第308話
「……大丈夫?」
ルテリオが心配そうにラグナに声をかける。
「えぇ……なんとか。ちょっと無理矢理飲まされたので気持ち悪いですけど……」
「本当にごめんなさいね。」
ルテリオは申し訳なさそうにラグナに謝罪した後、精霊樹の根をギュッと掴む。
「駄目じゃないですか!!創造神様にあれだけ注意するようにって言われてましたよね!!精霊樹の雫は必ず用法用量を守って授けることって!!確かに……確かにこの方の魔力は甘くて濃厚で、とっても美味しいですよ?でもですね、やって良いことと悪いことがあるんですよ?どうするつもりだったんですか?あんなにも雫を飲ませて!!」
ルテリオは更にギリギリと力を込めて精霊樹の根を握りしめビリビリと電気を流しながら、精霊樹に説教をする。
精霊樹の根が痛そうにプルプルと震えながらルテリオの手から逃げようとするが……
「いい加減にしなさい!!本当にあんなにも大量に無理矢理雫を飲ませて!!どう説明したらいいんですか!!」
「えっ…!?」
ルテリオは激怒しながら精霊樹に説教をしているのだが……
先ほどから気になる内容で不安に陥るラグナ。
『確か、精霊樹にそれ以上飲ませたら人では無くなるって……あれ以上飲まされていたらどうなっていたんだ……?』
人では無くなると言われて思い浮かぶのが、バケモノへ豹変してしまった2人の兄弟の姿。
『俺もあんな風なバケモノへとなってしまうところだったのだろうか……』
「説明するこっちの立場にもなって下さい!!万が一あの方々が来られた場合は一切フォローしませんからね!!」
ルテリオから突き放された精霊樹はまるで縋るようにルテリオに絡みつこうとするが……
「私はもう知りません!!今から彼に説明しなければいけないので、触らないで下さい!!」
と言いながらルテリオに縋ろうとしていた精霊樹の根に強めにバチバチと電力を流して退けていた。
「あの……僕はどうにかなっちゃうのでしょうか……?」
流石にバケモノになってしまうのは洒落にならない。
「……今すぐどうこうなるということはありません。」
「……本当に?」
「あれ以上飲まされていたら危なかったと思いますが……」
今すぐどうこうなることは無いと言われてホッとするラグナだったが……
ルテリオが言った文章に違和感を感じる。
「……今すぐ?それじゃあ……これから何かが……?」
徐々にバケモノへと堕ちていく可能性も……?
「これからというか何というか……将来的に……」
ルテリオの表情から明らかに物凄く言いにくそうな感じがする。
「将来的に……バケモノへ?」
「バケモノ?いえ、そんなモノには……いや……ある意味そう言われる可能性も……」
ルテリオは物凄く困った顔をして悩んでいる。
「ぼ、僕はどうなってしまうんですか?」
バケモノのような何かへと変化してしまう?
そんな……
せっかく異世界に転生出来たのに……
キャンプを楽しむどころか、両親、故郷、仲間、全てを奪われ国から逃げ出し……
いや、違うか……
学園の仲間も、村の子供達からも逃げ出した結果がこれか……
もっと早く動いていれば村のみんなも両親も助けられたかもしれない。
その罰が落ちたって訳か……
ラグナは目に涙を溜めながら覚悟を決める。
「真実を教えて下さい……僕はどうなるんですか……?」
「その……寿命がですね……」
ルテリオは覚悟を決めじっと見つめてくるラグナから目を逸らす。
『寿命か……ケガをあっという間に治せるような効果の雫をあれだけ飲んじゃったんだ……そりゃ飲み過ぎたらそうなるよね……』
意を決してラグナはルテリオに問うことにした。
「わかるなら教えて下さい……僕はあとどれくらい生きる事が出来るんですか?」
俺に残された時を知りたい。
残り時間によっては……
俺を苦しめたあの国と神殿へと……
ラグナの覚悟の籠もった目を見たルテリオは震える声で真実を伝えることにした。
「……あなたの寿命は……」
「僕の寿命は……」
「あと……」
ゴクリと思わず唾を飲み込む。
『頼むから、あの国へと行く時間くらいは!!』
「……あなたの寿命は少なくとも2倍以上増えてしまいました!!本当に精霊樹がごめんなさい!!」
2倍以上増えてしまいました!!
2倍以上増えてしまいました!!
頭の中でリピート再生されていく。
そして思わず出た言葉が
「ほぇ……??」
予想していた方とは逆だったので更に呆然としてしまうラグナなのだった。
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