第5話 通り魔? とりあえず関わらない方向で……パート1

 翌日から夏休みに入る前の事……


『ねぇねぇ。最近、ニュース見た?』


『ニュースなら見たよ。声優の花さんとタケルさん結婚したんだって。私、すごいショックだったなぁ〜。タケルさん好きだったんだけどなぁ〜』


『えっ!? それはちょっとショックだわぁ〜。でもそれじゃないよ!! 最近この近くで通り魔が出るってヤツよ!!』


『あーそれは知っているよ。死人は出てないらしいけど10人近くの女子高生が襲われたってヤツでしょ?』


『そうそう!! それそれ!! なんでもドクロのお面をつけて黒い服装、ナイフを片手に持った通り魔!! 警察が追っているけどまだ捕まっていないって!!』


『やぁねぇ。ちょっと怖いじゃないの!! ちょっと男子、アタシの事を護りなさいよ!!』


『誰もオネェ系男子なんて襲わねぇ。いろんな意味でな』


『あぁら!! 失礼しちゃうわね!! アタシだって心は乙女なのよ!!』


『女子ばかり狙うとわ!! まったく頭にくる奴だぜ!!』


『オラもそう思うぞ!! 通り魔の奴、オラのところに来ねぇかなぁ〜。オラ、つえぇ奴を見るとワクワクっすぞ!!』


『お前、そう言って鉄也の体操服盗もうとして鉄也にボコボコされたばかりだろう』


『ジョーダンじゃないわよ!! アチシ達が住むこの町に通り魔がいるんなんて!!』


『オイラもちょっとばかり怖いなぁ』


『よもやよもや!! それは怖い!! 穴があったら入りたい!!』


『お前、映画に影響されたのは分かるが……下手したら炎上するぞ……』


『うむ!!』


『やべぇ。コイツまったく理解してねぇ。早くなんとかしないと……』


『……やだぁ……通り魔とか……怖いなぁ……』


鉄也

「……通り魔か……物騒だな……」


 最近、僕等の住む町では通り魔が現れるらしい。被害者は全員、女子高生らしい。死人はまだ出ていないらしいが、日に日に被害を受ける女子高生の怪我は大きくなっているらしい。警察も追っているらしいのだが、追っていた警察官の話によると追ってる途中で姿が消えるらしい。


 教室内は通り魔の噂で持ち切りだ。


鉄也

「早いところ捕まってほしいのだけど……」


コウ

「おー! 鉄也、おはようー。今日もちっこいなー」


鉄也

「コウ……。身長が150cmしかないのと女の子と勘違いされる事は気にしているんだけど……。それと、おはよう」


コウ

「おー、ムッとしていてもちゃんと挨拶してくれるのなー。律儀だなー」


鉄也

「……コウはいいな。筋肉質でイケメンで。女の子からモテるし」


コウ

「そーかー? そもそも俺はモテるのか? まーどうでもいいかなー。俺は許嫁いるしよー」


鉄也

「はぁ……。僕もイケメンで高身長で筋肉質な男らしい人物になりたいよ」


コウ

「力だけなら鉄也の方があるんだけどなー。蟻と象を持ち上げるのとか大して変わりないんだろうー?」


鉄也

「確かに蟻を持ち上げるのも象を持ち上げるのも大した変わりはないよ。ただ持ち上げ易いか、持ち上げ難いかの違いしかないよ」


コウ

「……どんな体してるんだよ……。それより最近、通り魔が出るみたいだから気を付けろよー」


鉄也

「そうだね。姉さんが襲われるかもしれないし、マリーちゃんが襲われる可能性もあるしね。いざとなったらその通り魔を探し出してぶん殴るよ」


コウ

「いや、それもあるけど。お前自身も気をつけろよ」


鉄也

「なんで? 僕は男だよ?」


コウ

「だってお前、女の子みたいな顔だし」


鉄也

「……人が気にしている事を……。はぁ……。僕も早く大きくなりたいよ……」


コウ

「……まぁ、頑張って」


鉄也

「それそうと僕なら心配いらないでしょ? 僕、力には自信あるし……」


コウ

「まー鉄也を殺せる人間は俺の知る限り1人としていない。けど念には念を入れておけ。それに今回暴れている通り魔もなんらかの能力を持っているかもしれないしな。警察官が追ってると途中で通り魔の姿が消えたって話があるくらいだからな」


鉄也

「まぁ、そうですね。これ以上、この町で暴れるのなら僕も動かないわけにはいかないからね」


 姉さんやマリーちゃんが平和に暮らしてもらう為にもこの町の安全は大切。安全を脅かす危険分子は潰しておかないとならない。


男友達

「よぅ!! 鉄也!! おはようぅ!! 今日も可愛いなぁ!! 俺のバナナ食うか!?」


鉄也

「ゴリラだ!! 野生の野ゴリラが現れた!?」


コウ

「おー。ゴリラが出てくる時期にはまだ早いのに珍しいなー。」


ゴリラ

「ゴリラじゃないもん!!」


鉄也

「ジョーダンだよ。おはよう。僕の数少ない男友達の『ゴリラ』」


 僕に話しかけてきたゴリラ顔の男友達は『五輪 ゴリオごりん ごりお』。僕のクラスメイトで、僕の数少ない男友達の1人だ。趣味がエロ本を読む事と休日自身の家の庭で全裸で木刀を使って素振りをする事らしい。好物はバナナ。


