第13話 異界突入 根源 パート18

 『十和子』という少女との戦いの後、僕達はコウ達が待つ教室へと戻る。


 僕達が戻るまでの間、コウはエネルギー操作により治癒力を高めていたようで自身の怪我はある程度完治していた。


 だが、傷を治す為にかなりのエネルギーを消費している様子だ。


 この『異界』の中ではエネルギーの回復は遅い。


 しばらくの間はまともに能力やエネルギーを使った戦闘は出来そうもないな。


コウ

「よー。おかえりー」


鉄也

「ただいま」


アルト

「鉄也。怪我とかしてない? 無茶してない? キスする?」


鉄也

「大丈夫ですよ。どこも怪我はしてません」


コウ

「むー? この感覚……。お前、封印を1つ解除する為に呪いの道具を壊したのかー? まーた直人に怒られるぞー」


鉄也

「……そうしなかったらこちらが負けていたかもしれなかったんだよ……。……だから今回は仕方ないよ……。それにあの少女は強い……。……封印の呪いの道具を1つ壊して解除したところで勝てる相手じゃないと思う……。……少なくてもあと3つから4つくらいは呪いの道具を壊して解除しないといけないと思う……」


コウ

「うへぇー。マジかよー。まぁ、あの破壊力はヤバいからなー」


牧男

「土絵夢さん。今着ている服。鉄也くんの服だよね?」


土絵夢

「おう!! そうだぞ!! 鉄也の匂いに温もりを感じる!! 鉄也の愛を肌身に感じるぞ!!」


牧男

「それはちょっと許せないなぁ。鉄也くんの服を着てるなんて羨ましい」


「鉄也くんだっけ? 何か情報とか手に入ったりしたの?」


鉄也

「新しい情報はまだ……」


株鳥

「鉄也殿、鉄也殿」


鉄也

「はい。鉄也です」


株鳥

「鉄也殿はこれからどうするつもりでござる? このままではジリ貧だと思うでござる。拙者は1人になってしまった時にここをしばらく探索したでござるが食糧らしい物も特に無かったでござるよ。それにここから出る為のヒントのようなモノも特に無かったでござるよ。長居してしまえば餓死してしまうでござるよ」


鉄也

「それを含めて話しましょう。とりあえず情報を確認していきましょう」


 僕は牧男さん、雫さん、株鳥さんの順番に質問していった。 

 何故、『異界』に入り込んでしまったのか。思い当たる事がないか。特殊な家系なのか。特殊な風習がないか。何か特殊な物を壊していないか。罰当たりな事はしていないか。聞いていく。


 ちなみに土絵夢さんは罰当たりな事をしていたので今回はハブいた。


牧男

「僕は特にないかな。僕の家系はたぶん普通だと思う。父親はサラリーマンだったし……。母親が昔に漫画家のアシスタントをしていたけど、今は営業の仕事しているし……。僕は肝試しはした事ないしなぁ……。怖いの苦手だから心霊スポットに行った事ないし、何かを壊した事もないと思うけど……」


土絵夢

「おい。なんで俺には聞かないんだ?」


「さっきも言ったけど、夏頃から秋になるまでの早朝の5時から5分間、『十和子神社』のある方向を向いて頭を下げるって言うしきたりがあるよ。それを除いたら特別ないわよ。うちのお父さんは営業の仕事しているサラリーマンだし、お母さんは専業主婦だし……。肝試しとか無理だし……」


土絵夢

「俺には聞かないのか? ん? おおぉぉぉい!!」


株鳥

「せ、拙者の家系も変な風習があったでござるな。早朝の5時から5分間、『十和子神社』のある方向を向いて頭を下げるって言うしきたりがあるでござるよ。あと『十和子神社には近づくな』とよく亡くなった父上から言われた事があるでござる」


「あっ!? 今、思い出した!! 私も小さい頃からよく言われてた!! あともう1つ思い出したんだけど私の家系って少し変なのよね……」


鉄也

「変と言うと?」


「私の家系って男の人がすぐに亡くなりやすいらしいの。私はまだ生まれて間もないからあまり覚えていないけど、私にはお兄ちゃんがいたらしいんだけど、原因不明の病気ですぐに亡くなっているし、お母さんの弟も同じように原因不明の病気で亡くなっているの」


株鳥

「そう言われると拙者の家系も女性は早死にしやすいらしいでござる。拙者の父上の妹君も原因がよく分からない病気で亡くなったらしいでござる」


 それもあの『十和子』という少女が関わっているのかは分からないけど、雫さんと株鳥さんの家系は似たような共通点があるなぁ。


株鳥

「それとこれは亡くなった父上から聞いた話でござるが拙者の一族はかつて罪を犯した事があるらしいでござる。その罪を一族で償わないとならないとか言われた事があるでござるよ」


