第21話 ネガティブよりのインドアエキスパート系

〜依然時間未確認 佐川鷹志〜


右手の法則は使えないな。迷路と言うよりも・・罠だな

鷹志は懐中電灯で通路を照らしながら、考えた。

天井の高さは2mぐらい。

外の壁は5~6mくらいだったから、単純に考えると、この迷路は2階建~3階建てくらいだろう。おそらく・・今いるのは3階部分。

しかし、方向的に、距離的に、あたるはずの壁・・・先ほど飛び越えてきた外の壁・・・に当たることは無く、引き返そうとしたときも、来たはずの道がなくなっていた。

行き止まりは無いが、同じ場所に出ることも無い。

歩いた先に迷路が出来ていく。そんな印象を受ける。

夢の中なので、常識は通用しないか・・

そう考えていると後ろから声がかけられる。

「佐川、気をつけて歩いた方がいいかもしれない・・・もしかしたらワナとか・・キャーーー」

悲鳴に振り返ると、サキが穴に落ちそうになっている。見事な落とし穴だ。

必死で穴の端につかまっている状態のサキ。

「ちょっと、佐川!何ボーっと見てんのよ!たすけてってば」

おそらく、急に落ちたので、パニックになっているのだろう。

サキを見つめると、できるだけ落ち着いた声をつくり優しく言う。

「サキ、落ち着け、お前は飛べるだろ。」

サキは一瞬はっとした表情を見せると、口を真一文に結んで、眉間にしわをいれながら、無言で浮かび上がり・・・いきなり蹴りを入れてきた。

乱暴な女性だ。口の前に足が出るとは・・

しかし、こんなにサキは乱暴だっただろうか?

学校ではいつもつまらなさそうに、授業中にノートを眺めていることのほうが多かった。・・・隣の席なので見ようと思わなくても目に入る。

歴史の授業は嫌いでは無さそうな感じがする。しかしそんな中でも、時折どこか別の場所を見ているような時もあるが・・・

初めはネガティブよりのインドアエキスパート系かなと思ったが、鷹志はそう言うタイプの知識に目がない。いやむしろ好きだ!

現時点での正確な知識を布教してくれるし、情報が更新されたら細かく報告をしてくれる。常に新たな知識を求めている自分にはピッタリだったので

自然と軽い気持ちで話しかけて見たところ・・・結果はかなり面白かった。

言葉は無愛想だが、表情がコロコロ変わる。考えてることが表出しやすい人間なのだろう。今ではどこか別の場所を見ている事も、思考の渦にでも巻き込まれているのであろうと察しがつく。

ほかの人に会話を合わせようとしているが、時々妙なことを口走る。

そんなところが気に入っている。・・・ペット感覚

そんなことを考えていると、サキは落ち着きを取り戻したのか・・・

ちょっとイライラしている様子。

「ワナまであるなんて、なんて迷路なの?」

なんて穴をのぞきながら、ぶつくさ言っている。

ふと考えつき、石を拾い、通路の先に投げてみる。

コーン コロコロコロ・・・

シュバッバババ

イメージした通りの槍が地面から飛び出した。音もなかなかナイスだ。

実を言うと、拾った石もイメージしたものだ。

「もう、なんなの~~この場所~~」

後ろでサキが騒いでいる。

説明してやらないと・・面倒なことになるかもしれない。

ひと息ついて考えをまとめると、サキに向かって話しはじめた。

「いいか、サキ。その穴はサキが想像してしまったために、出来た落とし穴だ。で、この槍は俺が試しに想像してみた。この意味がわかるか?」

サキはちょっと考え込むと、

「それって、想像したことが、夢の世界で現実になるってこと?なんだか言葉にするとややこしいけど・・」

話が早くてたすかる。

「そう言う事だ。ただ、ありそう、とかあやふやなイメージじゃなくて、あるに違いないと強く想像しないと、無理みたいだけどな。だから間違っても、余計なことを強くイメージしないようにな、頼むぞ、太田サキ君」

話していると、サキの顔が曇った。

「どうしよう・・佐川・・・私、想像しちゃった・・・」

カチリ。足元で音がする。

遠くから、何か転がってくる音が聞こえてきた。

「映画でみたことあるから・・・かなり鮮明に・・・」

音がドンドン近づいてくる。

振り返ると・・・大きな丸い岩が、ものすごい速さで近づいてきていた・・・

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