第37話 どうやら・・・成功したみたいだな・・ 鷹志

〜庭 太田サキ〜


「上空から見ると・・曼荼羅みたいな形をしているのか・・」

一通りテーブルや、道をしらべた佐川が、メモを取りながらつぶやいている。

「まんだらって、仏教とかの?」

「ああ。まあ、もっと原始的なものかもしれないけどな。」

佐川が曖昧にこたえる。佐川自身、まだ結論が出ていないのだろう。

・・幻視的・・原子的・・違う当て字を楽しみかけた・・が後ろから声がかかる

「サキ〜〜鷹志~~~~。ごめん~~ねてた~~。」

テーブルのひとつに寝かせておいたカナが、目をこすりながら、近づいてくる。

「よかった、気がついて。カナ痛いところ無い?」

「う~~。だいじょうぶ~~。ここどこ~~??」

「どこだってさ、佐川」

カナからの質問に、佐川を振り返ると・・

「今調べている所。あとは・・あそこだ。」

といいながら、佐川は広場の中心に向かって歩いていく。

広場の中心には、石でできた長方形の箱が、円形に並べてある。

その中心には、良く磨かれた台座。これもきれいな真円を描いている。

石で出来た箱の数は12個。

台座を中心に均等な距離をたもっている。

「何なのかしら・・これ」

箱のひとつに触ってみる。よく磨かれているらしく、表面は滑らかだ。

「なんか~~~ふた~~~」

カナが箱をいじっている。

箱を横から見ると、確かに、薄い一枚の石版が、箱を蓋している状態だ。

「ん~~~~~。てい~~」

蓋がはずれなかったのか、カナが助走をつけて、箱にキックをしている。

あ、少しずれた。

「それ・・たぶん」

佐川が何かを言いかけた。

「と~~りゃ~~~~」

カナの会心の一撃。

ふたが吹き飛び、土煙が上がる。

「なにが〜〜でるかな〜〜・・ヒ・・」

煙が収まり、箱の中をのぞいたカナは絶句した。

「石棺だぞって・・やっぱりな。」

佐川も中をのぞいて、平然と言う。

箱の中に入っていたのは人だった。

石棺ということは死んでいるのだろうか?

「生きてるの・・??」

死んでるの?とは聞きたくなかった・・

入っていたのは私達よりも若い・・小学生くらいの少年だった。

「あれ~~~??」

カナが少年をみて、声をあげる。

「この子~~しってる~~。テレビでみたよ~~~」

カナの言葉に、少年の顔をもう一度見る。

たしかに、見覚えのある顔だ・・確か・・。

「行方不明になっている子の一人だな。」

佐川の言葉にうなずく。たしかにそうだ。

ニュースで流された行方不明の子どもたちの写真。その中で見た顔だった。

「その子は、両親が離婚の調停中なんだってさ~。」

後ろから、明るい声が響く。

振り返ると、台座の上にクスタが座っていた。

「クスタ!!」

声をかけるが、クスタはそ知らぬ顔で、言葉を続ける。

「あの子は・・いじめにあってる。」

石棺のふたがひとつ吹き飛んだ。

「あの子は・・親がすごく教育熱心なんだ~~」

蓋が飛んでいく。

「友達がいないと思っている子」

またひとつ。

「すきな人にフラレタ子に、自分の容姿が嫌いな子」

クスタの言葉に合わせて、石棺の蓋が飛ばされていく。

「みんなとズレてしまう子。兄弟が優秀な子。愛されていない子。」

石の板が舞って、土埃を上げる。

「ひどく傷つけられた子。やりたいことが、出来なくなってしまった子。みんな、みんな、み~~んな、この世界が好きだってさ。」

石棺は、残りひとつ。

「これは、ボクの体。この子だけは、この子じゃないといけないんだ。」

クスタの瞳が、銀色に光る。

最後の石棺がゆっくりと開き・・その体が姿を現す。

石棺から浮かび上がってくる姿は、ワタシ自身のものだった。

他の子と同様で、グッタリとしている。

「でも、おかしいんだ。半分しかない。ボクの体が半分だけなんて・・おかしいよね。」

そういってクスタはケラケラと笑う。

笑った後、クスタはこっちを見た。

銀色の瞳。しかし、その奥には何も無い。

人形の瞳を見ている感覚に近いのだろうか・・・何も感情が無いのだ。

「あの子~~なんか~~怖い~~。」

カナの声は揺れ、かすれ、震えている。

「でも、良かった。もう半分が、ちゃんと自分から来てくれた。」

クスタの目は、私を見ている。

まるで、すべてが完璧。といった満面の笑みだ。

「さあ、ボクに体をちょうだい。」

クスタが手を差し出した。

その瞬間、まるで、大きな手に鷲づかみにされているような感覚。

そして圧迫をうける。体が・・動かせない・・。

「・・イ・・ヤ・・いや・・!!!」

必死で抗うが、どうにも出来ない。

「サキ!!」

カナが私に近寄る。

「なんだっけ・・ああ、そうだ邪魔!だっけ?」

クスタが笑いながら、空間をはじく。

そのはじかれた空気が球体となって、カナの体を弾き飛ばす。

「~~~~~~~!!」

声も立てずに、カナがなぎ倒されて、動かなくなった。

「カ・・ナ!!」

声もうまく出せない。

「あったり~~~。」

クスタがはしゃいでいる。

「さ~~て次は・・」

クスタがこっちを見る。

満面の笑みを浮かべて光り―――光の球にあたり―――爆発した。

・・・爆発?

体が・・動く・・。

振り返ると、佐川が妙なポーズをとっている。

「どうやら・・・成功したみたいだな・・カメ○メ破!」

佐川が言いながら、クイっと輝くメガネを直した。

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