第31話 指を振って・・オレの真似なのだろうか?  鷹志

 〜午前十時二十三分 佐川鷹志〜


「三角縁神獣鏡!?」

サキが聞き返してくる。

「さんかくぶち~~しんじゅ~きょ~~??」

カナがリピートする。

「白山古墳・・」

サキがつぶやく

「ぜんぽーこーえんふ~~~ん。」

カナがはしゃいでいる。

・・・・・・・カナは放置しておいても問題ないだろう。

佐川鷹志はそう考えた。

現在はサキの家。

私、STS・・スーパーティーチャー佐川による「古多摩と加瀬山古墳群」の講義の最中だ。

電話の後、翌日サキの家に集まることになった。

そのほうが、次の予定にとっても都合がいい。

まあ、その事は置いておいて、とりあえず、講義を続けることにしよう。

「結論をまとめると・・・クスタは、クスタ自身の言葉から1500年前。――つまり、約4世紀の人物となる。ここは、なっとくしたな?

切り崩されてしまった山というものは、このあたりだと。この加瀬山。ここはこのあたりが海の・・古多摩湾と後々名前がつけられたぞ!ここテストによく出るからな・・海の時からある山だ。」

「テストは作らなくていいからね」

「の〜〜もあテスト〜〜」

「言っておかないとこの男は作るから、油断しちゃダメだよカナ」

「ゆだんたいてき〜〜てきをいるには〜〜みかたから!」

「カナ、それだと唯の無差別射的だから・・」

「静粛に・・まあ、古多摩湾と呼ばれていた時代は、海に浮かぶ島であった。この山は、洪水のときの埋め立てなどで、現在2/3くらいの大きさまで削られ、その際、ここに、もともとあった古墳なども破壊されたわけだ。」

「人間て・・どうしてそういうことしちゃうんだろう・・」

サキがつぶやく。

「仕方が無いよ、文化とか芸術は人間がある程度の生活水準に満たないと、切り捨てられてしまうものだからね。」

いったん講義を中断して、サキにいった。

「おなかが~~すいても~~たべられないからね~~」

カナもサキの肩に手を置いて言う。

もしかしたら結構理解しているのかもしれない。

「まあ、話をもどそう。」

重要なのは、この先だ。

「破壊された古墳の中で4世紀のモノと思われているものが、白山古墳。

ここには調査が入っていて、様々なものが見つかっている。

その中のひとつで、もっとも力がありそうなものが・・・三角縁神獣鏡なんだ。」

「つまり、これが、クスタの体ってこと?」

サキが聞いてくる。

「なんで~~かがみが~~からだなの~~??」

カナからもするどい?質問

「まあ、それに関してはこの写真を見てくれ。」

写真を鞄から取り出し、二人の前におく。

「写真に写っているのは、三角縁神獣鏡の一部を拡大コピーしたものだ。」

続けて説明しようとすると・・サキが口を開いた。

「これって、クスタと同じ服装じゃない。」

「ほんと~~夢の子と~~おんなじ~~~」

カナも声をあげる。

どうやら、説明の手間が省けたようだ。

「というわけで、これが体でなかったとしても、何かの手がかりにはなるはずだ」

俺の講義はこれで終わり。さて、どうなるかな?

二人を見てみる。

カナは写真をみながら、「これは~~とり~~」とか言っている。

「で、この鏡はどこにあるの?」

やはり、サキから出たか、この質問・・・

とりあえず、さめてしまったコーヒーを一気に流し込む。

そして言ってやった。・・・これを言うために資料を用意したのだ。

「わからん!」

しばらくの沈黙を破ったのも・・・やはりサキだった。

「どーゆー事よ!長々と講釈たれたと思ったら、わからんですって?一番肝心な部分じゃないのよ!」

サキは激怒しているように見える。

こんなに感情的な人間だっただろうか?

「仕方が無いだろ、行方がわからないし、その鏡だって同じものが、500枚近く日本中で、発見されているんだから。」

取り合えず、言い訳をしてみる。

「ソレを探すのが佐川の仕事でしょ!いつものありえない行動で何とかしなさいよ!」

いつの間にオレの仕事になったのだろう?

感情が高ぶりすぎて、自分がむちゃくちゃ言っていることが、良くわかっていないのだろう。そういうことは人間多々あるものだ。

「まあ、落ち着けって。とりあえず、加瀬山の周辺掘ってみたら見つかるかもしれないし」

なだめたつもりだったが・・

「適当に掘って見つかるわけ無いでしょう!!」

逆効果だった。

こういう場合はどうするのが適切だったか・・と考えていると

袖を引っ張られた。

見ると、カナだ。

サキの袖も同様に引っ張っている。

「けんかは~~よくないよ~~」

間の抜けた声。

「原因は~~なんですか~~カナに~~はなしてみなさ~~い」

気がぬけてしまった。

それはサキも同様らしい。

「え~とね、カナ。この鏡がどこにあるかって事が原因。まあ、佐川に当たってもしょうがないことだったんだけど。」

サキは写真を指差しながら、カナに説明している。

どうやら冷静にもどったらしい。

「ほどなる~~。じゃあ、もんだいかいけつ~~~」

カナはうれしそうに言った。

「いや、解決はしてないんだよ、鏡の場所が・・・」

サキが突っ込みを入れている。

なかなかこのポジションが板についてきた様子だ。

しかし、次にカナの口から出た言葉は、オレでさえびっくりだった。

「ちっちっち~~サキく~~ん。かがみは~~~カナがもってま~~す。」

指を振って・・オレの真似なのだろうか?カナは高らかに宣言したのだった。

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