第5話 通り魔? とりあえず関わらない方向で……パート2

 『ゴリラのお尻に箒が刺さった事件』は先生が解決した後、朝礼が始まる。


橋場先生

「最近、通り魔事件が起きているので夏休みだからといって羽目を外し過ぎないように気を付けてね。特にゴリラくんは鉄也くんの事を襲わないでね」


ゴリラ

「橋場先生!! 俺は何もしてないぜ!! 俺は単なる愛しの鉄也を追い回す男なだけだぜ!!」


橋場先生

「鉄也くんのパンツを盗もうとするのは犯罪よ。鉄也くんが被害届出さないのと鉄也くん自身が気にしていないから大事にしていませんが立派な犯罪よ」


ゴリラ

「先生は分かっていないんだ!! 鉄也くんには俺のような存在が必要なんだ!!」


橋場先生

「うーーん。先生には理解出来ません。まぁ、それはさて置き通り魔事件が起きて危ない。そんなわけで皆さんも気を付けてくださいね」


 そんなこんなで放課後になった。僕は校舎を出て下校中。


鉄也

「さてと今日は店長の都合でバイトは休みだしどうしようかな?」


アルト

「鉄也。一緒に帰ろう」


鉄也

「はい。姉さんとならどこまでもお供しますよ」


イケメン

「鉄也!! 待っていたよ!!」


 僕に話し掛けてきたイケメン男子。彼の名前は『火鳥 緋色ひとり ひいろ』。僕と同じクラスに所属している。スポーツ万能で様々な運動から助っ人をしたり、頭も良い方で学年5位の頭脳を持っている。あとイケメンだからモテる。ルビーのように綺麗な赤髪、スラっとした細マッチョ。身長も高めですごくモテて常に3人の女子がいる。


 僕と彼はそれほど仲の良い関係じゃないんだけど……。


 一体、どうしたのだろうか?


鉄也

「火鳥くん。どうしたの?」


火鳥 緋色

「一緒にパトロールをして通り魔を捕まえよう!!」


鉄也

「はぁ!?」


 な、なんだ!? コイツは!? いきなり何!? えっ!? 僕の聞き間違いかな!? 今、『一緒にパトロールをして通り魔を捕まえよう!!』とか言い出した!?


 いや、そんなわけないよね。警察でさえ、捕まえられていない危険な存在を捕まえようとか馬鹿な事をさすがに言い出さないよね。


火鳥 緋色

「一緒にパトロールをして通り魔を捕まえよう!!」


 聞き間違いじゃなかったああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? えっ!? 何っ!? コイツ、学年5位の頭脳があるのに馬鹿なの!? 何を考えてんの!?


 いや、さすがにジョーダンだよね!? さすがにそんな事を考えたりはしないよね!?


鉄也

「ジョーダン、キツいよ。火鳥くん」


火鳥 緋色

「ジョーダンなんかじゃないよ!!」


鉄也

「ジョーダンじゃないの!? えっ!? 何!? 馬鹿なの!?」


火鳥 緋色

「学年5位の頭脳になんて事を言うんだ!! 僕は馬鹿じゃないよ!!」


鉄也

「いや!! 馬鹿だよ!! 警察が追っていて未だに捕まらない通り魔を捕まえるとか言っちゃっている時点で馬鹿だよ!! 自分なら捕まえられると思ったの!? 馬鹿じゃないの!? そんなんで捕まえられるのら警察も苦労しないからね!!」


火鳥 緋色

「君とボクの力が合わさればきっと出来る!!」


鉄也

「何!? その謎の信頼関係!? 僕と君はそれほど仲のいい関係じゃなかったと思うんだけど!?」


火鳥 緋色

「君は君の友達と話していたじゃないか!! 途中からだからしっかりは聞いてなかったけど!! 『これ以上、この町で暴れるのなら僕も動かないわけにはいかない』って!! 君が言っていたじゃないか!! ボクはボクと共に戦ってくれる仲間が必要なんだ!! ボクもこの町に住んでいる人達の事を護りたいと思っているんだ!! 共に同じ想いがあるなら共に戦えるはずだ!!」


鉄也

「……あー……」


 なるほど、コウと僕の会話を聞いて『僕が通り魔を捕まえようとしている』って考えたのね。まぁ、それはあながち間違いじゃない。これ以上通り魔が暴れたらコッチにも何かしら被害を受ける可能性がある。そうなる前に潰しておかないとなって思ってはいた。


