第384話

サイから語られた手口。


子供の命を囮にブリットの暗殺を企てた事実に、ミオンは何も言うことが出来なかった。


「アルテリオンの時と似てる……」


子供を使ったテロ行為。


あの時は保護された子供の1人が鞄から何かを取り出してボタンを押したら爆発したって聞いたけど、今回は子供達の服が発光して爆発。


手口は似ているけど……


『だよね~。確かにやり方は似てるんだよなぁ~!』


突如頭に響く声。


ミオン様はあちゃ~という感じで頭を押さえている。


『受け止めてね♪』


耳元でそう囁かれた俺は咄嗟に城内の天井を見上げると、頭上にて光る物体が現れてそのまま俺のいる場所へと落下を始めた。


「ちょっ!?」


一瞬だけ避けてやろうかとも考えたが、皆が見ている前でその行動はアウトかと思い直す。


そのまま落ちてくるソレをお姫様抱っこの形で受け止めようとするが、


『おもたっ!!』



ゴーレムで出来た身体は中々に重量級の為、お姫様抱っこをした途端バランスを崩してしまいそのまま本当に落としそうになるが、


『んなろぉぉぉ!』


ラグナは咄嗟に身体強化魔法を発動させると何とかギリギリの所で耐える事が出来た。


「さすが私のダーリン♪」


何とか受け止める事が出来た第一声がこれである。


ラグナはお姫様抱っこをしているソレをそのまま落下させる。


ズドン!! 


高さ1メートルもしない所から落としたというのにこの音。


「ぐえっ!」


落下地点の床が若干陥没してしまっている。


地面へと落とされたソレは、何事も無かったかのようにムクッと立ち上がるとラグナにむけてパァッと手を広げて抱擁しようとするのだが……


「もう……そんな事しませんって」


「ラグナ君の恥ずかしがり屋さんめ!ハグしたって良いじゃない!それよりも乙女を地面に落とすって酷くない!?ねぇミオンちゃんもそう思うでしょ?」


「えっと……あはは。どうでしょう?」


突然ラグナの上から降ってきたのがそもそもいけないのでは?と内心思いながらも、ミオンはとりあえず愛想笑いを浮かべる。


「もう!2人して酷いんだから!はっ……もしかして噂の反抗期ってやつの時期なのかい!?」


「違いますよ!反抗期じゃありませんから!それよりも良いんですか?こっちに姿を現しても。サイさんなんて驚いて固まってますよ?」


「いいの、いいの~。ブリット君にはここにくる前に挨拶してきたから。それに正式に後継者となった君にも挨拶しようと思っていたからね~」


「あ、あなた様はもしかして……いや……しかし……生きているはずが……」


サイさんはどうやらリオさんの正体に気が付きつつあるものの、エルフでもないのに生きているはずがないと混乱している。


「ブリット君も律儀だね~。本当に私の存在を伏せたままなんだから。歴代のエチゴヤの当主でも教えることなく完全に伏せたまま隠し通す事が出来た人物なんてほとんどいないのにね~。流石はナナシくんに一番近い当主と呼ばれるだけはあるよ。ってな訳でサイくんだったかな?そろそろ私が誰だか気が付いたかい?」


「ま、まさか……本当に……賢者リオ様だとでも……?」


サイがそう答えるとリオはニコッと笑い何故かクルッと一回転回ると


「ある時は謎の聖女。ある時はラグナ君の恋人。ある時はこの国を裏から操る存在。その正体は……泣く子も黙る美少女、賢者リオとは私のことだぁぁぁぁ」


リオがそう叫ぶとリオの周囲がまるでライトアップでもしているかの様にピカピカと光り出した。


「ラグナ君……君に出会ってからさ、僕の中にある常識というものがどんどん壊れていってる気がするんだ」


「サイさん……。それに関しては僕は被害者です……」


「被害者って何さ!ウチにあんな事しておいて!今更無かったことなんて許さないんだからね!絶対に責任取ってもらうんだから!……ミオンちゃんも含めて」


「ええっ!?私もですか!?」


突然名前を出されて慌てるミオンを余所にリオは更に爆弾を投下する。



「だって私の裸も見られたし~、ミオンちゃんの下着姿だってみたじゃない!」


サイはリオからの爆弾を本気にしてラグナの肩をガシッと掴むと、


「ラグナ君!!うちのミレーヌやフィリスさんじゃ不満だって言うのかい!?確かに英雄色を好むという名言が初代勇者様より伝わってはいるけどね!でもまだラグナ君には早いと思うんだ!」


「ちょ、ちょっとサイさん!?リオさんやミオンさんとはそういう関係じゃないですからね!?」


ラグナは慌てて否定するが……


「でもウチの裸は見たじゃない!」


「……確かに下着姿は私も見られましたけど」


「……ラグナ君?」


重度のシスコンが発動してしまったサイは目を見開いてラグナをジッと見つめる。


「た、確かに見ました。見ましたけども!リオさんは自分から見せてきたようなものだし、ミオンさんの件についてはリオさんのイタズラじゃないですか!」


「そうだっけ?ミオンちゃん?」


「えぇ。まぁ……確かにあれはリオ様が……」


と、ミオンが肯定するのでサイは納得したのか掴んでいたラグナの肩から手を離したのだった。


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初心者キャンパーの異世界転生 スキル[キャンプ]でなんとか生きていきます。 奈輝 @naki-nana

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