第13話 異界突入 根源 パート10

 僕は株鳥さんを連れながら2階のコウ達のいる教室へと向かう。本当なら瞬間移動したいのだが、極力エネルギーを消費するのは避けたい。


 『ファントム・マジシャン』には『銀星ぎんせい』というモードがある。


 『銀星』には『強い相手や厄介な出来事から安全地帯まで逃げる』という力がある。それの応用で僕は一度行った事がある場所や見た事がある場所、知識で知っている場所に瞬間移動する事が出来る。


 しかし、『銀星』を発動させるにはちょっと多めのエネルギーが必要になる。この『異界』ではエネルギーの回復が遅いし、着物姿の少女に襲われた時にかなりのエネルギーを消費した為、今は使い物にならないし、移動出来ても短い距離しか移動出来ない。


 本来なら行方不明者の方々を全員見つけたら全員連れてこの力を使ってこの『異界』から去るつもりだったのだが……。


 ……今のエネルギーの量ではそれは難しいだろう……。


 『ファントム・マジシャン』で防御をしていなかったとはいえ、彼女の力に抗う為にかなりエネルギーを消費してしまったな。能力による大技を撃てても5発が限界ってところか。


株鳥

「て、鉄也殿……」


鉄也

「どうかしましたか?」


株鳥

「……鉄也殿は随分と落ち着いているのでござるな……」


鉄也

「こういう非日常的な出来事を見る事が多い方だからじゃないですかね。まぁ、それっぽい経験をした事があるから人より落ち着いていられるだけですよ。簡単に言ってしまえば慣れているだけですよ」


株鳥

「そ、そうでござるか……」


 組織に所属していれば非日常的な光景を目にする事は珍しくない。


 僕が所属していた時にも似たような事は何度かあったし、死にかける事もたまにあった。


 そんな経験を積んでいく内に僕は普通なら戸惑うこともさほど驚かなくなっていた。


 まぁ、幽霊を見える時点で普通の日常からは少しかけ離れているのかもしれないけど……。


ー株鳥目線ー


 気が付いたらよく分からない場所にいたでござる。

 

 見知らぬ校舎内、徘徊する化け物達。拙者はその全てに恐怖していた。教室の隅でガタガタ震えていたでござる。


ミノタウロスの姿の迷い人C

「ヴゥモォッ!! ヴゥモォオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!」


株鳥

「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!?!?」


 ミノタウロスのような姿の化け物が教室に入って来た。奴は拙者を見るなりこちらを襲いかかって来たでござる。


株鳥

「せ、拙者をた、食べても!! お、美味しくないでご、ござるよ!!」


 必死に命乞いをしたでござる。怖くて堪らなかったでござる。


ミノタウロスの姿をした迷い人C

「ヴゥモォッ!! ヴゥモォオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!」


株鳥

「ヒィィィ!!!!」


 奴は拙者の命乞いも聞かず、その拳を拙者に振り下ろそうとしたでござる。


鉄也

「『手刀雷牙』!!」 


 その時、現れたのは1人の美少女でござった。


 黒真珠のような艶やかな黒髪ショートカット。整った顔立ち。小柄で細身の体。そして電気をまとった右手はミノタウロスの姿をした化け物の左胸を貫いていた。


 ミノタウロスの姿をした化け物はそのまま糸が切れた操り人形のように倒れた。


鉄也

「……ふぅ……。間に合った……」


株鳥

「え? え? き、貴殿は!? 何者でござるか!? 手がなんかビリビリと電気が!? ふぁっ!? ど、どういう状況でござるか!?」


鉄也

「僕は『犬島 鉄也』。貴方達を助けに来ました」


 拙者の事を助けに来てくれたという美少女『犬島 鉄也』と共に行動する事となったでござる。


 彼女はこの化け物がウヨウヨする異常な状況に対して冷静でござった。


 見た目は似合わないほど落ち着いていて、化け物を倒す時もなんのためらいもなかったでござる。


 拙者はお漏らしするくらい驚き、パニックになってしまったのに……。


株鳥

「て、鉄也殿……」


鉄也

「どうかしましたか?」


株鳥

「……鉄也殿は随分と落ち着いているのでござるな……」


 その異常とも言える鉄也殿のその冷静さや立ち振る舞いを見て拙者は聞かずにはいられなかったでござる。


鉄也

「こういう非日常的な出来事を見る事が多い方だからじゃないですかね。まぁ、それっぽい経験をした事があるから人より落ち着いていられるだけですよ。簡単に言ってしまえば慣れているだけですよ」


株鳥

「そ、そうでござるか……」


 『慣れている』でごさるだと? このような非日常に?


 拙者はそんな鉄也殿の言葉に少し恐れてしまったのでござる。


 こんな年端もいない子供が『慣れている』という『非日常』が拙者達のいる世界でも起きているのかと思うとゾッとするでござる……。


株鳥

「年端もいかぬ少女が頑張っているのだから拙者も頑張らねばなるまいでござる!!」


鉄也

「……何を勘違いしているんですか……? ……僕は男ですよ……」


株鳥

「え? は? ふぁっ!? な、なんだとでござる!?!? えっ!? そんな可愛いのに男でござるか!? そ、そんなに可愛いのにっ!?」


鉄也

「……」



ー株鳥目線終了ー

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