 「ええ、もしものことがあったら危険だから」


 僕とフィオーレは声がするほうへと向かって走る!


 しばらく走っていると少女が泣いているのが見えた。


 「大丈夫!?」


 フィオーレは女の子に向かって走っていく。僕も後に続いて女の子の元に駆け寄る。


 「うええええぇぇぇぇんんんん怖いよぉぉぉぉ」

 「大丈夫? どうしたの? お姉ちゃんに何があったかおはなしして?」

 「うう……うええええぇぇぇぇんんんん」


 女の子はパニックになっていて答えられないようだ。落ち着かせなければ事情を聞けそうにない。


 「うーん、困ったわね」


 その矢先、森の奥から何かの気配を感じる。それも一人の気配ではない。複数いるようだ。


 「フィオーレ、何かいる」

 「ええ、分かっているわ」


 森の奥から何かが姿を現した。その何かは猪のような頭をしており全身を体毛で覆われた二本足で立つ化け物であった。筋骨隆々で手には槍を持っている。

 いわゆるオークという魔物だ。それも群れで行動していたようで僕たちは複数のオークに取り囲まれてしまった。

 オークは僕たちに話しかけてくる。


 「ニンゲン……ナニシテル……」

 「何って……僕たちはこの女の子を助けに……君たちこそ……」

 「ノゾム! 誰と喋っているの! 今はオークが目の前にいるのよ!」

 「え、いまオーク喋ってなかった?」

 「オークが人間の言葉を喋るはずがないじゃない!」


 あの言葉はフィオーレには届いていなかったのだろうか?

 フィオーレは構える。


 「ノゾム、その子と一緒に下がってて」


 フィオーレは高速で移動してオークとの距離を一瞬で詰めると拳を握る。

 そしてその拳を前へと突き出すとオークの腹部へと命中する! 正拳突きだ!


 「グォォォォ……」


 オークはたまらず吹き飛ばされ、近くの木に激突する!

 それを見た他のオークたちが槍を構えてフィオーレに突撃する。


 「何体かかってきても無駄よ!」


 フィオーレはオークの槍を回避すると攻撃を叩き込む!

 オークの群れは一気に吹き飛ばされていく!

 まるで台風だ。 オークが次々に吹き飛ばされていく。


 そして、すべてのオークを吹き飛ばした!


 「ふう、こんなものかしら。誰も怪我をしないように手加減しておいたわ」


 わ、わあ、手加減してくれるなんて優しいなあ……あの……あちこちにオークたちが倒れているんですがそれは……

 フィオーレは何事もなかったかのように戻ってくると女の子に話しかける。


 「大丈夫だった? お姉ちゃんに何があったか教えて?」


 女の子は泣きながら答える。


 「うええええぇぇぇぇんんんん……お姉ちゃんゴリラぁぁぁぁ……」

 「お姉ちゃんはゴリラじゃない!」


 たしかに何があったのか端的に答えている……

 僕たちは女の子が落ち着くのを待ってから話すことにした……

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