第228話 物件情報

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 後半にエチシーンがあります。

 苦手な方はご注意ください。

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「先生がもっと近くに住んでたら良かったのにねー」

「そうですね、近所なら悠樹が通い主夫になれば良いんですから。」


 この辺りの家賃相場が阻害要因となって紗代莉さんは住まいを今の所にせざるを得なかったわけだが、仮に彼女が近所に住んでいたなら涼菜と愛花が言うとおりになっているだろう。

ただそうすると、桜庭さんが彼女と同居する意味がなくなってしまうけれど…。


「うーん、この辺の家賃って、そんなに高かったかなぁ。」

「多分、もっと学園と駅に近い所を調べられたのではないでしょうか。この近所ですと駅から離れますので、家賃もお安くなっている筈です。」


 アデラインが清澄家に下宿することが決まってから、俺の祖父が近隣の家賃相場を調べたそうだ。

すると駅から徒歩10分のラインを境にして、少しずつ下がっていることが分かった。

我が家は駅から20分かかるので、家賃はグッとリーズナブルになるようだ。


「それなら、こっちに引っ越して来れるんじゃない? ちょっと、調べてみようか。」

「ちょっと待て、お前ら、本人抜きで話を進めるなよ。大体引っ越しだって簡単じゃないだろ。」

「ダメかなー、あたしとあやねえと愛花さんは、直ぐに引っ越して来れたよ?」

「私たちは実家から荷物を移しただけで済みましたからね。前田先生は賃貸契約などもあるでしょうし。」


「いっそのこと、買っちゃうのもありじゃない?」


「うわっ?! 美菜さん、いつの間に?!」

「「お母さん?!」」「「美菜さん?!」」


 先ほど帰った筈の美菜さんの出現に、ここにいる全員が驚いた。

しかも、彼女は俺の左肩に顎をコツンと乗せている。

一体この人は、いつの間に入って来ていたのだろうか。


「悠樹くんがキッチンから戻ってくるちょっと前に、こっそり入ってソファーの裏に隠れてたの。誰も気づかないものよね。」

「良い大人が何やってるんですか…」

「あら、セキュリティー意識のチェックよ、この家はみんなダメね。で、話の続きなんだけど…」


 俺が苦言を程しても、美菜さんには何の効果もないどころか、こちらがダメ出しを食らってしまった。

彼女は何事もなかったかのように、話を続ける。


「うちとスーパーの間にあるマンションに、売り家が出そうなのよ。あそこ、そんなに高くない筈よ。」


 美菜さんによると、今住んでいる夫婦が親と同居することになり、近々転居することになったそうだ。

築浅マンションの3階で、南東向きの優良物件とのこと。

情報源はスーパーのベテラン女性店員さん(指定年齢50歳代)らしい。


「もう、駅前の不動産屋に相談してるらしいから、押さえておいた方が良いんじゃないかしら。」

「そんなに簡単に言わないでください、20代の女性がおいそれと買えるものじゃないでしょう。」

「そうでもないんじゃない? それに不動産屋に相談するのはタダよ?」

「それはそうですけど…」

「あそことは付き合いがあるから、何だったら口を利いてあげるけど。」


 美菜さん曰く、件の不動産屋とは清澄家と御善家がここに土地を購入して家屋を建てる際からの付き合いがあるとのこと。


「無理を聞いてくれることはないけど、融資も良い銀行を紹介してくれるし、信用できるわよ?」


 まるでこの人は不動産屋の回し者ではないかと疑いたくなるような情報だが、取り敢えずは家賃のことと合わせて紗代莉さんに話してみようと思う。

どちらも彼女が乗ってくるとは思えないが、話のネタくらいにはなるだろう。




「まな、可愛いまな、きみが好きだよ…」

「ん、あん…、好き…、あ、あ、あ…」


 ベッドの上でうつ伏せになり腰を浮かせた愛花の女性の部分は、既にとろとろに蕩けていた。

送出を繰り返す男性の象徴には中で分泌された潤滑剤が纏わりつき、薄明かりの下てらてらとした輝きを見せている。

まもなく登りつめようとしている彼女の中は、象徴が最奥に届く度にキュッと締まり、あなたも一緒に登って来てと甘い誘いをかけて来た。

俺は愛花の誘いに乗って腰の動きを速めながら、小ぶりだけれど形の良い双丘を背後から揉みしだき、さらに刺激を与えて行く。


「ふあぁ、あん、や、あ…」

「まな、そろそろイキそう?」

「んんっ、あん、早くぅぅ、ああっ」

「分かった、まな、まな、くうっ!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 俺と愛花は揃って絶頂を迎え、部屋の中には一瞬だけキーの高いソプラノが響きかけたが、そのあとはくぐもった声だけが尾を引き続けていた。




「ごめん、まな、あんなやり方、嫌じゃない?」

「ううん、私は平気、悠樹こそ、ごめんね? あんなこと。」


 俺と愛花は先ほどの行為を振り返り、互いを思いやる。

今夜俺たちは、これまでしたことがなかったことを試みた。

愛花が絶頂を迎える瞬間に、俺の指を咥えさせたのだ。


「私の声、どうだった? ちゃんと抑えられたかな。」

「うん、多分大丈夫だよ。その証拠に、二人ともぐっすり寝てる。」


 先日、愛花と俺は、彩菜と涼菜から苦情を受けた。

愛花が絶頂に至った時の声が大きく、眠りを妨げられるので何とかしろと言うのだ。

二人とも冗談めかして言ってはいたけれど、表情からは本音の色が見てとれた。


「自分でも、まずいかもと思ってたから、言ってもらって良かったけどね。」

「俺は、まなの綺麗なソプラノは好きなんだけどね。」


 彼女の歌声は心地好く、高音の響きは心空くものさえ感じられる。

ただそれは、俺自身が絶頂を迎えている時だからかも知れないが…。


「悠樹がそう言ってくれても、二人はそうは思わないから。これから暫くは”おしゃぶり”かな。」

「ホントに嫌じゃない? ほかの方法を考えた方が良くない?」


 甘やかな行為が最高潮に至るところで口腔に指を入れるなど無粋も甚だしいと思うのだが、どうやらそうでもないらしい。


「それがね、悠樹の舌が入って来てキスしてるみたいで、寧ろいつもより感じちゃって…」


 確かに、愛花の口に指を差し込んだ時に、舌が絡みついてきたような気がしていた。

あれは勘違いではなかったようだ。


「でも、やっぱりキスはちゃんしたいな、ねえ…、悠樹。」


 そう言って愛花は、柔らかな唇を重ねてきた。

俺は返事の代わりに、彼女の唇に指ではなく舌を割り入れた。


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