第10話 だって中身が気になりすぎる
〜AM11:45 太田サキ〜
ハロウィン当日。
待ち合わせに指定した改札前の時計台は、ゴミに埋もれていた
いや・・人ごみに埋もれていた。
サキは空いている場所を求め『みどりの窓口』前で立ち止まる。
待ち合わせまでは・・後15分
「パレードが2時からなら〜〜12時に集まってお昼をたべよーー!!」
というのがカナの提案。
提案というか・・決定だった。
というわけで今は11時45・・6分になったところ。
今日の服装は黒ジーンズにスニーカー カナと一緒に買いに行った白い七部袖のコート 下に黒のロングTシャツを着ている。
時計を見る。・・まだ1分しかたっていない。
待ち合わせ場所は相変わらず人・人・人だ。
その中に、仮装している人たちもいる。
ゴスロリも含めたら結構な数で・・なんだかよくわからない仮装も多い。
あ!アレは知っている。三本毛の白いやつだ。
昔の漫画だかアニメだが南武線の中間あたりにある登戸駅から行けるミュージアムに行くと見ることができる。幼い頃のサキが好きだったと母から聞かされるが
本当かどうか今では疑問だ。だって中身が気になりすぎる。
その白いヤツも、改札を通って、人ごみを避けるように、こちらへやってくる。
そして私の隣に立ち止まり、時計台のほうへ向き直った。
雑に作ってあるのに、黒い中身の足など妙なこだわりが見える。
きっと人を待っているのだろう。あまりジロジロみてはいけない。
からまれるのは面倒だ。
白いヤツは携帯を中身が見えないように服から取り出し・・・
一瞬のことでどうやったか見逃した・・・メールを打っている。
ハロウィンじゃなかったらすごくシュールな映像だろう。
しかし、この人は電車でもこの格好だったんだろうか??
時計を見る・・・56分。
待ってる時間は長い。視線を戻すと、白いやつは真横に来ていた。
なんだか、こっちを見ている気がする。
そう思ったとき、白いやつの口よりも上、目の下あたりから声が聞こえた。
「あの、お尋ねしたいのですが、ハロウィンの当日なのに、電車の中でもその格好だったのですか?」
????・・?マークが頭の中を飛び交い、何も言葉に出来ない。
・・・でも、この声って・・と思っていると、電子音が聞こえフラッシュ。
白いやつの後ろからカナが表れた。
黒のフワフワのミニスカート 体にぴったりとあった黒いロングコート。
縞々のニーソックスにクシャクシャのブーツ。
頭にこうもりの羽の付いたカチューシャをつけている。
「サキの~~変顔ゲット~~~」
呆然としていると、白いやつは足元から服をめくり上げ、きれいにたたんで
流れるような動作で持っていた鞄に入れる。
よくコンパクトにおさまるものだと感心してしまう。
最後に白かったやつは服装をチェックした後に・・振り向き。
「やあ!委員長!いい表情をありがとう!3点あげよう!」
と佐川の顔でいった。
喜びながらハイタッチをする二人に向かって
「じゃあ・・わたし・・かえるね・・」
と言い、サキは改札へと向かって歩き出した。
「あれはエアーMEN!おお!パイレーツオブメキシカンの・・・」
「あれは~~ネコ娘~でよこにいるのが~カッパ!」
「うんうん!しかもアレは河童と雨合羽をかけているねえ・・秀逸だ!」
サキは早々に人ごみによってしまい、はしゃぐ二人を安全地帯?から眺める。
二人の先には、ロープが張られていて、ハロウィン用に改造・塗装されたイベントカーを先頭に、様々な仮装をした人々が練り歩いていた。
リアルな特殊メイクのゾンビたち 動く鎧 やたら露出の激しい化け猫や魔女。
日本の妖怪や幽霊も混じっている。
それだけならまだしも、ゲームやアニメのキャラクター(らしい・・佐川談)
コスプレや割烹着を着た『日本のおかん』までが行列に参加している。
小さいころ好きだった美少女戦隊アニメのヒロインが、私の前を通過していく。
それにアレは某薬局のマスコットではないだろうか?
あまりの無秩序さに気持ちが悪くなってしまう。
「日本人って・・・どうして・・こう・・」
「すばらしいんだろうね~」
私の気持ちとは正反対の言葉が、隣から聞こえる。
いつの間にか佐川が横に出現していた。
「順応力というか・・発展させる力というか・・お祭り好きというか」
「カナはどうしたのよ?」
と聞くと佐川は親指で後ろをさした。
見ると、カナは、外国人の子供が仮装した妖精の前で、携帯電話を構えている。
「うわっ!めちゃくちゃかわいい!!」
ついつい私もテンションがあがる。
「うんうんつれて帰りたくなっちゃうよね~」
変態は無視しよう。
「私の子供のころにそっくりだわ~」
思わず言った後、しまったと思った。
これは、かわいい子どもを見たときの、母の口癖だ。
・・知らずに影響を受けている。
「いや~もうちょい骨っぽいって言うかやせてたよ」
佐川は平然と言う。
確かにそうだった。あの頃の私は、細いというよりも、ガリガリだった。
「って、何で知ってんの?!」
「え?本当にそうだったの?委員長」
佐川の表情からは何も読み取れない。
こいつとまともに話したのが間違いだった。
それに、委員長と呼ばれたのが、いつもよりも嫌だった。
「もう、いいよ。」
逃げるように佐川にそういうと、カナと合流して声をかける。
「カナ、写真とろうか?」
「ありがと~~。」
カナは喜んで妖精の肩をだいてポーズをとった。
右斜め45度、カナいわく、一番私がかわいく見える角度らしい。
一緒にとった写真はいつもこの顔をしているので、写真を撮るほうもなれた。
とりながらチラリと佐川を盗み見る。
学校にいるときと同じような会話だったけど、同じじゃないような気がして
なんだか恥ずかしくなった。
でもなんだか・・・ひさしぶりに楽しい一日だった。
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