第262話

浜辺に着いた頃には日が少し暮れ始めていた。


釣りをしている時も元々あまり人の姿が無かったが、日も暮れ始めたので周囲に人の気配が全く無くなっていた。


ラグナは収納から石をゴロゴロと取り出していくと、丸の形になるように並べていく。


そして次は薪を並べていき……


ツンツン


ラグナの肩をツンツンする存在が。


「ん?どうしたの?」


久々に出て来た爆炎の魔法書がふわふわと浮かびながら、ラグナの肩をツンツンしていた。


「もしかして火を点けたいの?」


一生懸命薪をツンツンしてアピールしてくるので聞いてみた所、どうやら正解だったらしい。


魔法書って頷けるんだね。


初めてみたよ。


「爆発させちゃダメだよ?ちゃんと火を点けれる?」


ラグナがそう言うと爆炎の魔法書は大きく頷いていた。


それじゃあ頼もうかと思っていると、


再びのツンツン。


ツンツンした方を振り向くと、


「君もどうしたの?火を点けたいの?」


今度はキャンプスキルの魔道書がラグナの肩をツンツンしていた。


魔道書がフルフルと動くのでどうやら火を点けたい訳じゃないらしい。


「う~ん。何かしたいの?」


ラグナが魔道書にそう問い掛けると、魔道書は砂浜に絵を描き始めた。


「三角形……もしかしてテント?」


どうやら正解だったらしい。


魔道書もブンブンと頷いていた。


「なんて呼べばいいんだろ?2冊?2人?わかんないけど、2冊でいいっか。2冊とも、お願いね。」


まずは爆炎の魔法書が、小さくパチパチと組んだ薪の中で爆発を繰り返す。


しばらくして煙が上がって来たのでラグナが風の魔法で優しくフォローしていると無事に着火。


どうやら嬉しかったらしい。


あんまり仲がよくないと思っていた魔法書と魔道書の2冊がクルクルと回りながら、まるで喜んでいるように見えた。


そして魔道書がハッとしたように止まると、俺の方にペコリ。


魔道書が光り輝くとテントへと変身したのだった。


『俺がスキル発動しなくても勝手になれるのかよ。』


と内心思っていたのは秘密。


正直な所、未だにキャンプスキルやらキャンプスキルの魔道書やら良くわからないことだらけ。


気にしたってどうにもならないから、最近は気にしない事にしている。


「ってかテントってこっちか。確かにこの形状の方が、たき火をしながらのんびりし易いから助かるけど。」


浜辺に書いた絵が三角形だったので、一般の人がよく想像する三角形のテントだと思っていたが……


目の前に現れたのはパップテント。


軍幕テントとも呼ばれているテントが現れたのだった。


「2冊とも、ありがとね。」


魔道書はテントへと変身?しているので、土魔法でローチェアを再現した物に座りながらたき火の火をボーッと見つめる。


「ってボーッとしちゃだめだ。料理の準備っと。」


まずは自分で釣ったオジサンを串にさして地面に突き刺すと、たき火の火でじっくりと炙っていく。


ついでにと購入していた小アジも串に突き刺して炙る。


そして自分で穫ったサザエ。


「ここは勿体ない精神を捨てて……」


サザエに醤油を垂らして飲ませる。


醤油が中へと流れ込んで行くとサザエの蓋がガッチリと閉まったので、まだ生きているみたい。


網に入れっぱなしだったけど、生きてて良かった。


サザエも火のそばへ。


そして久々登場のほり○し。


オジサンにほ○にしを振りかけて味付けしていく。


「確か芸人の人が開発したスパイスもあったよなぁ。商品の名前にインパクトがあったよな。確かバカ○ぶし。あれ一回試してみたかったんだよなぁ……」


そう考えていると、


『スパイスを召喚しますか?』


ん?


どういう事?


とりあえず「はい」と返事をする。


すると目の前に現れたのは……


「なんていうご都合主義。でもまさか味わえるなんて……」


目の前に現れたのはインパクトあるパッケージの商品。


その名も『バ○まぶし 辛くないの』


思わず辛くないのっていう所でクスッと笑ってしまう。


蓋をあけて匂いをかぐ。


スパイスのいい香りが広がる。


食欲がそそられる匂い。


小アジにバカみたいな量を振り掛けて焼いていく。


「これ、ほ○にしとも違う匂いが広がっていく。カレーみたいな匂いだ!」


ほ○にしは醤油のような香り。


それに対してバカ○ぶしはカレーのような香り。


たき火周辺は調味料のいい香りに包まれていく。


サザエの醤油が焼ける香ばしい匂い。


オジサンのほり○しが焼ける匂い。


そして小アジに振り掛けたバカ○ぶしのカレーの匂い。


あまりにも食欲をそそる匂いに包まれてしまった為、思わずお腹が鳴ってしまう。


「はやく焼けないかなぁ~。」


ラグナはルンルンでたき火の火を見守るのだった。

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