第301話
「沖まで飛ばせって……そんな所まで飛ばせる道具なんて持ってませんよ。」
『ちょっち待ってな~。確かあの辺にっと……』
ウィンウィンと機械音のような音が部屋に響く。
『あった、あった!ほいっと!』
ラグナの足下が光り輝くとロケットランチャーの様な形をしているブツが現れた。
「えっ!?何これ!」
『当時、海の魔物を釣り上げる為に開発した魔道具だよ~!釣り餌と糸を飛ばす燃料は魔力!餌は水に着弾するまで保護魔法が掛かるように設計してあるから安心安全♪糸の長さは最大5000メートルだからまぁまぁ遠くまで飛ばせるよ!。』
リオの説明を聞いて唖然とするラグナ。
まず、射程が最大5000メートルの時点で理解不能。
「そんな長い糸をどうやって巻き取るんですか……」
『そんなの簡単だよ~!糸を巻き取る時は本体横にあるボタンを押しながら魔力を流すだけ!あとは海の中に引っ張られないように耐えながら巻き続けて、魔物の姿が見えたら魔法をドカンとぶちかまして息の根を止めたらゲットだぜ!』
「いや、違う!俺の知ってる釣りと違いすぎる!」
『細かい事は気にしないの~。昔はそうやって魔物を釣り上げていたんだから~!まぁ日野っちの火力があったからこその漁法だったけどね~!アヒャヒャヒャ!』
久々にリオの馬鹿笑いを聞いてイラッとしたラグナだったが、グッと堪えて使用方法の説明を受ける。
『んじゃ簡単に使い方を説明するよ~!スコープを覗くと照準と着弾予想地点が表示されるから狙いを付けて引き金を引くだけで簡単に発射!着弾予想地点は魔力を流したら流しただけ遠くに表示されるんだけど、減らすことは出来ないからそこだけは気をつけてね~!!後は魔力を流しても発射しないまま放置すると、負荷が掛かってドカンといくから注意だよぉ~。』
「ドカンって……どのくらい放置したら爆発するんですか?」
すぐに発射しないと爆発するとか言われたら、そんな危ない魔道具を使う気にはなれない。
『うーん……魔力を流した量によって変わるからなぁ……確か最大まで魔力を流して5分って所だったかなぁ?まぁ最大まで流して爆発させると中々の威力だから気を付けてね♪』
「中々の威力って‥…試したことあるんですか……?」
明らかにこの感じは一度爆発させてる。
『あるよ~!それも、とっておきの場所で!あれはスカッとしたなぁ~!』
そのシーンを思い出したのかウシシと笑いが止まらないリオ。
「その笑い方ってことは、絶対にヤバい場所で爆破させたでしょ……」
『全然ヤバくないよ~!魔王城の手前でトラップがいっぱい仕掛けられてたんだけど、あまりにも嫌がらせが酷すぎたからさぁ……日野っちがブチ切れて、限界以上に魔力を込めたソレを魔王城目掛けて全力で投擲したんだよ~!あれは今思い出してもスカッとした!しかもその後、見事に魔王城に突き刺さって大爆発~!ホント、最高だったなぁ~!いきなり半壊した魔王城と慌てふためく魔族達のあの光景はさぁ~!』
想像以上の被害に言葉を失うラグナ。
いくらなんでもやりすぎだろ!
そもそも、そんな危険な魔道具をホイホイ作るなよ!
と、心の中でツッコミを入れまくっているラグナ。
そんな事を考えていると、ふと気がついてしまう。
「もしかして俺が今この場所で暴発なんてさせたら……?」
『シーカリオンは終わりだねぇ~!!ここにいる私もラグナっちも、城にいるミオンちゃんもみ~んな仲良く大爆死ってやつだよ~!!』
「そんな危ない魔道具を使えるわけ無いでしょ!!」
なんて危険な代物を平然とこの人は渡してくるんだ!
魔王城を半壊させるような威力とかどんたけぶっ飛んでる代物だよ。
仮に……仮にだけど、うまく作動させて釣り上げたとしても、海の魔物を倒せるかどうか……
その前に……
「仮に近場まで引き寄せたとして……沖にしか居ないような魔物が近場に現れたら絶対に大騒ぎになりますよね?」
『あっ‥…』
どうやらリオさんも気がついていなかったらしい。
誰にも見られる事なく釣り上げるなんて不可能。
魔物が浅瀬まで接近なんてしたら住民達がパニックになるに決まっている。
しかも、そんな事をしでかしたら目立つに決まってる。
『魔物なんて釣り上げたら、絶対に騒ぎになるよ~!流石にミオンちゃんの権力を持ってしてももみ消せないだろうし。何でもっと早く気がつかないの!!』
「知りませんよ!そもそも海の魔物って言ったのはリオさんじゃないですか!!」
『グッ……誰にだってミスはあるさ!とりあえず釣り上げ作戦は中止だ、中止!!あっ、その魔道具はどうせ使わないから持ってていいよ~!私からのプレゼント。』
「いや、こんな危ないブツを渡されても……」
扱いに困る魔道具をほぼ強制的に押し付けられた。
そんなこんなで釣り上げ作戦は中止になるのだった……
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