第26話 鳥は・・黒というよりも・・深い・・深い青
〜AM/PM ??! 太田サキ〜
「見つかっちゃったかな?」
サキは佐川に小声で問いかけてみた。
「しーーー。大丈夫そうだ。」
佐川は唇に指を当てて、頭上を警戒している。
―――???あれ?
私の目は、佐川の手に釘付けになる。
正確には、手首についている腕時計。針がぐるぐると回っている。
見間違いじゃない・・どんどん回転が早くなる
「佐川、佐川、時計!」
そういった瞬間。
PPPPP PPPPP PPPPP PPPPP
アラームがなった。
慌てて空を見上げる。大きな黒い鷲が・・大きく旋回して・・
目が合った。
PPッ
佐川が音を止める。
「あんた!なんてことしでかしてんの!見つかっちゃったじゃない!!」
講義の声を上げると、佐川はニヤリと笑っていった。
「チャンスだ!駅まで走るぞ!」
「はあ??」
またもや腕をつかまれて、引っ張られていく。
・・何がチャンスだ、絶賛ピンチだって言うのに
周りの景色が飛ぶ速度に合わせて流れていく。
結構なスピードで飛んでいるのに、羽音がどんどん・・
ドンドン迫ってくるように感じた。
トミヤ、サンエイストアー。駅はもう少し!
リャン――リャン―――リャ――ン
踏み切りの音が聞こえる。・・この通りを抜ければ、駅だ!
「しまった!遅かった!」
佐川が叫んだ。
一足先に通りを抜けた佐川の、その目の前を、電車が通りすぎていく。
踏み切りはまだあかない。
後ろを振り向くと、黒い鷲が、ドンドン近づいてくる。
「サキ、どっちだ?右か、左か?」
佐川に急に問いかけられる。
え?え??
前は踏み切り。
後ろには鷲。
左に行くと・・・『左へ!』・・どこに出るんだっけ?
右は・・右は・・『そっちはだめ!』
頭の中で何かが叫ぶ。でもその声にしたがってはいけない気もする。
完全にパニック状態だった。
鳥の羽音がすごく近くに聞こえる。
「あぶない!!」
佐川が一声あげて、私を突き飛ばした。
私が、今いた場所には佐川がいて、黒い塊が・・佐川に向かって行く・・
まるでスローモーションみたいに・・良く見える。
背中のカナをかばって・・腕を差し出す佐川
佐川の腕に食い込む爪。
えぐられる肉。
はじき飛ばされる、佐川とカナ・・
よく見ると、鳥は・・黒というよりも・・深い・・深い青。
「サキ!!コッチだ!!しっかりしろ!!」
右側から佐川の声が聞こえる。
振り向くと佐川が腕から血を流している。
「佐川、腕・・腕・・」
「いいから、カナを!俺の背中に乗っけてくれ」
言われるままにカナを背負わせる。カナの頭にもうっすらと血がにじんでいる。
「あ!カナが・・」
「時間が無い。一気に飛ぶぞ!!」
佐川が私の手を握って叫んだ。
振り返る 鷲はいったん上空に飛び上がって左側へ旋回
狙いを定めてはばたく 翼が大きく広がった
・・行く方向は・・右しかない。
思い切って地面を蹴った。
グニャリと視界がゆがむ。
佐川の手を握り返す。
視界はグルグルと周り、真っ暗になった。
佐川の手の感触も・・もう感じない。
真っ暗―――――
そこから、ほんのりと紫色が混じって・・
―――光。
まぶたを開ける。
緑、その先にぬけるような青。
ぼんやりとした焦点が、次第に鮮明になってくる。
ここは・・公園?
小さな滑り台とブランコが見える。私が座っているのはベンチ。
見たことがある公園だ。たしか・・
以前 道に迷って お弁当を食べた公園。
ひざの上に重みを感じる。見下ろすと、カナが眠っている。
カナ・・頭をなでる。怪我は無いみたいだ。
その代わり、おでこに「三年寝太郎」と書いてある。
「つめてーーー」
声が聞こえて振り返ると、佐川が水のみ場で顔を洗っていた。
「佐川!腕は?」
カナをベンチに寝かせて近寄る。
「やーーと、起きたか!」
平然と言う佐川の腕を取り、まじまじと見てみる。
無い。
・・・怪我どころか、すり傷も無い。
反対の手も確認するが・・怪我はしていない。
「夢だからな。まあ、夢でよかったってところだけど」
佐川は捕まれていないほうの手を使い、タオルで顔を拭きながら、あっけらかんと言う。
「夢だけど、夢じゃなかった〜!に、ならなくて良かった〜〜〜あの、サキさん、イタイです」
裏声で気持ち悪い事を言う佐川の腕を捻ると、腕時計の秒針が動いているのが見える。・・・動いている・・ということは・・
「私たち、帰って来れたんだね!」
思わず、佐川の手を握っていった。
「そうだな。ゲームクリアーだ!」
佐川がぐっと手を握り返してくる。
ちょっとはずかしい感じがしたけど、なんだかそうしたかった。
私を見ている佐川。思わず、私も佐川の顔を見つめ返す。
佐川の顔は、なんだかぴくぴくしていた。
何でだろう・・と思った瞬間。
「ぶはっ~~~」
佐川は豪快に吹き出した。
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ここまで読んで頂きありがとうございます。
リアルでのトラブル発生し、更新が遅くなりました。すいません。
ここが折り返し地点です。
頑張って書きますので楽しんでもらえたら幸いです。
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