ゴリラ

「ちょっと!! 字幕がまだ『ゴリラ』のまんまなんだけど!?」


コウ

「メタい事は言ってはいけない。字幕があるのは作者ルールだ。気にするな。作者が字幕ないと分からなくなっちゃうんだって。」


鉄也

「それより、ゴリラ。相変わらず元気だね。野生の野ゴリラより元気じゃない?」


ゴリラ

「だからゴリラじゃないもん!! それはそうと鉄也。この間はありがとうな。母さんから聞いたよ。悪霊に取り憑かれた俺を助けてくれ、ありがとうな」


鉄也

「僕にどうにか出来る悪霊で良かったよ。けど、気を付けてね」


ゴリラ

「それはそうと、鉄也だって女の子なのに男子の制服を着て!! 女子の制服を着ろよ!!」


鉄也

「なっ!? 僕は女の子じゃないもん!! 男だもん!!」


ゴリラ

「お前みたいな可愛らしくて抱きしめてキスしたくなるような男がいるかああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! いや、男でもお前を愛せるぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 付き合う事を前提に結婚してください!!」


鉄也

「男同士は結婚出来ないよ? 日本の法律的に」


ゴリラ

「そんな幻想は俺がぶっ壊してやる!!」


コウ

「あー。始まったー。いつものヤツー。それはそうとゴリラの奴、霊に取り憑かれたのかよ」


ゴリラ

「おう!! 鉄也の愛の力が俺を救ってくれたんだ!! 俺の事を大切にしてくれた鉄也の想いに答えたい!! だから付き合うことを前提に結婚するしかないだろう!!」


コウ

「どういう理屈だってばよー」


鉄也

「それよりゴリラも気を付けてよ。通り魔に。被害者は女性が多いらしいけど、物騒なのには変わりないから」


ゴリラ

「鉄也……。俺の事をそこまで愛してくれるのか!? ここまで鉄也に言わせたなら!! もう結婚するしかないじゃない!!」


鉄也

「どういう理屈なの?」


『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……』


 姉さんが『ゴゴゴ……』という効果音と共に教室に現れた。なんか漫画でありそうな展開だな。


ゴリラ

「アルト先輩……。いや、お義姉さん!! 弟さんを俺にください!! 絶対に幸せにします!!」


アルト

「ゴリラくん。どうやら私は貴方のお尻にまた木刀を刺さないとならないみたいね。理由は分かるわよね?」


ゴリラ

「フッ!! 上等だ!! こっちも変態して対抗してやんよ!!」


 ゴリラは服を全て脱ぎ去り、生まれたままの姿で姉さんに襲い掛かろうとする!! ヤバい!! 姉さんが危ない!!


鉄也

「ゴリラ!! やめろ!!」


『ズブリッ』


ゴリラ

「アーーーーッ!! ああぁぁっんんあっはあぁああんんほんほおぉおんんん!!」


 僕は咄嗟に掃除用ロッカーから箒を取り出しゴリラを突いて止めようとしたら、ゴリラのお尻に刺さってしまった。


鉄也

「あ、ご、ごめん。ゴリラ。止めようとしたら刺さっちゃった」


ゴリラ

「早く抜いてぇええええぇぇぇーーー!! 目覚めちゃうからあああぁぁぁぁーーーー!!」


鉄也

「わ、わかった。ゴリラ」


 ゴリラのお尻に刺さった箒を抜こうとするが、ゴリラのお尻が締まり過ぎていて箒が抜けない!!


コウ

「引いてダメなら押してみたらー?」


鉄也

「分かった」


『ズブゥゥゥゥゥーーー』


ゴリラ

「アーーーーッ!! ダメだ!! それ以上はダメだ!! 何かに目覚める!! 何かに目覚めちゃうぅぅーーー!!」


 くそっ!! どうしたら!? どうしたらゴリラを助けられる!?


橋場先生

「はーい。先生が朝の朝礼より早めに来ましたよぅ。って何やっているのゴリラくん。全裸になってしかも箒をお尻にぶっ刺して……」


鉄也

「は、橋場先生!! 大変なんです!! ゴリラのお尻に刺さった箒が取れないんです!!」


橋場先生

「こーんなの思いっきり引っこ抜けばいいのよぅ。うりゃ!!」


『スポーーーーーーン』


ゴリラ

「おぉうぅ!!」


 ゴリラのお尻に刺さった箒はなんとか取れました。

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