第140話 Early holy night.

「あの、本当に良いんですか?」

「今日はスペシャルだからね、もちろん、4月1日は私が独り占めしちゃうよ?」

「リボンつけた方がプレゼントっぽくて分かりやすいかも、ゆうくん、ちょっと待ってて。」

「待て、すず、それは要らないから。」


 今日は悠樹たちに、お誕生会を開いてもらった。

私の誕生日は1週間後だけど、当日は家族でお祝いすることが恒例になっているので、1週間前倒しでお祝いしてもらったのだ。


 クリスマスイブが誕生日の私は、今まで友人に誕生祝いをしてもらうことがなかったので、きっとこれからもそうなのだろうと思っていた。

だから、悠樹と彩菜さん、涼菜さんが、私のお誕生会を開こうと言ってくれた時は凄く嬉しかった。


 そして今日、その時には想像もしていなかったサプライズが待っていた。

彩菜さんと涼菜さんが、私のことを"家族"として受け入れてくれたのだ。

 彼女たちと同じ人に恋をして、理解し合い、共に手を携えて生きていこうとすることを認め合った者として、その証を贈ってくれた。

こんなに素敵な誕生日プレゼントが、他にあるだろうか。


 彩菜さんと涼菜さんからは、更にもう一つ、贈りものがあった。

悠樹の独占権だ。

今夜一晩は、私だけが彼と枕を並べられる、私と彼女たちだけに認められた、まさにスペシャルな贈りものだった。




 悠樹とベッドの上で戯れ合って過ごしていた。

最初はお互いの体に触れて、相手が気持ち良くなれる所を探り合おうと言っていたけど、私ばかりが気持ち良くなっていた。

これまで二晩肌を合わせて、悠樹は私の気持ち良い箇所をほとんど把握していて、私は1箇所しか分かっていないのだから、こうなるのは当たり前のことだ。

 それではせめてその1箇所だけでもと思い、彼に教えてもらって色々と試してみたけど、結局また私が気持ち良くなってしまい、申し訳なさでいっぱいになってしまった。


 そしてもう一つ、悠樹に申し訳ないと思うことがあった。

私はまだ、彼をきちんと受け入れられていないのだ。


「私はしてくれて大丈夫ですよ? その、早く慣れたいですし…」

「俺はもう少し、きみとこうしていたいんだけど、ダメかな。」

「ダメではないですけど、男性って、挿れるのが一番気持ち良いんでしょう? だったら…」

「ありがとう、気持ちは嬉しいけど、俺だけ最後まで行ってもね。出来れば、きみと一緒に、その時を迎えたいんだ。」

「君がそう言うんでしたら…、でも、我慢はしないでくださいね? 私に出来ることがあればしますから。」


 先週お泊まりした時も、悠樹は私を幸せな気持ちにしてくれたけど、彼自身が絶頂を迎えることはなかった。

私はその時も自分を情けなく思ったけど、悠樹は優しく慰めてくれるだけだった。

やはり、私ではダメなのだろうかと、落ち込んでしまう。


「くすっ、愛花が考えてることを当ててみようか。」

「もう、笑わないでください。私、真剣なんですから。」

「ごめんごめん、きみが心配し過ぎてるみたいだから、ついね。」

「『し過ぎてる』、ですか?」

「うん、さっき君の中を触った時、先週よりも熟れてる感じがしたんだ。前回よりも気持ち良かったんじゃない?」


 確かにそうだった。

悠樹の指が私の内側を探った時、とても気持ち良い箇所があって、そこを刺激された途端、お腹の奥がきゅんとしたのが分かり、もっと触ってほしいと思った。


「多分、後ちょっとで君の方も準備ができるだろうから、もう少しだけ慣らしておこうよ。」

「はぁ〜、そこまで分かっちゃうなんて、これが経験の差なんですね。君に比べれば、私なんて子供も同然です。」

「きみが子供って…、なんか、俺がいけないことしてるみたいなんだけど…」

「ふふ、女子小学生に悪戯している、悪い男子高校生ですからね。」

「そっか、じゃあ、仕方ないね。お兄さんがもっと色々悪戯しちゃおうかな?」

「くすくす、一体何をされるんでしょう、怖いです。」

「まずは、こんなことを。」


 悠樹はゆっくりと顔を近づけて、舌先で私の唇をツンツンとノックした。

礼儀正しい訪問者を迎え入れようと唇を薄く開けるけど、一向に入ってくる気配がない。

仕方なく迎えに出てみると、今度は舌先をちょんちょんと、何度もつついてきたので、こちらも同じように応対した。


 ちょんちょん、ちょんちょんと、お互いにただそれだけを繰り返しているだけなのに、呼吸が少しずつ荒くなり、呼気が熱くなって行くのが分かる。

まるで脳が麻痺してしまったかのように夢中で舌先を動かしていると、突然、胸にピリッと軽い痛みを感じた。

粘膜を触れ合わせているのが心地好くて視線を向けることが出来ずにいると、胸の痛みは徐々に甘い痺れに変わっていき、やがて大きな快感になっていた。


 私は、またしても、悠樹の手練しゅれんで快楽の波に呑まれていった。




「う〜、何だか悔しいです。私、やっぱり何も出来ませんでした。」

「くすっ、何だか愛花らしいね。そのうち『勝負です!』って言い出すんじゃない?」

「たとえ言ったとしても、君には敵いませんけどね。でも、そうですね、今夜はもう少し付き合ってもらっても良いですか?」

「俺は構わないけど、きみは大丈夫? 無理しなくても良いんだよ?」

「折角、彩菜さんと涼菜さんから時間をもらったんですから、しっかりと使わないと。」

「なるほどね、それじゃあ、とことんお付き合いしましょうか。」

「ふふ、今夜は寝かせませんよ?」


 私たちはクスクス笑い合いながら、再び戯れ始める。

私は、この楽しい時間がいつまでも続いてほしいと願った。


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