第6話 通り魔? だからなんだよ? こっちは地上最強の能力者だ!! パート1

 さて、火鳥くんという厄介なイケメンとのトラブルの後、僕と姉さんは近所の公園に立ち寄っていた。


 この公園は僕と姉さんにとっては思い入れのある公園で春になり、温かくなり始めるとここの大きな木に桜の花が美しく咲き誇る。


 辺りには滑り台とブランコ、砂場、ベンチしかないちょっぴり寂しい公園だが、僕と姉さんはこの場所が好きだった。


 この公園には大切な思い出がある場所だ。


 ここで無邪気だった幼い頃は、どちらが靴を遠くに飛ばせるか競ったり、追いかけっこをしたり、空き缶を集めてボーリングの真似事をしたりして遊んでいた。


 春になれば2人で大きな桜の木下で桜の花を見ながらジュースとお菓子を食べて将来どんな大人になりたいのかを語った。ポカポカしていて姉さんと昼寝していたら気付いたら夜になっていてビックリした事があった。


 夏になれば、アイスを買って桜の木の木陰で一緒に食べたり、セミやカブトムシ、バッタなどの昆虫採集をした。昆虫採集の時にスズメバチが大量に飛んで来た時は流石に焦ったのを覚えている。


 秋になれば焼き芋屋さんがこの近くに来るので焼き芋を買ってよくこの公園のブランコに座りたべていた。寒くなってきたらお互いに抱きしめあって暖まっていた。


 冬になれば、ベンチに座ってサンタクロースに何が欲しいのか一緒に考えたり、正月になれば姉さんのお手製の凧を上げたりした。僕の住んでいる地域では雪は降る事は滅多にない。その為、幼い頃は『雪だるま、かまくらを作りたい』とよく姉さんと話していた。


 いろいろな思い出が詰まった公園だ。


鉄也

「ここの公園はいろいろ懐かしい。よくここで遊んでましたよね」


アルト

「そうだね。幼い頃にこの公園で虫取りしたらスズメバチに追い回されたね」


鉄也

「あの時は大変でしたね。スズメバチに追い回されている途中で姉さんがブチギレて何故か持っていたハエ叩きと殺虫剤でスズメバチの群れを巣ごと退治してましたね。おかげで昆虫採集どころじゃなかったけど。あ。そういえば、秋になった時にこの近くに焼き芋屋が来て買った後、この公園で食べたよね」


アルト

「そういえばそうだったね。あ! そういえば、春は桜の木下でお花見して、眠くなったから昼寝したら気が付いたら夜になっていてビックリした事もあったね」


鉄也

「そんな事もありましたね。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったから眠くて寝たら寝過ぎちゃいましたね。寒くなって目が覚めたら辺りが暗くてビックリましたね」


アルト

「また春になったら2人でここで花見でもしようかな?」


鉄也

「そうですね。またお弁当やお菓子を用意してここで花を見ながらいろいろな事を話すのもいいですね。あ! 今度は眠くなったら家で寝ないと風邪引いちゃうかもしれないから気を付けないとね」


アルト

「そうだね」


 そんな他愛のない昔し話を姉さんとしていた。こんな平和な日常の事や幼い頃の思い出話をする時間は好きだ。


 ん? 殺気。それに血の匂い。背後から放たれる殺気と血の匂いに気が付き後ろを見る。しかし、黒い服装の人物が立っていた顔はフードに隠れて見えないが、ゆっくりとこちらに近付いて来ている。体格からして男だろうか。


アルト

「ん? 鉄也?」


 血の匂いを放つ僕等の方へ少しずつ近付いて来ている。


鉄也

「姉さん。僕の後ろに……」


 その瞬間、男は途中から僕等の方へ駆け出した!! そしてフードが取れた!! ドクロのお面をつけて黒い服装を身にまとった男がナイフを片手に僕に目掛けて突き刺そうとしていた!!


 僕はシャープペンシルをポケットから取り出し、ナイフの一撃を防ぐ!!


 コイツ、噂の通り魔か!?


通り魔

「……今のを防ぐのか。思っていたより早く動くな」


アルト

「っ!? 鉄也!?」


鉄也

「大丈夫。それより姉さんは下がっていて」


アルト

「さっきまで誰もいなかったのに!? いきなり現れた!?」


 ふむ。姉さんにはあの男が僕にナイフを突き刺そうとしている瞬間まで見えてなかったのか?


