第10話 失踪事件 パート3
『
町外れの小さな山にポツリと存在する神社。
かつて少し未来を見通す少女が暮らしていた場所であり、村人達に家族共々痛め付けられ殺された場所でもある。
この町の人達の先祖である村人達は、彼女達の呪いを鎮める為、村人達が作った小さな神社とされている。
冬になると彼女達の怨みを鎮める為に歌や踊り、作物を捧げられるらしい。
『十和子神社』の名前が由来は、未来を見通す少女の名前から取ったとされている。
夕食を食べ終えた僕達は暗い夜道の中その神社に辿り着いた。
夏だというのにその神社はヒンヤリと涼しく、どこか気味が悪いと感じてしまった。
鉄也
「……」
コウ
「……鉄也。どうだ?」
鉄也
「……幽霊の匂いも声も姿も何も無い」
コウ
「あーチクショウー。空振りかよー」
鉄也
「……」
神社の賽銭箱。その周囲に何か歪みというモノだろうか。何かグニャッとして見えるような感覚がある。
鉄也
「……空振りかと決め付けるのは早そうだ」
コウ
「え?」
僕は賽銭箱周囲に手を伸ばすが、何も触れた感覚は無い。
鉄也
「……」
コウ
「お、おい? どうしたんだよ?」
鉄也
「……」
僕は『ファントム・マジシャン』を手袋の形にしてその空間を触る。その瞬間、まるで水面を指で突いた時のような波紋が空間に浮かび上がる。
コウ
「っ!? な、なんだよ!? 空間になんか出た!?」
鉄也
「やっぱりか……」
コウ
「な、何が起きているんだ!?」
鉄也
「ここ。入り口だ。この先に誰かが作り出した異空間がある」
コウ
「お、お前……どうやって……」
鉄也
「……」
コウは空間の違和感には気付かなかったのか……。
鉄也
「ちょっと違和感を感じて……『ファントム・マジシャン』で突いてみたら見つけたって感じだよ」
コウ
「それもお前の能力の恩恵か?」
鉄也
「たぶん」
コウ
「……お前の能力はなんでもありだな」
鉄也
「まぁ、とにかくここの中に入ってみましょうか」
コウ
「おう」
アルト
「ちょっとストップ」
鉄也
「っ!?」
コウ
「っ!?」
声のした方向を見ると姉さんが立っていた。
鉄也
「ね、姉さん!? いつの間に!?」
姉さんの匂いも気配もしなかったぞ!?
アルト
「あ。鉄也の後を追い掛けた時にバレたら追い返されるかと思ったから、私の能力で気配と匂いを消しといたの」
そう言って姉さんは手に持ったシャープペンシルを見せる。
姉さんの能力『オールエクスカリバー』は、自身が手に持った物に名刀並みの切れ味と自身が望んだ能力を付与する事が可能だ。
鉄也
「つまり、そのシャープペンシルに名刀の切れ味と自身の匂いと気配を消す力を付与したって事か」
アルト
「そういう事。鉄也達の今回の事は予測出来るよ。この町の失踪事件の解決でしょ? 手伝うよ」
鉄也
「姉さん。今回は危険だから早く帰って」
コウ
「それはマズイかもしれないぞ」
鉄也
「え?」
コウ
「行方不明になった人達の唯一の共通点。自宅に帰宅している途中って事。今、この町から自宅に帰ろうとするとアルト先輩が巻き込まれる可能性がある」
鉄也
「っ!?」
コウ
「学校帰りだったり、バイト帰りだったり、会社の仕事を終えて帰宅していたり、買い物帰りだったり、失踪している場所、時間はバラバラだけど唯一共通している事。それは『帰宅の途中』って事だ。今、アルト先輩を帰らせるのはマズイとは思わないか?」
鉄也
「確かにそうだけど……。けど、姉さんを連れて異界に入るのは……」
コウ
「まぁ、確かにそうだな。けど今から家に帰すのも危ない。なら連れて行くべきだと俺は思うが?」
正直なところ、異界は相手の有利な空間だ。僕等にとっては不利な場所。オマケに異界を作れるタイプの能力者はその異界から追い出さない限り、死なないという特性がある。
そんな場所に姉さんを連れて行くのは荷が重い。
コウ
「俺は『異界を作れるタイプの能力者』と戦った経験は無いが、鉄也は何度か経験しているみたいだし、なんとかなるんじゃねぇの?」
鉄也
「……」
確かに『異界を作れるタイプの能力者』とは何度か戦った経験はあるし、負けた事は無い。
けど、『異界を作れるタイプの能力者』と戦った時、大抵苦戦した。姉さんを護りながら戦える自信は無い。かと言って姉さんに今、帰るように言ったら巻き込まれる可能性はある。
鉄也
「……」
コウ
「大丈夫だって。こっちには世界最強の能力者であるお前がいるんだ。それに俺だっているし、なんとかなる」
鉄也
「……分かりましたよ……。コウの言葉を信じるよ……」
僕は『ファントム・マジシャン』を『銀河』の形で出して姉さんにまとわせる。
『銀河』は僕の能力技で最強の防御力を誇る。ありとあらゆる事から身を護る特性があり、毒ガスや催眠による攻撃さえ無効化出来る。
これで少なくとも僕が死なない限りは姉さんにダメージは入らない。
鉄也
「……姉さん。その銀色のコートを着ている限り、ありとあらゆる出来事から護ってくれる。けど、僕が死なない限りであって僕が死んだらそのコートが無くなってしまうし、もしかしたらそのコートの防御力を突破するような攻撃をしてくる奴がいるかもしれないから充分に気をつけて」
アルト
「分かった」
鉄也
「コウも能力で硬化出来る部位は硬化して防御力を上げておいて」
コウ
「おー。任せろい!! 『ストーン・アーマー』!!」
コウの能力『ストーン・アーマー』は自身の身体と手に持った物を硬化させるという能力だ。その強度は1800mの高さから100kgの鉄の塊を落としても傷を付けられない程の強度だ。
コウ
「『アイアン・アーム』!!」
コウの両腕がまるで鋼のような色へ変化していく。
鉄也
「懐かしい技だな」
『アイアン・アーム』はコウの最も得意とする能力技で両腕を最高硬度まで硬化して、両腕の強度を上げる事により防御力を高め、また両腕から繰り出す拳の威力を高める技だ。
コウ
「しばらく戦いから離れていたからちょっと勘が鈍ったかな?最高度まで出すのに2秒掛かっちまったが、俺の方はこれで準備万端だ」
鉄也
「では、行きますか」
僕等は空間の歪みに向かって歩き出した。
ーオマケ1ー
ゴリラ
「クッソオオオオォォォォォ!! 鉄也!! どこ行っちゃったんだよおおおおぉぉぉぉぉ!! ここに置いていくのかよ!! 俺をたった1人で置いていくのかよ!! 俺はイヤだよ!! 鉄也あああああぁぁぁぁ!!」
ーオマケ2ー
白桜
「お手並み拝見と行きますか。神の遺伝子を持つ者達」
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