第305話

『うわぁ……』


衝撃的な映像を見てしまった気がする。


仲間の事を思い出したと思ったら首にガブリって……


しかも……


『うっ……』


元は兵士だったバケモノが今度はむしゃむしゃと仲間だった兵士を食べ始めた。


再び吐き気を催す光景が広がる。


「アひゃヒャひゃヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!うひぃヒィウひぃひぃ!!」


バケモノは仲間だった兵士をムシャムシャと食べている元兵士の様子を見ながら、狂ったように笑っていた。


『くっ……』


俺は思わず目を背けてしまう。


こんな光景、とてもじゃないけど見てられない。


「レッド……すまん!!」


ラジャーと呼ばれていた兵士がレッドだったバケモノに襲われ目の前で食べられる様子を呆然としながら見ていた兵士達。


そして……ようやく覚悟が決まったのか、剣を手に立ち上がると

ラジャーの遺体を貪る元仲間に対して一斉に剣を突き刺す。


「グ……ラァ……?」


兵士だったバケモノはいたる所に剣を突き刺され、ゆっくりと地面へと倒れる。


そして……


「はや……く……は……ナレ……ロ……」


とメッセージを残すと息を引き取ったのだった。


兵士達は慌ててレッドの遺体から離れようとしたその時。


レッドの遺体が膨大な魔力と共に急激に膨らむと、そのまま物凄い勢いで爆発したのだった。


「ぐっ……!!」


ラグナはレッドと呼ばれた元兵士の遺体が膨大な魔力と共に膨らんだのを目にした瞬間にカモフラージュローブを収納すると、慌てて魔力障壁を展開。


展開したと同時に強烈な爆風が辺り一帯を吹き飛ばすのだった。


「はぁはぁはぁ……」


ラグナは何とか耐えたものの……


爆風により辺り一面の木は薙ぎ倒され、爆心地だった場所の地面は深くえぐれていた。


そして、ミラージュの兵士達の姿はどこにもなかった。



「アヒャひゃヒャひゃ!!ミーんな纏メて爆発ダぁぁ!!」


バケモノはミラージュの兵士達が爆発によって全て消え去った事に満足したのか、手を叩きながら喜んでいたのだが……


「アひャひャあ?」


突然近くに感じ取った魔力に驚き、顔をグルンと魔力を感じた方向に180度回す。


「おマえ、誰ダ?イつカラ其処に居タァぁァァ!!」


楽しみを邪魔された事に怒るバケモノ。


自身の魔力を一気に高めると地面を蹴り上げ、その方向へと飛んで行く。


「誰ダぁァァ!!」


バケモノはそう叫びながらラグナに向かって手を振りかざす。


「くっ!!」


対するラグナは魔力障壁でバケモノからの攻撃を防御する。


ドゴォン!!


激しい音を立てながらぶつかり合う2つの強大な力。


「……!!お、オ前はぁァァ!!」


バケモノは俺の顔を見て一瞬動揺したが、叫びながら何度も魔力障壁に対して腕を振り落として来た。


「おマえのせいデぇェぇ!!許さン!!絶対に許サんぞぉォ!!」


怒りに任せて攻撃を繰り返すバケモノ。


「お前ガァァ!!お前がァァ!!お前がァァァ!!お前とセシルのせいデェぇ!!兄貴と俺はァァ!!」


ドゴォーンと激しい音が鳴り響く。


「ぐぅぅぅっっ!!人のせいにしてんじゃねぇよぉぉぉーー!!」


魔力障壁に全力で魔力を流し込んでバケモノを弾き返す。


「なニぃ!?」


予想外の反撃に後方へと吹き飛ぶバケモノ。


「元はといえば自分達がいけないんだろ!!俺とセシルのせいにしてんじゃねーよ!!」


「ウるサい、うるサイ、ウルさい、僕達は悪く無イ!!出来損ナいのセシルがイケないんダぁぁァァ!!」


バケモノはそう叫ぶと一気に体内の魔力を高める。


そして、ヌチャっという生々しい音と共に……


「背中から手が生えた!?」


背中から更に2本の手が生えたのだった。


そして、


「お前ナンて、燃エてしまえ!!」


4本の手から恐るべき速度で、ファイヤーボールが連射される。


「くっ!!」


ラグナは何とかして避けようとするものの、4本の腕から放たれる火の玉を避ける事は不可能と諦めたラグナは再び魔力障壁に魔力を流しひたすら耐えていく。


「燃えろ!燃エろ!!燃えテしマえ!!」


「くっ……そ……」


必死に耐え続けるも魔力障壁越しとはいえ、徐々に周囲の温度が上がっていく。


次第に周囲の地面がガラス化する程の熱を帯びてくる。


「死ね!!死ネ!!死ねぇェぇ!!」



徐々に魔法を連打しながらラグナへと近づいてくるバケモノ。


「はぁはぁはぁ……」


ラグナはバケモノの攻撃に対して更に魔力障壁に流す魔力量を増やして対応する。


「ははハははは!ソれジャもう防げナイだロ!!諦めたラどうダぁぁ!!」


「ぐっ……」


魔力障壁の限界の前に暑さの限界を迎えようとしている。


このままでは障壁が破られてしまう。


『一か八かやるしか!?』


「これで終ワりダぁぁぁ!!」


魔法の連打が一瞬止まり、巨大なファイヤーボールを発動させようとしたバケモノの目の前に……


ラグナはウォーターウォールを発動。


そして瞬時に屈むと全身を包み込む様に魔力障壁を展開。


「あヒャ??」


突然目の前に現れた水の壁に驚くのも束の間。


高温に熱せられた地面の上に発動したウォーターウォールが……


一瞬で水蒸気へと変化し、物凄い衝撃と音を伴って2人に襲いかかるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る