第13話 異界突入 根源 パート15

十和子

「貴方の力……。確か……『ファントム・マジシャン』と言ったかしら……? 『ありとあらゆる事から自信と指定した他者の身を護る』という力……。自身が望んだ武器や防具に護る力を付与した物を作り出す……」


鉄也

「……」


十和子

「貴方の力は私の知る限り最も強い力だと思うわ……。ありとあらゆる攻撃を防ぐ衣『銀河ぎんが』。ありとあらゆる者を薙ぎ払う刀『銀月ぎんげつ』。一度でもその光景を見たり、聞いたりしただけでその場所へ時空を開いて瞬時にその場に移動可能な宝玉『銀星ぎんせい』」


鉄也

「……」


 コイツ……まだここでは使用していない『銀星ぎんせい』の事まで知っているのか……。たった1度触れられただけで、僕の能力について理解したのか……。


 『銀星』とは、『ファントム・マジシャン』の能力で作り出せる特殊な力を秘めた武器の1つだ。


 『銀星』の力は僕が1度でも行った事がある場所や行きたい場所についての情報を多少でも知っていれば、その場所へ瞬間移動する事が出来るというモノだ。


十和子

「貴方はその3つの力を扱い、その鍛え上げた肉体と技を駆使して幾たびの戦いで勝利を収めてきた……。その3つの力を合わせて私に挑むのなら……勝てたかもしれないけれど……。今の貴方では私の相手はとても出来ないんじゃないかしら?」


鉄也

「……」


十和子

「それに私が貴方に力を注ぎ込んだ時、私の力に抗う為に相当な力を消費している……。そんな今の状態の貴方に私は倒せはしないわ……」


鉄也

「……なるほど……。僕の技はある程度貴女に知られているようですね……。けど、貴女がいろいろと語ってくれたおかげで貴女の能力について分かってきましたよ……」


十和子

「へぇ……」


鉄也

「貴女の能力。それは『触れたモノを理解し、支配する』という能力じゃないかと僕は思っています」


十和子

「……」


鉄也

「何故、その答えに行き着いたか。順に説明します。まずは町の都市伝説。この都市伝説に登場した『少し未来を見ることが出来た少女』は貴方の事ですよね?」


十和子

「……」


鉄也

「次にこの『異界』について。『異界』はまず条件が揃わない限り、そう長い時間は発動していられない。いくらこの世界に存在する『迷い人』からエネルギーを吸っていたとして維持していたとしても、そう長い事は展開出来ない。そもそも人から迷い人になるまでの長い期間と絶望感が必要だ。『異界』を展開するのは難しい。それに人ってのは意外と諦めない。そう簡単に『絶望』したりはしない」


十和子

「……」


鉄也

「だから僕は思ったんですよ。『異界』を展開させて引きずり込んだ人を支配して『迷い人』にすぐに変えてしまったのではないかと。そうすれば『迷い人』に変えるのはそう難しくはないはずだ。貴女が感情も感覚も何もかも支配出来るのならね」


十和子

「……」


鉄也

「そして僕に1度触れただけで僕の過去、能力、体の状態まで理解した。だから『触れたモノを理解し、支配する』って能力ではないかと思ったのです」


十和子

「……へぇ……」


鉄也

「かつて貴女がやった『土砂崩れを予知』したというのは『土地に触れて起きる未来を理解した』からではないですか? 土砂崩れを防がなかったのは当時の貴女に『土砂崩れを防ぐほどの力はなかったから』でないですか? そして貴女や貴女の家族を襲った人達から身を護れなかったのは当時の貴女は『それほどの力はなかった』からではないです? 間違っていますか?」


十和子

「……やっぱり貴方はいいわね……。……正解よ……。私の力は……いえ、私達の一族はこの力を『神道眼しんどうがん』と呼んでいたわ……。触れたモノの過去、現在、未来を観て理解する事が出来た……。支配出来る事を知ったのは私が死んだ後だったけれどね……。私達は『白桜はくおう』と呼ばれた神様と人間が恋をして産まれた一族だと聞いているわ……。そして『白桜』という神様は私達一族が困らないようにと『神道眼』を授けたそうよ……」


鉄也

「『白桜』か……」


 『白桜』とは、とある能力者の一族に伝わる神話に登場する神様の名前だ。世界を創り出した創造主であり、人々が困難に立ち向かう時に困難に抗う為の能力を授けたり、気に入った人間に試練を与えるという……。創造と試練を司る神様だ……。


 ちなみにその神話には他にも様々な神様が登場する。


 『白桜』の守護をする筋肉質の猿の姿をした守護と破壊を司る男神『ゴリン』。世界を見守り、管理をする男神『ドオール』。世界の危機を及ぼす魔から人々を救う為に勇敢な者に力を授けたとされる聖なる女神の『アルト』。世界を憎み滅ぼす事を考えているとされる邪神の男神『亜数あかず』。


鉄也

「こんなところで、神話に関わる話を聞くとは……。世の中不思議な事で溢れているなぁ……」


ーオマケー


 神話にまつわる話。


 かつて『白桜』という神様がいた。その神様は自分にとって都合の良い世界を創り出した。

 その世界に生物を複数創り出し、時折その世界へ行き様子を見て回っていた。

 そしてその世界を管理する為に4柱の神を創り出した。

 『白桜』の身を護る為の神『ゴリン』。

 世界の管理をする神『ドオール』。

 世界の危機を救う神『アルト』。

 世界にとっての不純なモノを壊す神『亜数』。

 その4柱の神と『白桜』で世界を保っていた。

 ある時、『亜数』は1人の人間に恋をした。『亜数』は神の座を捨てその人間と添い遂げようとした。

 他の神々は最初は反対していたものの最終的には『亜数』を見届ける事にした。

 しかし、亜数が恋した人間は悪い人間達に殺されてしまった。

 『亜数』はそれに怒り、恋人を殺した人間を地獄に落とした。しかし、彼の怒りは収まる事はなく、世界にその怒りの矛先を向け、世界を滅ぼそうとした。

 『白桜』は他の神々の協力し『亜数』を封印した。

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