通り魔

「……姉を護る妹か。大切な家族を護る為にその小さき体でこの俺様に挑むか? なかなか美しき姉妹愛だな」


鉄也

「誰が妹だ!! 僕は男ですよ!!」


通り魔

「えっ!? はぁ!? 嘘っ!? ……マジで?」


鉄也

「確かに僕は小柄だけど正真正銘男だよ!!」


通り魔

「……姉を護る弟か。大切な家族を護る為にその小さき体でこの俺様に挑むか? 美しき姉弟愛だな」


鉄也

「そこは言い直すんだ」


通り魔

「な、なんかスマンね。小柄だし、可愛らしい顔をしているからてっきり男装しているタイプの女の子だと思ったんだ……」


鉄也

「人が気にしている事を!!」


通り魔

「本当にスマン。わ、悪気はないぞ!!」


 ドクロのお面をつけて黒い服装にナイフを使用か。最近、噂になっている通り魔か。被害者は全員、女子高生って聞いていたけど女の子と勘違いされて僕が刺し殺されそうになったって事かよ!!


鉄也

「見たところ噂に聞いている通り魔っぽいけど、僕等に何か用事ですか?」


通り魔

「まぁ、そうだな。用事と言えば用事だな」


鉄也

「それで? 何かようですか?」


 通り魔は後ろに飛び下がり、僕から少し距離を取る。その後、ナイフを少し見てからこちらを見る。


通り魔

「ちょっと君を切り刻まさせてくれよ!!」


 僕はシャープペンシルを左手に持ち、右手を前に突き出し、犬島流体術の構え『さとり』の姿勢をする。


 通り魔は、僕等の方へ再び走り出し、僕に切り付けてくる!! 僕はシャープペンシルで防ぎながら張り手を入れようとするが、後ろに下り躱された!!


鉄也

「思っていたより速く動くな」


通り魔

「お前こそ何者だよ? 大体の奴は俺の姿を見ただけでブルっちまうんだけどな?」


鉄也

「まぁ、肝は座っている方なんで」


通り魔

「ケッ!! お前みたいな奴が俺様を見てビビって泣き叫ぶ姿を見るのが面白いのによぉ!!」


 通り魔は再び僕に切り付けようとする!! 右側に避け、素早く奴のナイフを持っている右手首に張り手を入れる!! 奴はその一撃でナイフを落とした!! そして肘で殴ろうとするが奴は左側に飛び僕から離れて肘打ちによる打撃を回避する!!


通り魔

「おいおい!! なかなかやるじゃねぇかよ!! 俺様の体じゃなかったら右手首の骨が折れてるところだぜ!!」


鉄也

「うーん。手首を引き千切れないように手加減したけど……もう少し力を入れても良かったかな?」


通り魔

「恐ろしい事を言うじゃねぇかよぉ!! けどよぉ!! どう足掻いたってよぉ!! 俺様の能力『ボディー・オブ・ゴースト』がある限りよぉ!! お前が血塗れになる運命からは逃れられねぇよぉ!!」


 通り魔は再び僕に僕に向かって駆け出して来る!!


 僕はシャープペンシルを奴に目掛け投げ付ける!! 奴はシャープペンシルを回避する事なく突っ込んで来た!!


 僕の投げたシャープペンシルは奴の眉間に目掛け飛ぶ!!


 だが、僕の投げたシャープペンシルは奴に当たらなかった!?


 いや、通り抜けた!? まるで奴が立体映像にでもなったかのように『スカッ』といった感じに通り抜けた!?


鉄也

「っ!?」


アルト

「またあの男が消えた!? 一体何が起こっているの!?」


 また、姉さんだけがまた通り魔の姿が見えなくなっただと?


通り魔

「何をしても無駄だぜ!? 俺様の能力がある限り!! お前達は俺に攻撃する事はおろか俺の姿を見る事さえ出来はしない!!」


 姉さんには見えていないが、僕には奴の姿が見えている。そして僕の投げたシャープペンシルはすり抜けた。


 ……あー。……なるほど……。……そういう能力か……。


 僕は噂の通り魔の能力の謎が解けた。

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