第261話

エイミーさんとの市場デート。


身長差はあるものの、ほぼ強制的に腕を組んで市場をまわっていく。


「おっ!エイミー様、お似合いですぜ!」


「あら、ありがとう♪」


「エイミー様のいい人かぃ?こりゃ目出度い!!」


「そんなんじゃないわよ~。私には勿体ないわぁ。ちょっと気分転換に付き合って貰ってるだけよ♪」 

ニコニコとしているエイミーさんと一緒に市場をまわって、一つ気がついた事がある。


「エイミーさんって市場の人から本当に好かれてますよね?」


みんな茶化している訳じゃなく、本心からおめでとうと言葉を掛けていた。


先ほどあったおばぁちゃんなんて、


「やっと、やっとエイミーちゃんにも春が来たわねぇ。本当に、本当に良かった!この際、年の差なんて気にするんじゃないよ!」


と言いながら泣いて喜んでいた。


少し罪悪感を感じたものの、エイミーさんが『付き合ってる訳じゃないのよ~。』と謝罪してくれたので誤解は解けたけど。


「ん~。みんな苦労してたからねぇ。名前は言わなくてもわかるだろうけど、あの国の関係者やら商人やらが武力を盾に酷い値で買い叩いていたのよ。それを良しとしないうちの代表が手を回したお陰で、健全な取引が行われるようになったの。その流れで私も良くして貰ってるわ。」


「そうだったんですか……本当にあの国って碌な国じゃないですよね。」


もうヒノハバラに関しては嫌悪感しか感じない。


本当に一部だけ真っ当な人もいるけど、本当にごく一部。


その後もエイミーさんと腕を組みながら市場をまわっていく。


「あら、これは安いわね。」


「これはこれは、エイミー様。今日水揚げしたばかりで新鮮ですぜ!」


「ラグナ君、これはどうかしら?焼いても煮ても美味しいわよ?」


そうオススメされたのはこの魚


『ブリ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


「あれならウチで捌く事も出来ますぜ!」


ちょっと大きい気がしないでもないけど、食べきれない分は収納に閉まっておけばいいか。


「それじゃあ、お願いします。」


大銅貨3枚を支払い、店員さんに捌いてもらう。


「ウチのがまだ居るからそっちに渡しておいて貰える?それを持っていたらデートなんて出来ないしね♪」


エイミーさんが気を使ってくれて、エチゴヤ商店まで運んでくれることになった。


流石に手に持ったまた買い物する訳にもいかないし、人前で収納するわけにもいかないからね。


その後も海老やらイカやらを見つけては購入し、本日の市場デートは終了した。


「今日は付き合ってくれて、ありがとねぇ♪」


「こちらこそ。いろいろ教えて頂き、ありがとうございました。」


正直な所、値段を見ても高いのか安いのか判らなかったので、エイミーさんにはだいぶ助けられた。


流石に街中では腕を組んであるくことはしなかったが、一緒にエチゴヤ商店へ。


「ラグナ君の購入した商品、持ってきて貰える?」


店員さんがすぐに購入した商品を持ってきてくれた。


「代表からは聞いてるわ。人払いもしたから構わないわよ~。」


ラグナはエイミーの目の前で購入した魚達を収納してみせた。


「凄いわねぇ……本当に一瞬で消えるのね。安心して、他言はしないから。代表からも謝罪があったわ。断りもなく私に教えた事をね。はい、これ。」


そういってエイミーさんから手紙を受け取る。


手紙にはエチゴヤもアルテリオンとガッデスへの荷物の輸送に関してメインで協力する事になった事。


その際に他の商会の荷物もエチゴヤで受け取る事に話が決まり、集めた荷はエチゴヤの倉庫でラグナへと引き渡すこと。


その際にどうしてもエイミーの協力が不可欠となるので収納の魔法について話すことになってしまった事。


断りもなく教えてしまい申し訳無いと、丁寧に謝罪する文章が書かれていた。


「でもまさか物資の輸送に関して、エチゴヤ商店が関わるとは思ってもいませんでしたよ。」


「物資の量が量だけにねぇ……正直ウチが手を出さなきゃ揃えられないと思うほどの量なのよ。それに、ラグナ君のその魔法についても情報が漏れる訳にはいかないし。それでうちに声が掛かったって訳。みんなにはうちで荷物を一括で引き受けて荷運びをするって事になっているわ。まぁ、うちは収納の魔道具を保持していることはある程度知られてるしね。たぶん他の商会はその魔道具を使って物資を輸送するとでも思ってるんじゃないかしら?勝手に勘違いしてくれるから、助かるんだけどね。」


細かい話はまだ詰めている最中とのことで、確定しだい教えてくれることになった。


「それじゃあ、お料理楽しんで♪またね~。」


魚を受け取りエイミーさんと別れ、いざ浜辺へ。


少し時間は掛かったものの、ようやく海鮮BBQの準備が完了したのだった。

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