第337話

ラグナは腕に巻き付いてきた根の正体が精霊樹ではないと判ると、その根を引きちぎるべく引っ張る。


「んぎぎぎ……!!」


しかし木の幹の不気味な顔は不快な声をあげながら、さらに根を伸ばしラグナへと巻き付こうとする。


「くぅっ!これなら!!」


ラグナは剣の柄を取り出し急いでガストーチソードを発動。


新たに伸びてきた根に向かって切りかかる。


 ジュゥゥゥ!!


「キシャァァァァ!!」


迫ってきていた根を轟々と燃え盛るガストーチソードによって次々と焼き切っていく。



しばらく根を切り刻んでいると、腕に巻き付いていた根の拘束が緩くなってきていたコトに気がつく。


「今だ!!」


腕に巻き付いていた根に対してガストーチソードを振り下ろして焼き切ることに成功した。


「木に擬態した魔物がいたなんて聞いたことも無いぞ!!」


「シャーッシャシャシャ」


ラグナがガストーチソードを構えながらもそう愚痴ると、魔物?らしき木の顔がニヤリとした表情でまるで笑っているように見えた。


「キッシャァァァァァァァァァァ!!」


ラグナがガストーチソードを構え、切り掛かろうとした所で突然叫んだ魔物。


あまりの声量に一瞬戸惑いかけたがそのままガストーチソードを振りかざそうとした瞬間、


シュルシュルシュル!!


「なっ!?どこから!!」


ガストーチソードを振りかざそうとした腕だけでなく、胴や足にも巻き付く木の根。


後ろを振り向くとニチャリとした笑みを浮かべる木々の魔物が複数体ラグナを嘲笑うかの如く見つめていた。


「く、くそっ!!はなせ……!!」


ガストーチソードで焼き切ろうとしても両腕が拘束されてしまい、動かすことが出来ない。


「キシャァ!!キッシャア!」


最初に遭遇した顔のある木がニタリとした顔でラグナを挑発するように煽ってくる。


「くっ……この!!」


なんとかして拘束から逃れようとしている間も他の木の根や蔓によって四肢へと絡みつかれ、どんどん身動きが取れなくなっていく。


徐々に近寄ってくる木の魔物達。


ゴゴゴゴ


絶賛ピンチの中、突如激しい地響きが鳴り響き周囲の木達がザワザワと動き出す。


「キャシャ?キャシャシャ?」


「キャシァ?」


木々達が地面を見ながらソワソワしているが、今回は拘束を緩めたりはしてくれなかった。


限界まで身体強化魔法を発動させようとしたその時、


ズガァァァァン!!


地割れと共に巨大な木の根が現れたのだった。


その巨大な木の根は地面から現れると同時にラグナに迫り来る木の魔物に向かって根を突き刺す。


「キャシャ?」


突き刺された木の魔物は急激に水分が抜けたように萎んでいき、粉々に割れてしまった。


「キシャシャシャ!!」


仲間が粉々に割れてしまった光景を見て警戒の声をあげる木の魔物達。


そんな木の魔物達に向かって地面から現れた木の根が先ほどと同じ様にラグナの手足を拘束していた木に向かって突き刺し粉々に粉砕する。


「キッシャァァァァー!」


「嘘だろぉぉぉぉーー!!」


自分達の身の危険を感じた木の魔物達は木の根で拘束していたラグナを乱暴に遠くへと放り投げると、自分達を突き刺そうとする根に向かって自身の根を使って対抗するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る