第342話

「どうするか……」


目の前にいるゴーレムよりも小さかったゴーレムにでさえ有効な攻撃手段が見つからなかった。


爆炎魔法もダメ。


ガストーチソードもダメ。


仮に着火材ジェルを大量に振り掛けて燃やしても、相手は石で出来た身体を持つ存在なので、ダメージすら与えることが出来ないだろう。


ゴーレムのやや大振りのパンチを避けながらラグナは必死に考える。


そして一つのアイデアが閃いた。


「上手く行くかは分からんけど、やってみなきゃ分からないよな!」


ラグナは一気に後ろへとジャンプをし、ゴーレムから距離をとると魔法を詠唱する。


「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エクスプロージョン!」


ゴーレムはラグナを殴りつけようと距離を詰めるために動き始めていた。


ラグナはその足下目掛けて魔法を発射する。


ドゴォォン!と爆炎と衝撃が起こり、地面が大きくめくれ上がる。



ゴーレムは大きくバランスを崩し転倒した。


転倒したゴーレム目掛けてラグナはガストーチソードを発動させると、先ほどドワーフがゴーレムを倒した時の様に関節目掛けて炎の剣を振り下ろすのだった。


ガッギィィィン!!


ラグナは思いっ切り剣を振り下ろしたのだが……


ゴーレムの関節を傷付ける事すら出来なかった。


「まじかよ!?」


ラグナは慌てて剣を引っ込め、立ち上がる為に動き始めたゴーレムから距離を取る。


「剣じゃどう頑張ってもダメって事か!?ドワーフ達の様に打撃系の……」


ゴーレムから距離を取りながら必死に考えていると、ふと頭に浮かんだシルエットが。


すると、


『ペグを召喚しますか?』


という声が聞こえたラグナは、


「ペグ召喚!!」


と叫びながら目の前に現れた15センチほどのペグを掴む。


更に頭の中で祈るように想像すると、


『ペグハンマーを召喚しますか?』


との声にすぐに答える。


「ペグハンマー召喚!!」


すると目の前に現れたペグハンマーもラグナは手に取る。


ペグとペグハンマーをすぐに収納に仕舞うと、ゴーレムから距離を取りながら再びあの魔法を詠唱する。


「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エクスプロージョン!」


先ほどと同じ様に足下に向けて発射された魔法は地面を激しく抉る。


ゴーレムは急な動作が苦手なのか、同じ様に足を引っかけてしまい激しく顔面から転倒するのだった。


その転倒したゴーレムに急接近したラグナは先ほど召喚した2つを手に取ると、肩に向かってペグを打ちつける。


カーン!!


甲高い音が響く。


ラグナの目の前にはゴーレムの肩には突き刺さったが、一発でひん曲がってしまったペグが有ったのだった。


「このペグじゃ強度が足りない!!」


ラグナが召喚したペグは15センチほどのテントによく付属しているようなアルミ製と思われるピンペグだったのだが……


テント付属のピンペグはすぐに曲がってしまう物が多く、実際にラグナも前世で何度もひん曲げてしまった事がある。


ラグナは今度ははっきりと、ある素材で出来たペグを思い浮かべながら召喚する。


「ペグ召喚!!」


ラグナが新たなペグを召喚したタイミングでゴーレムは立ち上がろうと腕を動かしたのだが、ペグが突き刺さっている方の腕の動きが鈍っているように見えた。


ラグナは新たに召喚したペグを手に取るとゴーレムの肩目掛けて思いっ切りペグを打ちつける。


カーン!! 先程とは違う高音の金属音が響いた。


「おぉ!!」


しかしラグナは先ほどとは違い手応えを感じた。


ゴーレムの肩に軽々と突き刺さるチタン製のペグ。


立ち上がろうとしたゴーレムだったが、片腕の力が更に入らなくなったのか再び地面へと倒れ込む。


ラグナは新たに突き刺したペグ目掛けてペグハンマーを振り下ろしていく。


チタンで出来たペグはゴーレムの硬さに負けること無く、どんどん突き刺さっていく。



更に最初に召喚したペグは15センチほどだったが、今回召喚したペグは40センチ。


40センチものペグはあっと言う間にゴーレムの肩に深く突き刺さったのだった。


完全に片側の腕が動かなくなったゴーレムはバタバタと暴れて、自らの身体の上に乗っているラグナを振り落とすと再び立ち上がろうともがき始めたのだが……


「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エクスプロージョン!」


ラグナは無慈悲にも、立ち上がろうと必死に動かしている片腕目掛けて魔法を発動。


ゴーレムは再びバランスを崩して転倒してしまうのだった。


後は先ほどと同じ事の繰り返し。


反対側の肩にもチタンペグを打ち込むとゴーレムの両腕は全く動かなくなってしまった。


立ち上がろうにも両腕が動かなくなってしまったゴーレム。


重量級のボディを持つゴーレムにとっては致命的だった。


寝返りを打つ事すら出来ない。


ただ出来る事は足と頭をバタバタとさせる事だけ。


せめて仰向けで倒れていればどうにかなった可能性も0では無かったが……


うつ伏せで倒れてしまってはどうする事も出来なかった。


ラグナはドワーフ達を真似て関節にチタンペグを打ち込み、動きを封じていく。


両肩、足の付け根にチタンペグを打ち込まれたゴーレムは抵抗する力など残っていなかった。


頭をジタバタと動かして最後の抵抗をするゴーレムの身体の上に乗ったまま悩むラグナ。


「本当ならルヴァンさん達みたいに魔石を回収した方がいいんだろうけど……」


ラグナにはドワーフ達の様にゴーレムの身体を削る道具など持っていない。


「仕方ないか……」


ラグナがチタンペグを背中の中心に突き立てて打ち込もうとしたその時、



「ちょ!!ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


との声が聞こえたのでその方向を振り向くと必死の形相で走ってくるルヴァンさんとドワーフ達の姿が見えた。


「そんな物で魔石を壊すなんて勿体ない!俺達に回収させてくれ!もちろん取り出した魔石はラグナ様に手渡すから!頼む!」


そう言ってラグナの元に駆け寄りながら手を伸ばすルヴァン。


「そうですか……それではお願いします」


流石にあんなにも必死な表情をされてしまっては断ることなんて出来ない。


後のことはルヴァンに任せてラグナはガッデスへと無事に入国するのだった。

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