第11話 きっとうちの家族はみんなアホなのだ。

〜PM4:19 太田サキ〜


その後、ドーナツとコーヒーで休憩をとって、少しショッピングモールをのぞいて、家に着きました。後はいつもと同じ。

日記にそう書くと、サキは日記帳を閉じて、机の引き出しにしまった。

しまうときに丁寧にたたまれた方眼紙が目に入るが、見なかったことにして机の引き出しに鍵をかける。

その時スマートフォンが『もりのくまさん』を奏でだした。

着信は・・カナだ。

通話ボタンを押して電話にでる。

「もしもし?」

「もし~~。サキ~~?」

電話だと、カナの声は通常より、さらにあまったるく聞こえる。

「そうだよ。カナが掛け間違えてなければね!」

「間違いなく~~サキだ~~今へいき~~?」

「うん。大丈夫だけど、どうしたの?」

「サキのうち泊めて~~~」

「はあ?」

カナの言葉は脳を一時ストップさせた。

「うん。だから、明日もやすみ~~あさってもやすみ~~の試験休み~~~にカナは~サキのうちに~~~お泊り~~という計画を~~実行に移すとき~~それは今?」

「・・・えっと、そんな計画あったっけ?」

とりあえず、聞いてみる。

「うん、えっと試験が終わって~~そんな話になって~。サキのうち川崎で~~ハロウィン!たのしかったねえ~~」

「え、うん。それって佐川もいたときだっけ?」

「え?そうだよ~。佐川も一緒だったよ~?」

「それは無理だよ!」

佐川を泊めるなんて、家族が許可しても、自分がいやだった。

「え~だめなの~~??」

カナの声が沈む。

「え、いやそうじゃなくて、佐川が止まるのは駄目ってことだよ」

「ああ。それは当たり前だよ~~。じゃあ、カナはおっけ~なんだね~。よかった~~」

「え?あ、うん。」

「じゃあ~今からむかうよ~~」

あれ?いつのまに、そういう話になっているのだろう?

「カナ、ちょっと待って、親に聞いてみるから。五分後くらいにかけなおすよ。」

「うん、わかった~~。じゃあまたノ~」

プッ ツー ツー・・・

・・・・・・えっと。なんでこうなったんだろう?

とりあえず、そうだ親に言わないと・・・

いまいち釈然としないままサキは台所へと向かう。


台所は帰ってきたときと同じ状態で、珍しく奇麗に片付けてあった。

つまりは・・だれもこの家に帰ってきていないのだろう。

ホワイトボードを見ると

「今日は母さんとデートをしてきます。やきもちを焼かないように。父」

「母さんと呼ばないで、今日は薫とよんでください。薫」

アホだ・・この二人はアホに違いない。

その下に

「バカップルが帰ってきたら電話ちょうだい。バカップルには、さっきコンビニに行ったよといっておいて!・・なおこのメッセージは姉ちゃんの手によって自動的に消去されます(お願い!お姉さま)。道成」

きっとうちの家族はみんなアホなのだ。

道成の伝言を消し、母にメールを打つ。

「いつも話している同級生のカナが泊まりにくるかもしれません。いいですか?」

・・送信。

した瞬間に、「もりのくまさん」が鳴り出して、思わず携帯電話を落としそうになった。

・・カナだ。

「もしもし?」

「あ~~!サキ~~?」

「カナが掛け間違えていなければね」

「サキだ~~、あのね~今駅ついたよ~~!」

「ええ??」

「川崎から~南武線で~~2駅~~」

「何で知ってんの?」

「入学式の~~席が隣になったときに~サキが言ってた~~」

「よく覚えてるね・・」

「ま~ね~~。あどれなり~んではなく~~あなどれないでしょ~~。あ!!」

「え、どうしたの?」

「まぶし~~」

「はいはい。じゃあ、とりあえず駅前にコーヒーショップがあるから、そこでまっててね!」

「わかった~~」

プッ ツー ツー・・・

電話を切るとすぐに薫からのメール。

「サキもそういう年になったのね。薫うれしい。燃え上がっちゃうのもわかるけど、避妊はわすれずにね☆・・薫❤」

・・・・・・

サキは家のドアに鍵をかけて外に出る。

外に出ると、太陽は頭と同じ位置まで下がっていて、一日の最後の光を容赦なく浴びせかけてきた。

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