第22話 可愛いのはお好き?
今日は清澄姉妹の買い物に付き合って、我が家の最寄駅から2駅離れたところにあるショッピングモールに来ている。
三人とも10時頃に俺の家でブランチしてからここに来て、まず初めにランジェリーショップに入った。
今日ここに来たのは、姉妹が着けているブラのうち、サイズが合わなくなったものを買い替えるのが目的だ。
姉妹は店員にサイズを測ってもらい、三人で似合うものを選んでいった。
俺たちは店内で他の商品も見て回り、今は姉妹が可愛いキャミセットやセクシーなナイトドレスを試着している。
「ゆう、こっちはどうかな。」
「さっきのより鮮やかな色味で良いんじゃないか?」
「明る過ぎない?」
「あやにはそっちが映えると思う。」
「そう? じゃあ、これも買おうかな。」
「ゆうくん、あたしのこれはどう?」
「うん? あー、いけるな、すずはスタイル良いから似合うよ。」
「ホント? じゃー、買っちゃおーっと。」
清澄姉妹は、二人共モデル顔負けのスタイルを誇っているので何を着ても似合う。
露出が多いナイトウェアも例外ではなく、纏っている慎ましやかな布地は、二人の綺麗な素肌を更に輝かせていた。
「うん、今日はこれくらいにしておこうかな。」
「そうだねー、でも可愛いのがあって良かった♪」
「二人共、どれも良く似合ってたよ。」
試着を重ねてようやく買うものが決まり、姉妹と共に会計に向かった。
「うーん、試着は面倒だけど、気に入ったのが沢山買えたから満足満足。」
「今日はゆうくんも居てくれたし、やっぱお買い物は楽しいねー♪」
「ホントにたくさん買ったよな。帰ったらもう一度見せてもらおうかな。」
俺たちが揃って店を出ると、通路を歩いている人たちがチラチラとこちらを見ている。
清楚系と可愛い系の二人の美少女が連れ立っていれば無理もないことだし、その二人が男の左右の腕に抱きつきながら歩いているのだから、目立つことこの上ない。
周りの人たちにどのように思われているかは想像できるが、それを気にしていると三人で歩くことは出来ないので堂々とすることにしている。
直接何か言われる訳じゃないから、害はないしな。
暫く三人でモール内を散策していると、とある店舗の前で彩菜の足が止まった。
思わず涼菜と顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
彩菜の目はファンシーショップのウインドーに釘付けになっていた。
「ねえ、ゆう! ここ、入って良い?!」
瞳をキラキラ輝かせて振り向く彩菜の頭をポンポンと軽く叩く。
この顔を見てダメだなどと言える訳がない。
「良いよ、行っておいで。」
「ありがとう! 二人も直ぐに来てね!」
彩菜はパァーっと満面の笑みを浮かべて俺に抱きつき、直ぐさま店に駆け込んで行った。
「なあ、すず。」
「うん、あたしは4つと見ました。」
「そうか、じゃあ俺は6つにしよう。」
「賞品はいつもので良いの?」
「良いよ、じゃ、俺たちも行くか。」
「うん♪」
涼菜と一緒に店舗に入るとテンションMAXの彩菜がぬいぐるみを物色していた。
彼女の興奮っぷりに店員が引いてしまっている。
「きゃーっ、くまさん可愛いーっ! このねこちゃんも、カピバラさんもー、いやーん、どうしよう!」
どうやら既にお迎えする候補が3匹いるようだ。
俺は涼菜の耳元に顔を寄せて囁く。
「あれ、3つ共行くと思うけど、どうだ?」
「うーん、あの猫と似たのを持ってると思うんだよねー」
「あー、そうだったかもなー」
ぬいぐるみを前にして迷いに迷っていた彩菜の動きが突然ピタリと止まった。
何事かと見ていると、猫のぬいぐるみをヒシと抱きしめ…
「うう、ごめんね、この前きみと似てる子をお迎えしたばかりなの、またいつかね。」
売り場に戻した。
先ほど涼菜が言ったとおりになった。
「ね?」
「流石は妹、これはヤバいな。」
結局、ぬいぐるみはクマとカピバラをお迎えすることで決定したようだ。
しかし、ここで予想外のことが起きた。
「う〜ん、満足! さ、買って来ちゃおーっと♪」
彩菜は他の商品には目もくれず、レジに向かったのだ。
彼女とは今まで何度となくファンシーショップに入ったが、こんなことは初めてだった。
これには涼菜も目を丸くしている。
「え、うそ!」
「あいつ、本当にあやなのか?」
彩菜は会計を済ませてホクホク顔で俺たちの下に駆け寄って来た。
「お待たせ! ふふー、今日も可愛い子をお連れしましたぁ♪」
ご満悦の様子でショップの袋を掲げる彩菜に俺は問いかける。
「あや、今日はぬいぐるみしか見てなかったけど、他のものは良かったのか?」
「うん、ホントはもっと見たかったんだけど、今日はお小遣いが足りなくて。」
「あれ? あやねえ、今月そんなに使ってたの?」
「ランジェリーショップで沢山買いすぎて、お母さんからもらったお金じゃ足りなくてね。」
確かに沢山買っていたが、予算オーバーする程とは思っていなかった。
それは涼菜も同じだったようで…
「さっき沢山買ってるなーとは思ったけど…、うーん、読み違えたー」
「ねえ、二人共、何でそんなに気にしてるの?」
「あやにしては直ぐに終わって珍しいなって思ったんだよ。」
彩菜のファンシーグッズ購入数で賭けをしていたとは言えないので、適当に誤魔化しておいた。
ちなみに賭けの賞品はアイスクリーム1個と、実に可愛いものだ。
「ない袖は振れないでしょ? それに…」
彩菜が俺の耳元に両手を添えて囁いた。
「すずの誕プレ分を少しずつ残しておかないとね。」
涼菜の誕生日までは3ヶ月あるが、彩菜はもう準備を始めたようだ。
きっと何を送るのかも目星をつけているのだろう。
彩菜が俺に何を言ったのかを涼菜が知りたがったが、言う訳にはいかないので内緒にしたのは言うまでもない。
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