第303話
「まじで焦ったぁぁぁ!!」
まさか爆発するなんて思ってもいなかった。
小さい頃にお皿を作る授業があって、割れる可能性もあるとは聞いた事があったけど……
爆発するなんて説明は無かったし……
「あっ……」
その授業で確か言ってた事が……
「乾燥……させてねぇな……」
それが原因なのかはわからないけど、原因の一つである事は確かだと思う。
「今日はもういいや~。寝よ。ハンモックになれる?」
『わかった。誰か来たら起こせばいい?』
「うん。よろしく~。」
魔導書にハンモックへと変化してもらったラグナはのんびりと風に揺られながら眠りにつくのだった。
それから数日後。
そろそろアルテリオンへと到着という所で……
「まじかよ……」
ミラージュの兵士達が休憩しているのが見えた。
ラグナはカモフラージュローブを羽織ると魔力を流して草陰に隠れる。
しばらく様子を伺っていると、
「隊長ー!!見当たりません!」
どこかへと探索へと出ていたのか5人ほどの兵士が休憩している部隊へと合流していた。
「そうか……各自、今日はここで野営とする!準備せよ!」
「「はっ!!」」
『まじかよ……なんかこの前もこんなパターンだったよな……』
カモフラージュローブで姿を隠しながら野営している集団へと近付いたラグナは、こっそりと様子を伺っていた。
「おい、聞いたか?第7小隊の奴ら全滅だったらしいぞ?」
「まじかよ。第7小隊っていえば実力者揃いの小隊だっただろ。エルフかドワーフにやられたのか?」
「それがよ……どうも違うらしい……聞いた話なんだがな……胴体が無理矢理引きちぎられた様な死体とか、首が引きちぎられたりとか、どれも無惨な死体だったらしいぞ。さらに、真っ黒な消し炭になってる溶けた鎧らしき物も転がっていたらしい。」
「おぃおぃ、まじかよ……誰がやったのかわかってるのか?」
「いや……それがわからないらしい。エルフやドワーフの可能性も無くは無いが……流石にそこまでやるか?」
「その前にエルフの腕力だと引きちぎれねぇだろ。だからと言ってドワーフの奴らが消し炭になるような魔法も使えねぇしな。」
「……じゃあ誰がやったんだよ。俺は見たことがねぇけど、ヒノハバラにいるっていう魔物の仕業とでもいうんじゃねぇだろうな?」
「魔物?あんなのただの獣がデカくなっただけだろ?どうせ、ヒノハバラが大袈裟に誇張してるに決まってる。」
「だといいけどな……第7小隊がそんな事になってるんだ。気を付けるに越したことはねぇだろ。」
「確かに……襲われたくはねぇもんな……しかし、本当に何があったんだろうな?」
「さぁな……まぁ、俺達は隊長様の命令通りに動くだけだ。」
「そこ!!話してないでさっさと手を動かせ!手を!」
ラグナがこっそりと話を聞いていた2人の兵士は上官から注意されると、そそくさと作業に戻るのだった。
『ミラージュの兵士達が話をしていた襲撃者の正体って絶対にアイツだよな……』
ラグナは1ヶ月ほど前に兵士達が話をしていた現場と似たような現場を目撃した記憶がある。
『第7小隊ってのが壊滅したのは何時なんだ……?』
壊滅した時期が問題になる。
あのバケモノとラグナが出会った前なのか、それとも後なのか……
出会った後の話だとしたら、エチゴヤの商隊の帰還時のリスクが跳ね上がる。
『もっと話を聞きたいけど……そんな手段が無いし……』
尋問なんてしたことが無いし、出来る気がしない。
ラグナがしばらく兵士達の様子をじっと監視していると、隊長らしき人物が兵士達を集合させるのだった。
「諸君、明日からは本格的にアルテリオンへと通じる場所の探索を開始する。2班から4班は……」
この小隊が狙っているのはアルテリオンへと通じる入り口の場所……
「現在いるこの場所の付近で何度もエルフの目撃情報が上がっている。奴らの国への入り口はそう遠くに無いはずだ。」
ラグナはこの小隊の目的を知ると、再び嫌がらせをすることを決意。
すぐに行動を開始するのだった。
『まずはっと………』
いつも通り、小隊の物資が積まれている置き場へと近づくラグナ。
しかし、物資を守るように兵士が1人が配置されていた。
『やっぱり対策はされてたかぁ……でもその場所なら……』
万が一雨が降っても濡れないようにする為か木の近くに物資は集められていた。
ラグナはカモフラージュローブでこっそりと木に近寄ると、兵士が背を向けているのを利用してゆっくりと着火ジェルを物資の側へと流していく。
十分に着火ジェルを振り撒いた後は、物資を守る兵士の前方に向けて石を投げつける。
パチン
「な、なんだ!?」
急に後方から投げられた石に驚いた兵士は剣を構えて慌てて後方に振り向いていた。
ラグナはその兵士の目の前に向かって魔法を発動させる。
『ライト』
「め、目がぁぁぁぁ!?」
急に目の前に現れた光によって視界を失った兵士は、目を押さえながら後ろに下がってしまった。
その隙にラグナは物資に向かって極小のファイヤーボールを発動させる。
「どうした!?」
物資を守っていた兵士の異変に気がついた他の兵が剣を構えながら駆け寄ってきていた。
「に、荷物が燃えてるぞ!!」
「急いで消火するんだ!!」
「くそっ!!あの話は本当だったのかよ!!」
兵士達が必死に水を掛けたり、叩いて消そうとしたりする中、ラグナはニヤリとした表情を浮かべながら森の奥へと待避するのだった。
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