第29話 神様が森人の王女に見せる夢

 よう。お姫様、元気かい?

 二年振りかな?

 あの頃よりは大分顔色が良いね。


 おいおい、そんなに畏まらないでくれよ。

 照れるじゃねぇか。


 ――って、おい!

 意味のない土下座はいらないから!


 神州国に来て、もう土下座を覚えているとは一体誰が教えたんだ…………。

 ほらほら、顔を上げて。


 あ~もう涙まで流して。

 そんなに顔をくしゃくしゃにするなよ。

 好きな奴以外の前では絶対にそんな顔するんじゃねぞ。


 はい。まずはこれを使え。

 取り敢えず、鼻をかんで、涙を拭いて、落ち着いてから話しを始めようか。


 お、泣き止むの早くなったな。

 まあ、あんな逃亡生活を続けていれば、多少なりとも強くなるか。


 まずは、おめでとうとでも言おうか。

 君たちの目的はほぼ達したも同然。

 明日の昼には神州国の船が港に到着する。


 二年前のあの日。

 よく女王を――君のお母さんを説得してくれた。

 なに、全員説得できなかったのは気にすることじゃない。

 あのまま説得に時間を掛けていたら、君たちは帝国に追いつかれて全員囚われの身になっていた。


 今だからネタばらしをするけど、あの砂漠を渡る決断が全ての転換点だったんだよ。


 ああ。断言しよう。

 そうでなければ、君とこうして接触なんて出来ない。

 君は間違いなく仲間を――自分の部族を救ったんだ。


 そうだ。

 話は急に変わるけど君から見て、どうだい?

 あの男の子は?

 恋人がいるのは気が引けるかもしれないが、それでもあの娘は正式な伴侶じゃない。

 君が女王に働きかければ、神州国側も嫌とは言わないよ。

 略奪婚で気が進まないのも分かるが、エルフが神州国で足場を作るには婚姻が最適だ。

 ま、考えといて。


 ああ、そうだよ。

 今日の本題は結婚話じゃないよ。

 そんなことのためだけに、わざわざ君に会いに来ないよ。

 それよりもっと大事で重大な、マジ洒落にならないことが起こるから、君をここに呼んだんだ。


 では、伝えるよ。

 ウオッホン!


 ――――ここから先は


 

 そう。その通り。

 以前話した、我らとこの世界を造りし大神様と、別世界の旧神との御遊戯チェスの時間だ。


 近々、旧神の次の一手として界獣が一匹、お前たちの近くに現れる。


 それを必ずや討ち滅ぼせ。

 君たちエルフの力を結集し、神州国と手を組み、怨念をも超えて勝て。


 あ、よく気付いたね。

 そうだよ。

 だけどね、そこは君が選んで良いよ。

 うん。本当。

 君が思うように選んでいい。

 憎しみで選ぶのも良し。

 打算で選ぶのも良し。


 君にはな~~んにも縛りを付けない!

 本当に、本当の本当に、君の思うがままに! 

 好きに動いて良いよ!

 誰のことも気にしないで良いんだ!

 例え世界が滅亡しようと、、俺は止~~めないっ!


 ああ、大神様もこのことを知っているよ。

 むしろ、大神様の方が俺よりも乗り気だからねぇ。


 模範解答なんて、誰も求めていないよ!


 君が一人で、が、全人類の命運を決めるんだッ!!!


 じゃ、頑張ってね!!!

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