第332話
「だ、だめ!!」
ルテリオはラグナの雰囲気が変わった事を感じとり止めようとしたが、疲労困憊の身体は言う事を聞かずに地面に倒れてしまった。
「アナタに背負わせたくはないの!!」
ルテリオはそんな悲痛な叫びをあげるが、ラグナは覚悟を決めて魔力を練り上げると魔法を詠唱する。
「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エグスプロージョン!」
肉塊の化け物へと成り下がってしまったエルフ達に向けてラグナは爆炎魔法を詠唱し、小さくごめんと呟きながら発射したのだった。
炎の塊が肉塊の目の前に浮かび上がり、一気に圧縮される。
パクッ
「えっ!?」
肉塊の化け物の身体が裂けてまるで口の様に広がると、爆発寸前の爆炎魔法はその中に取り込まれてしまう。
そして次の瞬間、
ドカーーン!!
体内で激しく大爆発を起こしたのだが……
肉塊に浮かび上がる全ての顔がラグナの方へ振り向くと大きく口を開けた。
すると体内で爆発したエネルギーの塊である熱風と爆風が浮かび上がる全ての口から抜け出てラグナへと襲いかかる。
ラグナの後ろには倒れ込んでいるルテリオが。
ラグナは魔力を込めて魔力障壁を発動させるが……
「女神様に仇なす存在に神罰を!」
という声と共にさらに激しい爆風と熱風が襲ってくる。
「ぐっ!!こいつら……」
ラグナは歯を食い縛りながら、魔力障壁を強化させていく。
「死ね人間!!!」
更に威力があがり、魔力障壁がミシミシと音を立てて悲鳴をあげる。
更に魔力を流すが魔力障壁はミシミシと音を立てて今にも割れてしまいそうだった。
そんな時、
『ウィンドスクリーンを召喚しますか?』
という声が頭に響く。
このタイミングでのこの声にラグナは一か八か賭ける事にした。
「ウィンドスクリーン召喚!!」
ラグナがそう唱えた瞬間、パリンという音を立てて魔力障壁が破壊された。
その瞬間、ラグナを囲むように召喚されたウィンドスクリーンに爆風と熱風が襲いかかる。
しかし、ラグナの周りに展開されたウィンドスクリーンにぶつかった爆風と熱風はラグナには届くことなく拡散されていき、やがて消滅した。
「これは……」
ラグナとルテリオを守ってくれたウィンドスクリーンは役目を果たすとすぅっと消えてしまった。
「許さんぞ人間!」
「神罰を!」
「神罰を!」
「神罰を!」
「神罰を!」
「神罰を!」
再び肉の剣がラグナに襲いかかる。
ラグナは必死に回避しながら無詠唱でファイヤーボールをまるでマシンガンの様に連射していく。
しかし、ファイヤーボールが着弾する直前に浮かび上がる数多くの顔の口が開きファイヤーボールをパクパクと食べてしまった。
「な、なに!?」
次々と消えていくファイヤーボール。
「人間!無駄な抵抗はヤメろ!」
「「女神様に仇なす存在に神罰を!」」
「「女神様に仇なす存在に神罰を!」」
「こうなったら!!」
ラグナは収納魔法から柄だけになった剣を取り出すと、
「ガストーチソード!!」
ゴウゴウと激しい音を立てながら炎の剣身が形成されていく。
そして迫り来る肉の剣と打ち合うと
ジュッ
という音と共に肉が焼ける嫌な臭いが広がりながら肉の剣を切り落としていく。
「「女神様に仇なす存在に神罰を!」」
「「女神様に仇なす存在に神罰を!」」
「くそっ!」
肉の剣を次々と切り落としていくが、次から次に新しい肉の剣が現れてラグナに襲いかかり、遂には押し切られそうになる。
勝ちを確信した肉塊に浮かぶ顔達はニヤリと笑顔を浮かべる。
しかしラグナはまだ諦めない。
「LEDライト!!」
肉塊に浮かぶ顔達に向けて激しい光が襲いかかる。
「「「ギャァァァーー!!」」」
眩しさに目を瞑る肉塊の顔達。
「着火材ジェル!!」
肉の剣をブンブンと振り回しながら暴れる肉塊に向けてジェル状の液体をぶっかける。
そしてガストーチソードを地面へと突き刺す。
すると炎が地面に垂れたジェルにそって走っていく。
「「燃えるぅぅぅ!!!」」
「「助けてくれーーー!!!」」
燃え盛る炎から逃れようとジタバタと悶える肉塊。
更にブンブンと暴れ回るが、一向に火が消える様子は無い。
周囲には更に肉が焼けていく臭いが広がる。
そしてジタバタとしていた肉塊の動きが悪くなり
「ゆ……許さんぞ、人間……」
「「女神様に……仇な……す……」」
そう言い残して動かなくなったのだった。
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