第9話  校長先生の権力

 時は夏休みに入ったばかりの頃……。


 僕は校長先生に呼び出されて学校に来ていた。


 校長先生は、僕の義父である人と友人関係らしく僕とも仲良くさせてもらっている。たまに校長室に呼ばれて世間話をしたりお菓子をもらう間柄だ。


鉄也

「校長先生は僕に何か用事なのかな? 電話越しだとなんか深刻そうな感じの声だったけど……」


コウ

「能力関係のトラブルじゃねーかー? ほらー。校長先生って俺達が能力者って事を知っているしよー」


鉄也

「あれ? コウも呼び出されたの?」


コウ

「おー。なんか俺の力も借りるかもーって言っていたからよー」


 コウも一緒に呼び出されたって事は『能力者が絡んだ事件』の可能性が高そうですね。


 そんな事を考えながら校長室に入ると校長先生は深刻そうな顔をして待っていた。


校長先生

「鉄也くんにコウくん。休みなのに来てもらってすまないね。まずはソファーにでも腰掛けなさい」


 僕とコウは校長先生に言われた通り、ソファーに座ると校長先生は僕等に麦茶と茶菓子を渡しながら話し始めた。


校長先生

「……実はな。隣町で人が突然いなくなる事件が起きておる」


 その話は知っていた。テレビをつけるとよくニュースに取り上げられていたからだ。


 隣町では人がある日、突然行方不明になる事件が多発している。行方不明になる人物には共通点は無く、年齢、性別も全てバラバラである。分かっている事は皆、帰宅の途中で行方が分からなくっている事だけだ。


コウ

「その事件については知っているけどよー。よくニュースに取り上げられているしよー。現在15人の人の行方が分からなくっているって聞いたぞー」


鉄也

「行方不明の事件なら僕等ではなく、警察に頼るべきじゃないですか?」


校長先生

「本来ならそうなのだろう。しかし、我が校でも似たような事件が起きないとは限らない。もしかしたら能力者が関わっている事件かもしれん。そこで君達に事件について調べてもらいたい。可能であれば行方不明の者達の安否確認、救出を依頼したい」


 失踪事件の調査か。それってかなり危険な依頼だな。


 もしも能力者が関わっている可能性があるなら能力について詳しく知らない警察には手に余る事件だろう。


 それに確かに隣町だけしか起きないとは限らない。僕等の住んでいる町で失踪事件が起きるようなら僕としても動かないわけにはいかない。


 姉さんやマリーちゃんに被害が及ぶ前に行動すべきなんだろう……。


校長先生

「強制はしないが報酬は億単位で払わしてもらう」


鉄也

「是非やらさせてもらいます!!」


コウ

「おい!! 鉄也!! 金に騙されな!! これ結構危険な依頼だぞ!!」


鉄也

「マリーちゃんの養育費、学費、お小遣いが稼げる。しばらくバイトを休んでのんびりするのもありかな」


コウ

「ダメだコイツ!! 金の事しか考えてねぇ!!」


校長先生

「コウくん。君は数学のテストで赤点を取ったらしいじゃないか。ワシの権力を使えばその赤点を無かった事に出来るぞ?」


コウ

「お、お、お前!! な、なんてモノを引き合いに出しやがる!?」


校長先生

「鉄也くんは全てのテストで赤点は回避しているから再試はないが、君は数学のテストだけ赤点を取っている。夏休み中にたった1人で再試を受けるのは嫌じゃないかな? ワシの権力を使えばその赤点を赤点じゃ無かった事に出来るのだが? このチャンスを逃していいのかな? ん?」


コウ

「くっ!! わ、わかったよ!! わかりましたよ!! 引き受けるよ!! 引き受けますよ!! 引き受ければいいんだろうが!! チクショウが!! この卑怯者!! やり口が汚いぜ!!」


校長先生

「はっはっはっ。大人とは常に卑怯で汚いモノなのだよ。では、明日から隣町に向かって来れまえ。行きのタクシーはこちらで用意しておく。泊まる場所もこちらで用意しよう」


 こうして、僕とコウは失踪事件が起きている隣町へ行く事になったのであった。


ーオマケー


校長先生

「……鉄也くんに1億円くらい払えばワシが望む女装してくれたかな?」


教頭先生

「……校長先生。鉄也くんに女装させる時には是非この私も呼んでください。鉄也くんの女装姿を写真に収めたいのです」


体育教師

「……月に1億円くらい払えば鉄也くんなら女子の制服を着て登校してくれるのでは?」


校長先生

「っ!? 鉄也くんが女子の制服を着て登校するだと!?……う、うむ。……しかし、それではワシの財布が破産してしまう……。じゃ、じゃが…鉄也くんの女子の制服はとても魅力的じゃな……」


ゴリラ

「ちょおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっと待てええええええぇぇぇぇぇぇぇ!! お前等!! 俺の鉄也に何させようとしているんだよおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?」


アルト

「ゴリラの鉄也じゃない!! 私の鉄也だああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


数学の教師

「……真面目に転職を考えようかな……。この学校ヤバ過ぎ……」


英語の教師

「ゴリラくん。こんなところで遊んでいないで、英語の再試を受けてください。貴方だけですよ。英語のテストで0点取ったの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る