第263話

5日連続更新♪

褒めて!




香ばしい香りが周囲に広がる。


「そろそろかなぁ……」


ほ○にしを振り掛けたオジサンもバカ○ぶしを振り掛けた小アジもいい感じに焼けてきている。


サザエにいたっては、グツグツと煮えているのがよくわかる。


「これ以上はしょっぱくなりそうだし、まずはサザエからかな。」


魔物の皮で作られたらしい皮手袋を装着。


魚をたき火から遠ざけて地面に突き刺すと、サザエを回収。


サザエの蓋をナイフでこじ開けて、くるりと回すようにして身を回収。


サザエ独特の匂いと醤油の匂いが一気に広がる。


ゴクリ


思わず唾を飲み込んでしまう。


「頂きます。」


先ほどまでグツグツ煮立っていたので、息をふーふーと吹きかけて冷ましていく。


そして一口。


「うーんまい!ちょっと醤油入れすぎたかもしれないけど、サザエに醤油が染み込んでて美味い!」


1人なのに思わず声に出して叫んでしまった。


俺が喜んで食べてるのを見て気になるのか、爆炎の魔法書と先ほどまでテントに変身していたはずのキャンプスキルの魔道書がサザエの殻をのぞき込むようにグルグルと回っていた。


その様子を笑いながら見ていたラグナ。


「次はこれだ!」


もうこの匂いを嗅いでいたら我慢出来ない。


バカみたいにまぶして焼いたオジサン(魚)


カレーのような匂いが広がりすぎてもう無理。


串を手に取ると豪快にかぶりつく。


口の中にオジサン(魚)のうま味とカレー風味のスパイスの味が広がる。


「うまい……」


懐かしいカレー風味に前の世界を思い出してしまい、思わず涙が零れそうになる。


すると俺が一口齧ったオジサンの周囲を2冊の本がクルクルと回る。


そして……


爆炎の魔法書が徐々にオジサンに近寄る。


コツンと軽く触れた。


「えっ……」


爆炎の魔法書が触れた部分。


まるで小さい何かが齧ったかのような……


俺が驚いていると、

『なにこれー!!うんまい!!』


という声が頭の中に響いた。


「はっ……?えっ……?」


爆炎の魔法書が喋った……?


驚きすぎて呆然としていると


キャンプスキルの魔道書までもがオジサンにコツリと触れる。


魔道書が触れた部分にもくっきりと齧った跡が……


『これが食事……』


先ほどとは違う声が頭の中に響く。


…………


「はっ……?君達、喋った……?」


フィオナから爆炎の魔法書を引き継いだときに、本が喋ったなんて聞いてない。


「どう言うこと……?」


パニックになる俺をよそに、2冊の本はオジサンをツツいてはどんどん食べている?みたい。


さっきまで海鮮BBQでキャンプを満喫だーって喜んでいた気分が、完全に吹き飛んでしまった。


その光景にラグナは、あ然としたまま見ていることしか出来なかった。


オジサンが骨を残し綺麗サッパリ食べられた頃。


『ねぇ、人間!隣の小さいやつも食べていい?』


『ラグナ、食事楽しいの。いい?』


「あ、あぁ。食べて良いけど……」


もう意味がわからない。


すっかり日は落ちており、ゆらゆらと燃えるたき火の火を見て落ち着こうとするが……


『意味か判らなすぎて、落ち付けねぇ。』


ラグナは意を決して小アジをツツいている本達に話し掛けた。


「お前たち話せたのか?」


『今食べてるから待ってて!』


「ご、ごめん。」


何で俺が謝らなきゃいけないんだ……?


2冊が再び骨だけを綺麗サッパリ残して食べ終えた。


『人間、まだ食べたいから作ってよ!』


『もっと食べてみたいの。』


「つ、作るからその前に質問に答えてよ。お前たち何で話せるんだ?」


『別に私達は話せない訳じゃないぜー!お前に話し掛けたのは初めてだけど、こいつとはちょくちょくお前の中に居るときに話してたし。』


『うん。ラグナの中にいるときは2人でお話してた。』


「お話してたじゃないよ!話せるならもっと早く話をしてくれても良くない?」


『話せる訳無いじゃん!魔法神様から人間と話しちゃダメって言われてるんだから!』


『私も。ダメって言われた。』


「えっ?でも、いま話してるよね?」


『『あっ……』』


2冊がそう言った直後、周囲が白い霧に包まれていくのだった。

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