第309話

みなさん、こんにちは。


急に寿命が2倍以上に増えたと言われ唖然としてしまったラグナです。



急に寿命が伸びたと言われても逆に困ってしまう。


てっきり過剰摂取により寿命が減ってしまったんじゃないかと一瞬思ってしまった。


「駄目じゃないですか!確かに人間の寿命は短いかもしれませんよ?だからって本人の許可も無しに勝手に寿命を改変して!!寿命が長くなればその分魔力を貰える期間が増えるとか、そんな事許される訳無いじゃないですか!!」


ルテリオ様が精霊樹にそう説教をしていると……


ちりーん


ちりーん


鈴の音のような音と共に、辺りに霧が立ち込めて来た。


ガタガタ、ガタガタ


と激しく根が震え始めた。


部屋の中もガタガタと揺れている。


そんな状況下の中、ルテリオ様もガタガタと震えながら突如として地面に頭を擦り付けて土下座ポーズへ。


徐々にどことなく感じたことのある雰囲気が広がっていく事にラグナは戸惑っていた。


そして


むぎゅ


後ろから気配もなく突然抱きしめられた。


「……お久しぶりです。エミア様」


急にこんな事をしてくるのは彼女しかいないだろう。


「久しぶりだねぇ。もっと驚いてくれるかと思ったんだけどさぁ。刺激が足りなかったかねぇ?」


なんて恐ろしい事を平然と言ってくる彼女に俺は思わず顔が引きつってしまう。


「い、いえ、も、もう充分すぎるほどです……本当に……」


柔らかい何かがずっと背中に当たっている上にエミア様が話す度に吐息が耳元に当たっており、何とも言い難い感じになっている。


「こ、こ、この、この度は本当に、本当に申し訳こざいませんでした!!」


ガンガンと地面に頭を打ち付けながら俺の後ろにいるエミア様へとルテリオ様は激しく謝罪していた。


「本当に困ったものだよぉ。キチンとこの子の面倒と躾をするのが君の役目だろぉ?それなのにさぁ……私だって暇じゃないんだよぉ?君だってこっちがどうなっているのか、それくらい話には聞いているだろぉ?」


「は、はい……本当にご迷惑とお手数をお掛けしてしまい、申し訳ありません……」


顔を真っ青にしながら震えるルテリオ様。


『この前からずっと気になってるけど……天界に何かあったのかな……?』


以前現れた時もそう。


マリオン様もそう。


みんな忙しそうにしている。


「知りたいのかい?」


「ひぃっ!?」


エミア様はそう言うとペロッと耳を舐めてきた。


『そうだった。考えが筒抜けなんだ……』


「別に教えてあげてもいいけどねぇ……君になら」


「えっ!?」 


……教えてくれるのか?


「いいよぉ~。その代わり私のモノになって貰うけどねぇ。どんな子が産まれてくるのか考えるだけでもゾクゾクするよぉ」


ニヤニヤと笑いながら抱きしめる力を強めてくるエミア様。


「あの……気にはなるけど、我慢します……」


一瞬魅力的な提案と思ってしまうけど、流石に……


「まぁ、まだチャンスはあるからねぇ。今回は諦めてあげるよぉ。しかも今回の件で人の理からは外れちゃったからねぇ。時間はまだまだタップリとあるからさぁ」


ゆっくりと俺を解放してくれたエミア様の方を恐る恐る見ると……



「!!」


思わずドキドキしてしまうほどの色気を伴った笑顔で俺のことを見ていた。


「で、だ。今回の件はどうしょうかねぇ……私としては彼の寿命が伸びたことは喜ぶべき事なんだけどさぁ……秩序は乱したらいけないと思うんだぁ?」 


エミア様はそう言うと精霊樹の根をギュッと掴み、ギシギシと握り潰していく。


「ねぇ、秩序を破ったらどうなるか……まさか忘れてるのかぃ?」


ガタガタ


激しく震える音が響く。


「うるさいねぇ……」


エミア様が足を軽くあげ、


ドン


と地面へと踏みつける。


……


ガタガタと震えていた部屋の揺れがピタッと止まる。


「本当ならお仕置きなんだけどねぇ?」


エミア様が掴んでいる根がピンと真っ直ぐになる。


「今すぐお仕置きしちゃうと、エルフが狩られてしまうからねぇ……本当に面倒だよぉ」


エミア様がトントンとリズムを刻むようにつま先を地面に打ちつける度に真っ直ぐにピンとなっている精霊樹の根がピクッ、ピクッと反応している。


「さて、本当にどうしたものかねぇ……あぁ、本当に面倒な事をしてくれたものだよぉ……」


リズミカルに打ちつけているつま先に徐々に力が入っているのかもしれない。


地面に打ちつける音が徐々に大きくなってきている。


「チッ、こんな時に。何の用だい?創造神様」


「えっ?創造神様?」


エミア様が上を向きながら話し始めたので同じ様に上を向いたが……


俺の視界ではただの真っ白な霧しか見えなかった。


「はぁ、そう言う事。わかった、わかった。今回はラグナ君という特異な存在に免じてそういう事にしておくよぉ。全く。人の世界ではそれをパワハラと言うらしいよぉ?秩序の女神としてはあまり無茶を言って欲しくないんだがねぇ……わかった、わかった。そういう事にしておくさぁ。忙しいんだろぉ~?さっさと仕事にもどるんだねぇ。あぁ、わかってるよぉ?それじゃぁねぇ。」


更にトントンとしているつま先に力が入っている気がするけど、無事?にエミア様と創造神様?の会話が終了したのだった。

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