鉄也

「罪……。その罪を犯したのは株鳥さんの一族だけですか?」


株鳥

「いや、拙者達の一族だけでないって聞いているでござるよ。他にも『羽根宮はねみや』、『長野花ながのはな』、『島谷山しまたにやま』、『玉湯諭吉川たまゆきちがわ』、『大竿下おおさおした』、『黄金玉こがねぎょく』などがいたと思ったでござるよ」


コウ

「…… 『羽根宮はねみや』、『長野花ながのはな』、『島谷山しまたにやま』、『玉湯諭吉川たまゆきちがわ』、『大竿下おおさおした』、『黄金玉こがねぎょく』……。……マジかよ……」


 コウは手帳を取り出して何かを確認し始める。


コウ

「行方不明になった奴の苗字じゃねぇかよ。行方不明になった奴は15人。その内10人がその苗字の奴だったり旧姓の奴じゃねぇかよ」


鉄也

「……つまり、株鳥さんが言った『一族が罪を犯した』って事がヒントになるかな……」


 おそらく、十和子という少女とその一家を殺した一族の末裔。それが雫さんや株鳥さんなのだろう。


 彼女は自分を苦しめて殺した一族の末裔を怨んでいるという事か……。


 牧男さんは雫さんと親しい間柄だから巻き込まれたってところか。


 だとすると、このまま彼等をここから出しても危ないな。


 それに彼女の瞳……。


 あれは本当にこの世を怨んでいる者がする瞳だった……。


 彼女は自身の復讐を果たした後、いずれ世界に憎しみの矛先を向けるかもしれない……。


 となると……やはり……彼女を倒すしかないな……。


コウ

「……鉄也。お前の考えはなんとなく分かった……。けど、お前は『アレ』を使うべきではない。鉄也が『アレ』を使ったらお前はどんな相手にも負ける事はないだろう……。……だが、お前の『アレ』はまだ制御出来てないだろう?それにそもそもお前の『アレ』は人前で使うもんじゃないだろう……」


鉄也

「……元々使うつもりはないよ……。……あんなの出来る事なら2度と使いたくないね……」


ゴスペル

「にょおぉ……。勿体無いにょ……。『アレ』の領域に到達出来る者は少ないにょににょ……。オイラだってその領域には到達出来なかったにょににょ……使わないのは勿体無いにょおぉぉ……」


鉄也

「……あんな力は出来る事なら使いたくないんだって……」


 僕達の話した『アレ』は僕の最後の切り札の事だ。『アレ』を使えばどんな相手にも負ける気はしない。しかし、あんな力を僕は出来る事なら使いたくない。そもそも人前であんな姿を見せたくはない。


コウ

「……いざとなったら俺がなんとかしてやるから。だからお前は『アレ』を絶対に使うなよ」


鉄也

「言われなくとも使わないよ」


牧男

「『アレ』ってなんだろう?」


「『アレ』って何かしら?」


株鳥

「『アレ』ってなんでござるか? 『使いたくない』や『制御出来てない』、『人前で使うもんじゃない』ってワードからして使ったら敵味方関係無く被害を及ぼすような技なのでござるかな?」


土絵夢

「……はっ!? こ、これは!! ま、まさか!? 新手の放置プレイか!? いいじゃないか!! 出来る事なら手錠や荒縄で拘束してからの放置プレイの方が好みなんだが!?」


コウ

「はいはぁいー。今、とっても真面目な話をしているからちょっと黙っていてねー」


ーオマケー


ーみんなで鉄也の『アレ』という切り札について考えてみよう!!ー


株鳥

「鉄也殿の『アレ』はおそらく広範囲で敵に大ダメージを与えるような技と考えられれでござる!! 『使いたくない』や『制御出来てない』ってワードからして使ったら敵味方関係無く被害を及ぼすような技なのでござるな!! そして『人前で使うもんじゃない』というワードからして『とても醜い姿に変身してしまう』という可能性があると思うでござるよ!!」


牧男

「でも、鉄也くんがそんな姿になるのは想像出来ないなぁ……」


土絵夢

「ならば逆に考えるんだ……。とてもスケベな姿になるから『人前で使うもんじゃない』というワードが出たんじゃないかと……」


株鳥

「……ふぁっ!? な、なんか鉄也殿のスケベな衣装を想像したらドキドキしてきたでござる!!」


牧男

「……奇遇だね。僕も鉄也くんのスケベな衣装を想像したらドキドキしてきた!!」


コウ

「……鉄也。いいのか? なんかアイツ等、語り出したぞ?」


鉄也

「いいんじゃない? こっちには害はないわけだし、妄想するだけなら僕には害ないし……。とにかく僕は『アレ』を人前では使いたくない。あんな姿を人目に晒すとか……。絶対嫌だ!!」


コウ

「……俺としては『アレ』を使った姿よりも、その力の方が怖いんだけどなぁ……」

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