第7話 ねぇ? 僕のパンツを知りませんか?

 ある日の事、犬島家のリビングにて……


 姉さんはソファーに座り小説を読み、マリーちゃんはテレビゲームをしていた。


鉄也

「姉さん、マリーちゃん……」


アルト

「鉄也? 何かあったの?」


マリー

「あぁ? どうしたんだよ? 兄貴、深刻そうな顔して?」


鉄也

「昼寝していたんだけど……嫌な夢見て、寝汗が酷くて……シャワーを浴びようかなって思っていたんだけど……僕のパンツがないんだけど……何か知らない?」


『『『ガタッ』』』


アルト

「ね、寝汗が酷いの!? 私が汗を拭くよ!! さぁ、こっちにいらっしゃい!!」


鉄也

「姉さん? なんで目が血走っているの? それよりパンツがないんだけど?」


マリー

「あ、あ、兄貴のパ、パンツ? し、知らないなぁ。ど、どこかに間違えてしまったんじゃねぇのか?」


アルト

「て、鉄也のパ、パンツは知らないわね。それよりこっちに早くいらっしゃい。早く鉄也の匂い……じゃなかった……早く汗を拭かないと風邪を引いちゃうよ」


ゴリラ

「そ、そうだよ!! お、俺達!! 鉄也のパ、パンツなんて持ってないよ!! そ、それより!! 鉄也!! 早く汗拭かないと!! 風邪引いちゃうぜ!!」


 リビングのテーブルの下からゴリラが現れた。いつからいたのだろうか?


マリー

「うわっ!? テーブルの下から野生のゴリラが出てきただと!? ちょっ!? お、お前!? 誰だよ!? どっから入って来た!? ちゃんと家のドアには鍵をかけていたぞ!?」


ゴリラ

「お? 鉄也の妹さんか? どうも初めまして。鉄也と付き合う事を前提に婚約しようと奮闘している『五輪 ゴリオ』ですうぅぅ!!」


マリー

「嘘だっ!! お前みたいなゴリラが兄貴と恋人になれるわけねぇだろうが!! 鏡見て出直して来い!!」


ゴリラ

「人は『外見見た目』じゃねぇ!! 人にとって最も大切なのはそんなもんじゃねぇんだぜ!! 人にとって最も大切なモノ!! それは『中身』だ!! 男ってのはフェイスやスタイルで勝負するんじゃねぇ!! ハートで勝負するんだよ!!」


マリー

「不法侵入して何カッコつけているんだよ!? まぁた兄貴のストーカーか!?」


ゴリラ

「俺はストーカーじゃねぇ!! 恋泥棒さ!!」


マリー

「何カッコ付けてるの!? むしろカッコ悪いよ!! 不法侵入している時点ですごくカッコ悪いよ!!」


 カッコを付けているゴリラの右手には僕が探していたパンツの1つであるウサギ柄のトランクスが握られていた。


鉄也

「……」


ゴリラ

「ん? どうした? 鉄也? 俺を見つめちゃって? ついに俺と結婚してくれる気になってくれたのか? 今から式場とか見に行っちゃうか?」


鉄也

「ゴリラ。その右手に握っているのって僕のトランクスだよね?」


ゴリラ

「……」


鉄也

「……」


ゴリラ

「……」


鉄也

「それ……その握っている物って……僕のトランクスだよね?」


ゴリラ

「……テヘッ!!」


鉄也

「それを返して」


ゴリラ

「だああああああぁぁぁぁいじょおおおおおおぉぉぉぉぉうぶっ!! なああぁぁにも問題なああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!! 安心しろおおおおぉぉぉぉ!! 等価交換だ!! 代わりに俺が履いていたパンツを置いてきた!!」


鉄也

「それ何も大丈夫じゃないからね!? そのズボンの下はノーパンなの!?」


ゴリラ

「フッ……。俺は自宅にいる時は常に全裸だからな!! パンツがあろうと無かろうと関係ないのだああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


鉄也

「いや人の家でノーパンにならないでよ!! それより僕のパンツを返してよ!!」


ゴリラ

「いやあぁぁぁん!! いやぁんいやぁん!! 俺のパンツを置いてきたんだから鉄也のパンツの1枚くらい俺にくれよ!!」


鉄也

「いやダメだからね!! ……って……ん? ゴリラ、僕のパンツって1枚とっただけなの?」


ゴリラ

「ん? 俺が盗んだのは1枚だけだぞ?」


鉄也

「ん? いやいや、そんなバカな……。だって昨日までは10枚はパンツがあったよ? それに1週間前にもパンツを買っておいたんだよ? それが全部無くなるなんておかしくない? ゴリラ。怒らないから全部返してよ」


ゴリラ

「俺が盗みに行った時には1枚しかなかったからてっきり洗濯に出したりしているのかなって思ったんだけど……」


 ……あぁぁれえぇぇぇ? おかしくない? それに最近パンツが無くなる事が多いから1週間前に追加でパンツを2枚買ったはずなんだけどなぁ……。


鉄也

「姉さん。僕のパンツを見てない?」


アルト

「わ、私は知らないよ」


 姉さんは顔を逸らすながら言う。


鉄也

「マリーちゃん。僕のパンツ見てない?」


マリー

「わ、私も知らないぜ……。き、きっと……ほ、ほら……。あ、兄貴の事だからどっかに無くしたんじゃないか? それかどっかに置き忘れただけじゃないか?」


 マリーも僕から顔を逸らしながら言う。


 うぅぅん。困ったなぁ。また、コウと一緒にパンツを買いに行かないといけないのかなぁ?


