第13話 異界突入 根源 パート11

 僕は株鳥さんを連れ2階に降りる。2階へと降りるとミノタウロスの迷い人の匂いは気にならなくなる。


 だが、その代わりに他の迷い人の匂いがする。壁に隠れて廊下を伺うとそこには下半身が蜘蛛で上半身が女性の姿のまるでゲームなんかで登場するアラクネのような姿の迷い人が2体いた。


鉄也

「……」


 『月夜浮世絵』を使った時にはあんな迷い人の姿はなかった。という事はどこからか湧いて出て来たのだろうか。何はともあれアレを倒さないと先に進めないな。


 迂回して別の道を行くか?


 いや、それでも嗅覚がまともに機能しない3階に戻るのもリスクがある。今みたいに先程はいなかったはずの迷い人がいる可能性がある。


 臭い匂いが充満している3階に戻れば迷い人を発見が遅れ真っ正面から戦わなければならない状況になるかもしれない。1階には着物姿の女の子がいる。


鉄也

「仕方ない。こちらに気が付いていない今の内に攻めるか……」


 僕はズボンのポケットから手帳とボールペンを取り出して『ちょっと待っていて』と書いて株鳥さんに見せた後、『ファントム・マジシャン』を『銀河』という銀色のコートの姿で出して身にまとう。


 『銀河』は僕の能力による技で最強の防御力を誇る防具。『銀河』を身にまとった瞬間、全身をありとあらゆる攻撃を無効化する無敵のコートになる。


 気配や匂い、姿を消して近付く相手からの攻撃も防げる。


 アラクネの姿の迷い人はそれほど強い感じはしない。しかし、毒や特殊な攻撃を仕掛けてくる可能性がある。それにあの着物姿の女の子がいきなり現れる可能性もある。用心に越したことはない。


 そして僕はアラクネの姿の迷い人2体の方へ素早く向かう!!  


アラクネの姿の迷い人1

「キィシャアアアアアアアァァァァァァァァッ!!」


鉄也

「ウラアアアアアアァァァァ!!!!」


 1体こちらに気が付いて突進して来た!!


 僕は奴の顔面に拳を叩き込み奴の頭蓋骨を破壊する!!


アラクネの姿の迷い人2

「キシャッ!? キシャアアアアアアアァァァァァァァァ!!」


 もう1体も僕の事に気が付き、僕に飛び掛かる!!


鉄也

「ウラアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」


 僕は奴が飛び掛かって来たタイミングに合わせて奴の首にラリアットを決め奴の首を吹っ飛ばす!!


鉄也

「……いくら人間辞めた存在である迷い人でも頭を叩けば容易く倒せるようだな……。……極力エネルギーを消費を避ける為にも頭を潰すようにしよう……」


株鳥

「て、鉄也殿!!」


鉄也

「株鳥さん。もう大丈夫ですよ」


株鳥

「ち、違うでござる!! 後ろ!!」


着物姿の女の子

「あ……貴方……」


鉄也

「っ!? いつの間にっ!?」


 やはり、彼女からは人が持っているはずの気配も無く、音も無く、匂いでさえ感知が出来ない!!


 僕は慌てて彼女から距離を取る。


着物姿の女の子

「なんなのよあの男は!?!? あの男!! 頭おかしいんじゃないのおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?!? なんなのよ!? あの男!?!? どんな攻撃しても止まらないし!! それどころか『いいよ、来いよ』とか『んあぁぁぁ、もうたまらない、ぬわあああぁぁぁぁん』とか言って追い掛けてくるし!! なんなのよおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」


 な、なんか分からないけど……。


 土絵夢さんに相当虐められたのだろう……。


 詳しくは聞かないであげよう……。


 しかし、土絵夢さんとは何者なのだろうか?


 コウの硬化による防御力は高い。僕も詳しくは知らないが理論上は日本列島を破壊するような爆弾が直撃したとしてもコウの硬化能力なら理論上では耐えれる程の防御力を誇るらしい。


 コウの能力『ストーン・アーマー』は、僕の知る限り、僕の『ファントム・マジシャン』を除いて最も防御力の高い能力だ。


 その防御力を突破してコウにダメージを与えた彼女の攻撃力は凄まじいモノだ。しかし、土絵夢さんはそんな彼女の攻撃を受けてもダメージを受けない。


着物姿の女の子

「でも、貴方の力があれば問題はないわよね。貴方の力はとても強いわ。貴方の存在を私にちょうだい」


 彼女は僕に触れようと近付く!! 僕は素早く距離を取りズボンのポケットから短刀を1本取り出し彼女に目掛けて投げ付ける!!


着物姿の女の子

「無駄よ。その程度の攻撃は私には効かないわよ」


 彼女は右手を前に出すと僕の投げ付けた短刀をガラスの壁のようなモノを出現させて防ぐ。


鉄也

「やっぱりそう簡単にはいかないか……」


 この女の子の能力はなんだろうか?


 『異界』は能力を鍛え上げた末に会得出来る。誰しもが会得出来る技ではないが空間に干渉する事が出来れば使用出来ないわけではない。


 僕の『ファントム・マジシャン』でも一応は使えるしね。


 ただ『異界』を作り出せるだけの能力ってわけじゃないだろう。


着物姿の女の子

「何を考えているかは分からないけど……私を前に考え事をするなんてね……」


鉄也

「貴女は『火山華』と名乗った迷い人が言っていた『十和子』という人物で間違いないですか?」


 『火山華』が言っていた『十和子』という人物。おそらくその人物こそ奴等のボスだろう。この着物姿の女の子は迷い人達と違う感じがする。そして『火山華』や『武彦』などの迷い人とは比べモノにならないくらいに強い。


着物姿の女の子

「そうだけど?」


鉄也

「貴女の目的はなんですか? 『火山華』と名乗ったあの迷い人の言っていた通りの『復讐』がしたいのですか? 『火山華』は言っていた。『かつて貴女は人間を護りたいと願って動いた。結果、家族を奪われて殺された。だから世界に復讐する。大した力を持たない人間を滅ぼし、世界を創り直す事にした』と……」


着物姿の女の子

「貴方は世界が憎くないの?」


鉄也

「……」


着物姿の女の子

「私が貴方を支配しようとした時に貴方の記憶を見たわ……。奴隷として売られそうになったり、年端もいかない子供に戦わせ、殺しを強要させられる。そして自分を救ってくれた大切な恩師を殺された……。誰も傷付かないように身を粉にしても誰からも認められる事は無かった。それどころか罵声を聞かされる。……貴方はどうしてこの『世界』を憎まないで……いえ、違うわね……憎んでいないフリが出来るの?」


鉄也

「……憎しみは憎しみしか生み出さない……」


着物姿の女の子

「……そんな偽善者が言うようなセリフを聴きたいわけではないの……。貴方の心の叫びを聴きたいのよ……」


鉄也

「……」


 僕は過去に奴隷として売り飛ばされそうになった過去がある。その時の記憶はあやふやであまり覚えていない。

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