第302話
リオに振り回される事、1ヶ月。
第2回目となる物資の準備が出来たと連絡が来たラグナは受け取りの為に倉庫へと向かう。
すると倉庫の中にいたのは女王であるミオンと以前も見かけた事のあるメイドだった。
「本当に行くのですか?」
「はい。マリオン様に頼まれたのは僕なので。やっぱり僕がやらないといけないと思うんです。」
「そうですか……道中の安全を心より願っております。危ないと感じたらすぐにお戻り下さい。本当に無理だけはしないでくださいね。」
マリオン様からの神託が下る前から2国に対して少しずつ支援の準備をしていたミオンは内心複雑な感情だった。
本来ならば国をあげて堂々と支援を表明するべきなのだが……
ここ最近様子のおかしいヒノハバラのせいでそんな事も出来ない。
ヒノハバラの様子がおかしいことをエーミルダも気がついたらしく……
こっそりと使者が我が国にやってきて、ヒノハバラの変化に心当たりは無いかと訪ねてきた。
ここは正直にエーミルダに情報を伝えてある。
国王以外の上層部が突如ガラッと入れ替わった影響だろうと。
何故入れ替わったのかは我が国でも把握出来ていない。
政治に疎いエーミルダですら気がついたのだ。
このまま何も無いとは思えない。
ガッデスから仕入れた高品質の武器はアルテリオンと我が国の戦うための力へと。
ヒノハバラ、ミラージュとの戦争の可能性も考えなければいけない。
エーミルダにもそれとなく伝えた。
あの国はあの国で戦うための準備をする事だろう……
「わかりました。心配して頂きありがとうございます。それじゃあ行ってきます!」
アルテリオンとガッデスへの物資の輸送を、まだまだ子供であるあの少年に押し付けてしまっている。
「本当に無理だけはしないで……」
私はただ祈ることしか出来ない自分の不甲斐なさに悔しさでいっぱいになる。
何が女王だ。
あんな少年に重荷を背負わせて……
『ミオンちゃん。1人で責任を感じて抱え込む必要なんてないよ。私にも原因があるんだからね。』
「リオ様……」
『彼が少しでも安心して過ごせるように、私達はこの国をもっと良くしていこう。どんな国にも負けない国にさ。』
「はい。力添えをよろしくお願いします。賢者リオ様。」
ミオンは改めてラグナが向かった先へと振り向くと手を組んで祈りを捧げるのだった。
『海の女神、マリオン様。どうかあの子をお守り下さい。』
一方、マリンルーを出発したラグナはミオンの心配をよそに日が落ちた後、のんびりと休憩していた。
「ちょっと試して見たかったんだよね~。」
ラグナの目の前にあるのは七輪のような形の物。
リオに振り回されていた1ヶ月。
その中で前世ではどんな生活をしていたのか。
どんな道具があったのか。
初代勇者ヒノが全く教えてくれなかった聖地、秋葉原と池袋。
知っている事、覚えていることをメモに書き出しながら語っていた。
その話の中で俺が好きだったキャンプについても語っていたのだが、その時に思い出したのが七輪。
七輪が珪藻土で作られている事は知っていたが……
珪藻土ってそもそも何だ?って所で躓いていたのだった。
リオに聞いても『珪藻土?何それ?新しい素材?』という感じで全く知らないらしい。
それならばと魔法で土を固めて作ったのが目の前にある七輪モドキ。
「確か土器って形を作った後に焼くんだったよな?」
焚き火で土器を焼いている動画を見た記憶をふと思い出したラグナは、試しに作って見ることにしたのだった。
焚き火の火起こしが完了後、いよいよ七輪モドキを火の中に投入。
「あっつっ!」
魔力で保護しながらも熱いものは熱い。
何とか我慢して火の中に投入すると、焼きあがるのをじっと見つめるのだった。
しかし、ラグナは知らなかった。
焼き上げる前にしなければいけないことがあることを……
「火が弱いのかなぁ。やっぱりかまどみたいなきちんとしたやつじゃないと温度が足りないのかなぁ?」
火の中に入れた七輪モドキではあるが、一向に変わった様には見えなかったラグナは一気に火力を上げる事にした。
焚き火の火に向かって風魔法で空気を送る。
バチバチバチ!
一気に焚き火の火の勢いが上がっていく。
更に空気を送っていく。
バチバチバチ!
先ほどよりも音が激しいし、顔に感じる焚き火の温度も更に熱くなる。
パキ パキ
「ん?一気に上げすぎたかな?」
火の中に投入していた七輪モドキからパキパキという音がなり始めた。
焚き火の中の様子を伺うラグナ。
パキ パキ
この音に不安になる。
パキ パキパキ
音が連続でなり始めた。
「ヤバいかな……」
そう思い始め、念のためにと魔力障壁を発動させた瞬間……
パァァァァン!!
何かが弾ける様な大きな破裂音と共に、ラグナに向かって何かが飛んできたのだった。
「あっぶな!!」
弾ける音と共にラグナに向かって飛んできたのは、七輪モドキだった物の破片。
ラグナ、初めての焼き物は爆発して終了するのだった。
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