第18話 たしかに、なんだかさっきよりもでかい

〜AM/PM ??? 太田サキ〜


サキは佐川とカナ?の会話を、数歩後ろを歩きながら聞いていた。

「う~~んと、かくれんぼを~~してたの~~」

「へ~~だれと?」

「しろいね~~髪の~男の子~~」

カナ?は文字通り、佐川の頭にべったり引っ付いている。

肩車にご機嫌なカナ?は、今日あったことを一生懸命佐川パパに話す。

アレがカナとは信じられないが、そんなことをいったら、すでに様々なことが信じれる範囲を超えている。

「パパが~~迎えにくるまで~~あそぼ~~って」

「そうか~楽しかったかい?」

「うん♪でも~くろい~~とりさんが~~ときどき~~意地悪しにくるの~〜」

「へ~~こわいね~」

黒い鳥。

なんだか妙に引っかかる言葉だ。

振り返ると小高い山に鳥居が見える。

鳥居に・・黒い点・・・

「おい、サキ!」

佐川が声をかけてくる。

「だめ~~~。」

その佐川の顔が横にびょ~んと伸びる。

「おひ、カナちゃん、やめなひゃい」

「パパは~~ママと~~カナいがいの~~女の人と~~しゃべったらダメ~~」

「わかっか、わひゃったから~」

「う~~」

カナ?は佐川の顔を引っ張ったまま、泣きだしてしまった。

「やだ~~。どっかいっちゃいやなの~~一人ぼっちこわいの~~」

佐川はフガフガ言いながら、目で助けてくれと言っている。

思わずカナ?の背中をなでながら、聞いてみた。

「パパはどこにも行かないよ。」

涙と鼻水とよだれで、佐川の髪の毛はベトベトだ。

「いくも~~いなくなっちゃうんだも~~ママも帰って来なくなる〜〜遅くなっちゃうんだも~~」

「なんで、そう思うの?」

「わかんない~~あたまいたい~~」

「大丈夫?」

頭をなでていると、ちょっと落ち着いてきたらしい。

カナ?の顔を、ティッシュで拭いてあげると、顔をむ~~と差し出してくる。

いつも両親にそうされているのだろう。なんだかかわいい。

「わかんないのか~。じゃあ、しっかり捕まえてないとね。」

「う~~~」

カナ?は力強くうなずくと、佐川の髪の毛をぎゅっと握り締めた。

「イタイイタイ、髪の毛が飛んでく〜〜。カナ、どこにも行かないから!」

「だめ~~~」

悶絶する佐川。

こんな佐川はめったに見たことない。

笑いをこらえながら

「カナちゃん、カナちゃんのパパとお話したいときは、どうしたらいいかな?」

と聞くと、カナ?は

「う~~ん」と声に出しながら考えて、ニカっと笑っていった。

「おねえちゃんは~~。きょかします~~。」

「ありがとう。お姉ちゃんはね、サキって名前なんだ。」

「ともだちと~~~おなじなまえ~~」

カナは大発見といった顔で言った。

「そうなの?」

「うん~~おとまりいくの~~」

それを聞いて頭の中で何かがはまった。間違いない。

「やっぱり・・カナなのね?」

「はい~!さとやま~~かな~~で~す~~さん~~さ~い~」

カナは手を上げると、指を一生懸命折り曲げて、3本立てた。

「いつ行くの?」

「どこに~~?」

「サキちゃんちへおとまり。」

「う~~~んと~~う~~~んと」

カナは考え込んでいる。

「おい!」

佐川が声をかけてきた。

「何よ。いまカナと話しているんだから邪魔しないでよ!」

「そのカナなんだけど・・さっきより重たくなってないか?」

「はあ?」

佐川とカナを見比べてみる。

たしかに、なんだかさっきよりもでかい。

さっきは佐川の頭に、頭が乗っている状態だったが、今は胴体が見えている。

「う~~ん~~と~~」

相変わらず、カナは考え込んでいるが、5歳くらいに成長しているようにも見えた。

「カナちゃん?わからないんだったら、もういいよ」

また少し大きくなったような気がして、おもわず声をかけた。

「ん~~~?」

カナは首をかしげている。

「あ~~。そうだった~~~」

カナは突然そういうと、ピョンと佐川の頭から地面へ・・・

・・降りずに、空中に静止した。



〜ゆうがたくらい? カナ?〜


この人たちはなぜこんな顔をしているのだろ~~?

カナはそう思っていた。

サキと名乗ったおねえちゃんは口をパクパクさせている。

お魚みたいだな~~とカナは思う。

「ほほ~~これは興味深い」

背の高いメガネのお兄ちゃんはそういって、カナの頭の上や足の下を手で探っている。変な動きがなんだか面白いし〜〜

どこかパパに似ていて、このおにいちゃんは好き~。

「カナちゃん・・・飛べるの?」

お魚のおねえちゃんが、そういった。

「とぶ~~~?」

なんだろう?鳥さんだって飛ぶのに。

おねえちゃんとおにいちゃんは、良くわからないお話をしている。

「ちょっと佐川どうなってるの?」

「ふむ・・推測はできるがな・・」

難しい言葉だから良くわからない。カナはお空をみてよ~~。

「推測?」

「ああ、まあそれより、もっとカナと話をしてみてくれ。」

お空はだいだい色~~。雲は金色~~。

そういえば、黒い鳥さんはいなくなったのかな?

あの鳥さんは~~ちょっとこわいかな〜〜。

「ねえ、かなちゃん?」

お姉ちゃんの顔が空の中に入ってくる。

「さっき、なにか、しようとしてなかった?」

なんだっただろう?え~~と~~、なんだったのかな?

「ほら、サキちゃんちへ、お泊りにいくっていってて、それで・・」

サキちゃん・・はともだちで、おとまりにいきます。

「おとまりに~~~いきま~~す!」

はじめての、おとまりなのです。

「ういんな~こ~ひ~~~!!」

ってなんだろう?自分で言った言葉の意味がわからない。

う~~ん??~~~考え込んでいると、

どこか遠くで、高く、よく響く泣き声が聞こえた。

あれは、怖い声。鳥さんの声。いつもカナに意地悪する黒い鳥さん。

遠くの山から・・黒い点が近づいて・・

「や~~。とりさん~~」

逃げなきゃ~と思ったとき〜〜カナの体は〜〜すごい速さだったのです。

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