第45話 俺たちはサキと繋がったのだ・・鷹志

〜回想・古多摩 佐川鷹志〜


「ふむ・・なかなか興味深いな・・」

鷹志は無重力を楽しんでいた。飛ぶと似ているように思うが、全然違う。

重力からの解放。いかに普段重力というものに身体が縛られているかがわかる。

抱えているカナからも全く重みを感じない。・・まあ、この世界は想像次第で色々できてしまうのだが・・

「たかし〜〜これ〜〜」

カナがペンダントをつまみ上げる。暖かい色に光っている。ペンダントは少し浮き上がり、ある方向へ誘っているように見える。

同時に手首からも力の方向性を感じる。

「なんていうか・・ベッタベタな展開だなaaahhhH」

言った瞬間に電流が手首から走る!!・・好きな漫画の悪役みたいな叫び声をあげてしまった・・思わずポーズも取ってしまっていたようだ。

「たかし〜〜だいじょ〜ぶ??」

「あ、ああ。ただ文句くらいは言ってやらないとな・・あのジジイeeeehh」

学習しろ・・俺・・ちょっとテンションが上がりすぎているな



「結果電流に対して耐性を獲得した・・・じゃねえよ」

目を閉じて体からうっすらと様々な色が漏れ出ているサキ。

それを囲みそれぞれの力を注いでいる太母と老賢人に文句を言う。

うっすらと透けているので分身的な何かだろう。

「ああ!サキ〜〜〜だいじょ〜ぶ〜〜」

カナが飛び上がり、サキに近づこうとする・・が漏れ出ている力が邪魔をする。

「大丈夫ですよ・・この子はすごいですね・・混在する力を自然に融合させてこの世界とあなたたちの世界を循環させています。多分無意識で行っているのでしょうけど・・・」

「ほ〜〜〜なるほ〜〜」

「サキに今何が起こっているのでしょうか?」

カナが考えることをやめたので、とりあえず情報を整理しよう。

「対話が終わり・・再生の途中です。すぐに安定するでしょう」

「半身とトリックスターとはうまく行ったんですね」

袖か引っ張られる

「クスタくんだよ〜〜たかし〜〜」

「そうだな・・しかしこれからはサキをなんて呼んだらいいんだかわかるか?サキクスタ・・クスタサキ・・サクスタキ・・何がいいと思う?」

「え〜〜?あ〜〜でもそうか〜〜ど〜しよ〜」

「そこであえてトリックスターなのだよカナ君。太田・トリックスター・サキ!どうだ?」

「おお〜〜〜。女子のプロフェッショナル〜〜〜!」

体に電流が走る・・その電流を誘導して逆の手から放出する。

「何してくれているんでしょうか・・ろ〜う賢じ〜んさん」

「11人おる・・それにお主ら3人じゃ」

「予告編か何かでしょうか??意味不明なんですが詳しい説明をお願いしたい所ですね〜〜」

「今回繋がりができた人数じゃ。それが始まりの人となる。お主ならそれで十分じゃろ」

今回の騒動で巻き込まれた人数。この世界と繋がりができたと言うことは今後のトラブルが予想される。経過観察が必要だろう・・

「かといっていますぐ何が出来るかというと、そうではありません。強く想像して、それを願うと現実に近づく程度です。まあ、これはそもそも人間が元々持っている力なのですが・・」

「どういうこと〜〜??」

「信じるものは救われる率が上がるって話だよ」

太母の言葉に首を傾げるカナ。どうせ後でサキからも説明を求められるだろうからその時にまとめよう。最後にダメ元で確認しよう。

「一つだけ質問・・始まりって事は増えるって事ですかね」

「繋がりができた人間と繋がるという事はそういう事じゃ・・・身を持って知ったじゃろ」

つまりはそういう事だろう。俺たちはサキと繋がったのだ。

「シンクロニシティ・・か」

忙しくなりそうだ。色々調べなければならない事も多い。

「頃合いか」

「今この時です」

思考の海に潜水しかけた時に太母と老賢人が不思議な響きの声を出す。

「佐川鷹志」

「カナちゃん」

『この子をたの(む)みます」

二人の声とともに体に重力を感じはじめる。

二人の体は金色の・・西日に似た輝きに包まれて・・・・

その光は暖かく体にしみていく。

輪郭は朧げになり・・・・またその形をゆっくりと取り戻していく・・・


はっきりと自分の感覚が戻ってきた瞬間・・思わず倒れ込みそうになる。

なんとか重力をコントロールして見上げると・・・目の前に見知った光景が広がっていた。

「夢見ヶ崎動物公園?」

つぶやく。芝生に寝転がるサキとそこに向かって転がるカナ。

時計を見る。動いている。

どうやら無事に帰って来れたようだ・・・



「じゃあ帰ろうか!」

笑顔でサキがいう。・・お互いの話を終えて・・・


太田サキ

佐川鷹志

鳩ヶ谷カナ


三者三様だが、達成感と疲れが顔色からにじむ。

夕暮れは夜になり・・・はっきりとした夜・・良い時間だ・・・また時間がくれば朝が来るのだ。

そして昼がすぎてまた夕暮れ。動いていくのだ。

毎日同じようだけど、日が昇る時間や、沈む時間は毎日違う。

ちょっとずつだけど、世界は変わっていく。

コレもその変化の一部なのだ

だから・・・ちょっとずつなら・・変わっていけるはずだ。

そう思ったのは誰だったのか・・・皆がそう思ったのか・・・



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