第17話 パパ??って俺のことか???・・鷹志

〜午前午後不明時間未確認 佐川鷹志〜


百円玉があれば、王様だったな・・佐川鷹志はそんな事をおもいだしていた。

今となっては、小銭だ。

でも、子供のときは、これで一日遊べた。

真剣に十円のくじを引いて、あたりが出たらヒーローだ!そんな僕と握手!

・・そんなことを思い出させてくれる品揃えだ。

鹿丸商店。駄菓子屋の名前は、そう書いてある。

四畳くらいのスペースに、ぎっしりとお菓子や、クジや、キャラクターカード。

簡単なおもちゃなんかが並べられている。

「なつかしいな~~」

お菓子の袋をひとつ取ってみる。

「あれ?空だ・・」

よく見ると袋が破かれ、中身が無い。

「佐川!これ・・」

サキが地面を指差している。

転々と・・店の住居部分へ向かってゴミが落ちている。

「だめだよ~委員長!散らかしたら~~」

場を和まそうと言ってみたが、見事に無視された。

サキは警戒しながら、店と家をつなぐ、ガラスの引き戸に手をかけた。

カラカラカラ・・・

引き戸は抵抗無く開いた。

サキは中を見たまま動こうとしない。

サキの頭越しに中をのぞいてみる・・・何の変哲も無い和室だ。

コタツがおいてあり、その上にお菓子のゴミが大量にある。

「・・・・ねえ、佐川・・」

サキは声を潜めて、一点を指さした。

コタツの端から・・何かがはみ出している。

あれは・・・たしかカナがはいていた靴下ではないだろうか?

「カナ!いるの?」

サキが部屋の中に声をかける。

・・・・返事はない。

サキはもう一度声をかけてみた。

「カナ~~。いないの?」

・・・やはり返事はない。

部屋の中にはいり、靴下を取り上げてみる。

ん?抵抗がある。引っ張っても出てこない。

何かにはさまれているのかな・・・

と、思っていると、手の中の靴下がコタツにサッと飲み込まれてた。

「・・・・サキ!コタツに靴下が食べられた!」

コタツから飛びのき、サキに声をかける。

「そんなわけ無いでしょ!中に何かいるのよ!」

サキはゆっくりと、コタツから数歩離れた。

緊張が走る。

そのとき、コタツから妙に、間延びした声が聞こえた。

「いないよ~~~だれも~~隠れて~~いません~~」

あれ?この声はカナの声じゃないか?

虚をつかれて、一瞬呆然としていた。

「カナ?」

サキがコタツに声をかける。

こっちも、予想外といった感じだ。

コタツが、もぞもぞと動く

「カナでは~~ないですし~~かくれてなんか~~いないのです~~」

音を立てないようにしゃべるコタツに近づくと・・一気に布団をめくってみた。

「ぴゃ~~~~。だめ~~。」

そこでうずくまって悲鳴をあげたのは・・小さな女の子だった。

3歳くらいだろうか?

クリンクリンの癖っ毛で、ダブダブの靴下をはいている。

他の服装も、明らかにサイズが違っていて、立ち上がっても地面にすってしまうだろう。

ただ、その服装は、カナがハロウィンの日にきていた服と同じだった。

「カナ・・なの?」

サキも同じことを思っていたのだろう。確かに面影はある。

「カナのこと??おね~ちゃんは~だれ~~?」

会話が通じていないが、この子の名前はカナなのだろう。

「カナちゃんは、ここで、なにしていたんだい?」

ゆっくりと問いかけてみた。

するとカナ?はこっちに振り向き、顔を輝かせて飛びついてきた。

「パパ~!!」

パパ??って俺のことか???

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