 まぁ、今はとりあえず……。


鉄也

「ゴリラ。とりあえず今持っている僕のパンツを返して」


ゴリラ

「それでは……せぇの!! アアアアァァァァァァァァデュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」


 ゴリラは全力で逃げ出した!!


鉄也

「待ってえええええええぇぇぇぇぇ!!!! それ僕のパンツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」


アルト

「逃がすかああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! この変態ゴリラアアアァァァァァァァァ!!!!」


マリー

「兄貴のパンツを置いていけえええぇぇぇぇ!! このクソゴリラがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! それはお前のパンツじゃねええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


鉄也

「とにかくパンツを返してええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


ゴリラ

「だが断る!! ことわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁるっ!! これはもう俺の物だああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ゴリラは凄い勢いで家から飛び出し、僕等を撒いてどこかに行ってしまった。


 ゴリラの姿が見えなくなってしまった為、仕方なく近くの服屋で新しいトランクスを買って家に帰る。家に帰るとまだ姉さん達は帰って来ていないようだった。


鉄也

「クソッ!! なんで足の速いんだっ!! 今度会ったらお仕置きしてやる!!」


ゴリラ

「マジかよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


鉄也

「うにゃっ!? ビックリした!?」


 ゴリラは物凄いで戻って来た!?


ゴリラ

「お仕置き!! よろしくお願いしまああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!!!」


 そして一瞬で服を脱ぎ捨て全裸になった!?


 しかも縄をどこからともなく取り出して1秒以内に亀甲縛りをした!?


 オマケに両手足に手錠を付けた状態になっただと!?


 その状態で猛スピードで僕に近寄って来た!!


 どうやって一瞬で全裸になったの!? 自分で自分の体に縄で亀甲縛りをしたの!? おまけにその状態でどうやって両手足に手錠を付けたの!?


 そして僕の目の前でストップする。


鉄也

「………」


ゴリラ

「…………」


鉄也

「……………」


ゴリラ

「……あのぉ……お仕置きは……?」


鉄也

「……とりあえず……ゴリラ確保」


ゴリラ

「いやああああぁぁぁぁぁぁぁん❤️ やんやん❤️ 捕まっちゃった❤️」


鉄也

「とりあえずパンツを返して」


ゴリラ

「だから大丈夫だって。言っただろう? 等価交換だって。ちゃんとお前の部屋に俺のパンツを置いて来たから」


鉄也

「いや、何も大丈夫じゃないから!! 人の家で全裸にならないでよ!! あと馬鹿な事を言っていないで僕のパンツを返してよ!!」


ゴリラ

「いやあああぁぁぁぁん❤️ 鉄也さんのえっちぃ❤️ 俺のオカズを取らないでよ❤️」


鉄也

「オカズって何? パンツが無いと困るんだよ。そもそも男のパンツを盗んで何が楽しいの?」


ゴリラ

「何、勘違いしてやがる!?」


鉄也

「え?」


ゴリラ

「俺は『男が履いたパンツ』だから盗んだんじゃねぇ!! 『鉄也の履いた事があるパンツ』だから盗んだんだよおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」


鉄也

「一緒でしょ!? 僕は男なんだから!!」


ゴリラ

「一緒じゃねぇ!!」


鉄也

「同じだよ!! そもそもなんで僕のパンツなんて盗むの!?」


ゴリラ

「鉄也。俺はな。お前に興奮しているんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 鉄也は俺の嫁だああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 嫁のパンツをどう扱おうと俺の勝手だろうがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ゴリラは意味の分からない事を言い始めた!?


アルト

「何を勘違いしているのかな?ゴリラくん」


 ゴリラが意味の分からない事を言った瞬間、姉さんが帰って来た。


ゴリラ

「ひょっ?」


アルト

「鉄也はゴリラの嫁じゃない!! 鉄也は私の嫁なのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 その後、姉さんとゴリラの論争バトルが繰り広げられたのだった。


鉄也

「とりあえず……パンツを返してよ……」


 結局、僕のパンツは僕の手元に戻って来なかった。


ーオマケー


鉄也

「はぁ……。一体、何枚パンツを買えばいいんだろう? そういえば、ゴリラは僕のパンツを1枚しか盗んでないらしいけど、残りのパンツはどこにあるんだろう?」


コウ

「…………鉄也……。悪い事は言わない。さっさと一人暮らしをしろ…」


鉄也

「へ?」

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