第10話 失踪事件 パート1
校長先生の依頼を受けた翌日、僕とコウは校長先生が手配したタクシーに乗り、隣町へと向かう。
タクシー運転手はラジオを流しながら運転をしている。チラッこちらを見てから運転手は僕等に話し掛けてくる。
タクシー運転手
「お客さん達はこの町に何か御用で?」
鉄也
「そうですね。少し知人に頼まれた事があって……。ところでどんな町なんですか?」
タクシー運転手
「そうですね。きのこ料理が美味しいお店が多いらしいですよ」
鉄也
「おぇ……きのこか……」
タクシー運転手
「あ。お客さん達もきのこ嫌いなんですか? 実は私もきのこ嫌いなんですよ」
コウ
「俺はきのこ好きなんだけどなー。俺は生の玉ねぎとかネギの嫌いだけどなー」
鉄也
「それはそうと最近、僕等が向かっている町で変わった事とかありますか?」
タクシー運転手
「すみません。私もあの町の事はあまり詳しくは知らないですよ。ただ失踪事件が増えたってニュースをたまに聞きますね。最近物騒で嫌になりますよ」
鉄也
「そうですか……」
今回の『失踪事件』について振り返ろう。
『失踪事件』の始まりは今年の4月の下旬から始まっている。
4月の下旬から始まり現在15人の人が行方不明になっている。失踪した人達には共通点は特に無い。性別、年齢もバラバラ。分かっている事は帰宅途中に行方不明になっている事だけ。
警察も調査を進めているが足取りが掴めないらしい。
僕等の国の警察は優秀だ。大抵の事件なら解決させられる。それでも情報が掴めないとなると『能力者』が関わっている可能性は少なからずある。
コウ
「鉄也的にはどう思うよー? 今回の話」
鉄也
「まぁ、今のところはなんとも言えない。実際に町の中を歩き回らないと」
コウ
「幽霊がそういう事を起こすって可能性はあるのかー? もしも、幽霊の仕業なら俺は何も出来ねーよー。俺は鉄也と違って見えないし、専門外だからなー」
鉄也
「確かに僕は幽霊の姿を見たり、幽霊の声を聞いたり、幽霊をぶん殴ってダメージは与えられるけど……。僕は基本的には幽霊とかは専門外だよ。幽霊とかの知識は無いから」
コウ
「それで幽霊はそういう事件を起こせるのかー?」
鉄也
「起こす事が出来るタイプもいるって感じかな。まぁ、見てみない事にはなんとも言えない」
コウ
「……そっか。まー、なんにしてもお前って本当に他人の不幸は放っては置けないよなー」
鉄也
「ん? どういう意味ですか?」
コウ
「だって校長先生に頼まれなくても解決させようとか考えていたんじゃねーのかー? アルト先輩に聞いたら夏休みに入ったら『ちょっと一人旅しようかな』って言って計画立てていたらしいじゃねーかー?」
鉄也
「……」
コウ
「俺の勘が正しかったらよー。お前は1人であの町に行って調べるつもりだったんじゃねーかー?」
鉄也
「……まぁ、その……あれですよ。僕等の住んでいる町でも同じ事が起きないとは限らないからちょっと調べておいてもいいかもって思っただけで別に大した理由があったわけじゃないからね」
コウ
「はいはい。ツンデレなのはもう知っているから別にツンデレにならなくてもいいんだよー」
鉄也
「ツンデレじゃないからね!!」
コウ
「それで? なーんで俺には声を掛けなかったんだよー? 俺でもちょっとは力になれるだろーがー」
鉄也
「……さすがに巻き込ませるのは……ちょっと……。それに危険かもしれないし……」
コウ
「はぁー……まったく。俺達は親友だろうー? あんまり隠し事をするんじゃねーよー」
鉄也
「ありがとう」
コウ
「おう」
僕等は目的の町に到着。タクシーから降りて、今日泊まるホテルへと向い、荷物を部屋に置いてさっそく町を探索する事にする。
鉄也
「最初は最近行方不明になった人の家やその周辺、職場や出社や退社に使う道から調べてみよう。もしかしたら何か残っているかもしれないし。僕の嗅覚なら何か分かるかもしれないし」
コウ
「あー。忘れていたけどよー。お前の嗅覚は警察犬より優れているんだったなー」
最近、行方不明になったのは『
僕は『新田目 泰三』の自宅へ行き、近隣の人や彼の勤めていた会社の同僚達に聞き込みをしたが、特にこれといった情報は得られなかった。僕は『新田目 泰三』の匂いを辿るが道の途中から彼の匂いは無くなっていた。
鉄也
「車を使ったのか? いやそれなら何かしら車の匂いがあると思ったんだけど……」
コウ
「まぁ、3日くらい経っているからなー」
鉄也
「3日くらいなら雨が降ったりしない限りは追えるよ」
コウ
「うーん。そんなもんなのか?」
僕とコウは他の失踪者達の自宅やその近辺、よく行く場所にも足を運んだ。
だが、途中まで匂いが残っているのにまるで途中からその場から消えたかのように匂いが無くなっている。
鉄也
「これは本格的に能力が関わっている可能性を考えた方がいいかもしれない」
コウ
「確かになー。なぁ、鉄也。お前の能力に追跡に特化した能力系の技とかないのか?」
鉄也
「もう使っている」
僕は『ファントム・マジシャン』には『
僕が探したい対象者が死んでいない限りはどこにいるか見つけ出す事が可能な技だ。仮に対象者が死んでいたとしても腐敗が進行していないければおおよその位置なら把握出来る。
鉄也
「死んでいても腐敗が進んで白骨死体にでもなっていない限りは見つけ出せる自信がある」
コウ
「となると……考えられるのは……能力による位置把握系の技を妨害する能力が発動しているか、もしくは行方不明になっている奴等は皆んな死んでいて白骨死体か死体ごと消し去ったかのかってところか?」
鉄也
「……他に考えられるのは異界を作れるタイプの能力者か」
コウ
「……」
『異界を作れるタイプの能力者』は、文字通り自分だけの世界を作り出せる能力者の事だ。しかし、そんな長時間異界を作り出すのは難しい。かなりのエネルギーを消費するし、世界を構築し、それを維持するのもかなり難しいらしい。
コウ
「その可能性は低いんじゃねーかー? 俺は今までに『異界を作れるタイプの能力者』とは会った事はないから詳しくはしらなねーけどよー」
鉄也
「そうだなぁ……。『異界』を作るにもその世界を維持するのもかなりエネルギー消費するし、繊細な技術がいるらしいけど……」
コウ
「ちなみに『異界を作れるタイプの能力者』と戦ったら勝ち目があるのか?」
鉄也
「もしも『異界を作れるタイプの能力者』が敵ならかなりこっちが不利。元々自分の有利な空間を作っているだろうし、その世界にいる限り相手は死なないからそういう能力者を倒すにはまずその世界から引きずり出さないとならない」
まぁ、僕は『異界を作れるタイプの能力者』と戦って負けた事ないけど……
コウ
「まー、相手がどんな奴か分からないし、とりあえず捜査を続行するかー」
鉄也
「そうだね」
ーオマケー
ゴリラ
「すみませええぇぇぇぇん!! 今のタクシーを追ってください!!」
ツナギ服のお兄さん
「な、なんだよ!? 俺はトラックの運転手であってタクシー運転手じゃねぇぞ!!」
アルト
「走った方が速いから走って鉄也を追いかける」
ツナギ服のお兄さん
「な、なんだ!? あのお嬢ちゃん!? す、すげぇ速い!? 時速何kmで走っているんだよ!?」
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