 けど、あくまでもコッチにも被害が出そうな時以外はコッチからは動く気は無いんだけどなぁ……。


 そりゃ、もちろん僕の目の前で人が襲われていたり、近くの人が襲われていたら助けるつもりだけど……。


 わざわざコッチから刺激するような事はするつもりはないんだけどなぁ……。


 それに警察は動いているし、警察でも対処出来ないのなら国を裏側から護り、支える組織『国の盾』が動くだろうから僕としてはまだ様子見の状態なんだけどなぁ……。


 まぁ、僕や姉さん、マリーちゃんの目の前に現れたのなら問答無用に潰すけど……。


 てか分かっているのかなぁ? 火鳥くんのような一般市民では対処出来ない相手である事。


 まぁ、それが分からないのだからこうして『一緒にパトロールをして通り魔を捕まえよう!!』なんて馬鹿な事を言えるのだろう。


 とりあえず、ここは出来る限り穏便に解決するようにしよう。


鉄也

「あのね。僕等のような子供に通り魔事件が解決出来るわけないでしょ。普通に考えて。僕が言った『これ以上、この町で暴れるのなら僕も動かないわけにはいかない』ってのはあくまでも僕等の通学路みたいなよく通る所なんかで出没する事態になったら何か対策を考えないとなって話。僕自身が通り魔に直接関わるような事はしないよ」


 僕はあくまでも僕自身が護りたい存在の為だったり自分の身を護る為に戦う。どこの誰とも分からない他人を護る為にコッチから危ない行動を起こすつもりは無い。そもそも面倒だし。


 そんな事を思っているといきなり火鳥くんが僕の胸ぐらを掴んでくる。


 え? なんで?


火鳥 緋色

「君は人の命をなんだと思っているんだ!?」


鉄也

「え? 僕、なんで胸ぐら掴まれてるの?」


アルト

「火鳥くんだったかな? 私の弟から手を離してもらおうか」


火鳥 緋色

「あ、アルトさん!!」


アルト

「さっきから話を聞いていれば……。私の大切な弟を危ない事に巻き込もうとしているように聞こえるのだけど? 私がそんな事を許すわけないでしょ」


火鳥 緋色

「で、でもアルトさん!! この町の危機ですよ!! この町を護る為に!!」


アルト

「どんな理由があっても私は鉄也を危険な事に巻き込ませる事は絶対に許さない」


火鳥 緋色

「くっ!!」


火鳥くんの取り巻き女子1

「ちょっと!! アンタ!! さっきから偉そうに何様のつもりよ!! 緋色が頼んでるんだから素直に『わかりました』って言えばいいのよ!! そしてこの女の先輩も!! なんなのよ!! 偉そうに!!」


火鳥くんの取り巻き女子2

「そこの女の先輩はぁ〜部外者なんですからぁ〜口出ししないで欲しいんですけどぉ〜」


火鳥くんの取り巻き女子3

「緋色様がここまで言っているのですから貴方は『了解』と一言言うだけでいいですわ。逆らうのであればそこの女と共に潰しますわよ」


 今、なんて言った? この女。『姉さんを潰す』と言ったのか?


鉄也

「おい。そこの女。今、なんて言った?」


火鳥 緋色

「っ!?」


火鳥くんの取り巻き女子1

「な、何!? 今、一瞬寒気が!?」


火鳥くんの取り巻き女子2

「な、なんなんですかぁ!? 今のは!?」


火鳥くんの取り巻き女子3

「な、なんなんですの!?」


アルト

「鉄也?」


鉄也

「今、『姉さんを潰す』とか言ったか? 姉さんに手を出す者は何者だろうと許さない。その言葉は僕に対する宣戦布告って事でいいよね? まさか逆に潰される覚悟もなくそんな事を言ったわけじゃないよね?」


火鳥くんの取り巻き女子3

「わ、ワタクシ達に手を出すおつもりですの!? ワタクシの父上様に雇われたバーディーガードの方々が黙っていませんわよ!!」


鉄也

「関係ない。どれほど数が多かろうが、どれほど強い相手だろうが姉さんに害を成す者は許さない」


火鳥くんの取り巻き女子3

「くっ!! ボディーガードの皆さん!! お願いします!!」


 物陰に隠れていた黒スーツのお兄さん達が現れて、僕の前に立つ。


鉄也

「僕と戦うつもりですか? 容赦しませんよ」


ボディーガード1

「……お嬢様、彼は相当強いですよ。我々が隠れていた事にこの少年は気が付いていましたし、何よりこの少年から放たれる気は只者ではございません。正直なところ我々が束になっても勝てないと思います。ここは素直に謝って許してもらう方がいいかと……」


鉄也

「へぇ。僕を一目見ただけでしっかり力の差が分かるんだ」


ボディーガード1

「我々もこの仕事をしてそれなりに経ちますからね。力量の差くらい見れば分かりますよ。それに私達はかつてとある組織に所属して戦い方を学んだ経験がありますからね」


火鳥くんの取り巻き女子3

「ワタクシの父上様が選び抜いた最強のボディーガードが負けるはずありませんわ!! それにこんなに生意気な奴は気に入りませんの!! 早く潰しておしまいなさい!!」


ボディーガード1

「はぁ……。負け戦しないといけないのか……。少年。すまないな。ウチのお嬢様が……」


鉄也

「ボディーガードさんもなかなか苦労されているようで……。でも向かってくるからには手加減しませんよ」


ボディーガード1

「はぁ……」

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