第264話
ぎりぎり6日連続更新(;゚ロ゚)
「これは……」
周囲が真っ白な霧に包まれていく。
『あわわわ!』
『やらかした……』
2冊の本がワタワタとしている。
急に背筋がぞくぞくとした感覚に襲われる。
「まったく、忙しい時にやらかしてくれるねぇ。」
急に俺の背後から聞いたことがある声が聞こえた。
その声の主を思い出して固まる俺を、後ろからギュッと抱きしめてきた。
そして……
「相変わらず、美味しそうだねぇ。」
すぐに耳元で小さく「食べちゃいたい。」と呟いた。
「秩序の女神エミア様、何でこんな所に……」
エミア様は緊張で固まる俺をガッチリと抱きしめたまま。
「何でこんな所にって、当然だろぉ?神との約束を破ったルール違反者がいるんだからさぁ。」
2冊の本はエミアが現れたと同時に地面に倒れたようにしており、心なしかプルプルと震えているように見える。
『申し訳ありません、エミア様!』
『ごめんなさい。』
震える声で謝罪する2冊。
「謝って許されるなら、私はいらないよねぇ?」
ガタガタガタと音を立てて震える2冊。
「まぁ気持ちは判らないでもないよ?あんなに美味そうな匂いをプンプンさせていたらねぇ。おかげで、ここに来る前に料理神を裁いてきたばかりだからねぇ。」
エミア様が急に知らない神様の名前を……
「りょ、料理神様とは……?」
「料理神ってのはねぇ、この世界の料理を司る神さぁ。前々からラグナ君の調味料に興味があったらしいんだけどねぇ。ほら、マリオンが創造神の爺さんに怒られた事があっただろ?流石に怒られたくはないからって指を咥えてずっと我慢してたのさぁ。でも新しく召喚した調味料がいけなかったねぇ。どうやら我慢の限界を迎えたみたいで、あのバカはラグナ君の近くに降臨しようとしたんだよ。だからここに来る前に牢にぶち込んできたばかりなのさぁ。」
「えぇ~……」
バカ○ぶしを使ったせいで神が1名裁かれたとか……
「んでさぁ、ラグナ君には悪いんだけど……君が召喚できるスパイスを幾つか天界に用意してくれないかな?きっとあのバカはお仕置きが終わったら懲りずに降臨しようとするだろうし、他の神々やら女神も降りたくてウズウズしてるみたいだからさぁ。事故を未然に防ぐと思って。まぁタダで寄越せとは言わないさぁ。」
あの匂いって神々を動かすほど魅力的なのか?
確かにカレーのようないい香りだけど。
神々の方がいい物食べてそうな気がするけど。
「そんな事は無いさぁ。あの世界は食の技術だけは無駄に進んでるからねぇ。」
確かにこの世界と比べるまでもないほど差が付いてるけど。
「神様や女神様なら手に入れる事くらい出来るのでは?」
「そんな事出来るのは創造神の爺さんくらいだねぇ。うちらには他の世界に干渉する権限なんて無いのさぁ。」
何か知ってはいけない情報をどんどん知ってしまっている気がする。
「この程度なら構わないさぁ。君はあの子の契約者だしねぇ。さて、そろそろ仕事でもしようかぁ。」
エミア様がそう言うと2冊の本はガタガタ所ではなく、本のページがめくれてバサバサと音を立てながら激しく震えていた。
「まずは、キャンプスキルの魔道書からだねぇ。」
『本当にごめんなさい!』
「まぁ、慌てないでよ。お前に対しては創造神の爺さんから言われてるからねぇ。お前を罰するとラグナ君が困った事になるってさぁ。それにお前はまだ意志を持ったばっかり。つまり産まれたばっかりだから今回は特例としてお咎め無しだねぇ。良かったねぇ、爺さんの眷属で。」
『次からは気をつけます……』
「まぁ、次も何もラグナ君に知られちゃってる訳だしねぇ。これからはキチンと協力してあげるんだよ?判ってるね?」
『はい、ラグナ以外にはバレないようにします。』
キャンプスキルの魔道書がお咎め無しと聞いてから少し爆炎の魔法書が落ち着いた気がする。
「それじゃあ次はお前の番だね。」
『はい。今回は申し訳ありませんでした。』
「最初からラグナ君に対してもそう言う態度でいれば良かったのにねぇ。ラグナ君に対して名前も呼ばずに人間としか呼んで無かったね?随分と見下しているじゃないか。」
『そ、そんなつもりは……』
爆炎の魔法書が言い訳を言うとエミア様が「はぁ~」とわざとらしくため息を吐く。
「ねぇ、仮にも女神の契約者とお前ではどっちが立場が上なのか判ってるのかねぇ?」
『め、女神様との契約者が上位者になります。』
「へぇ……判っていてあんな態度を取っていたんだぁ。」
『いや、あの、その……』
「随分と舐めた真似をしてくれたねぇ。ヒノに仕えていたからって調子に乗ってるのかなぁ。」
『そ、そんな訳では……』
爆炎の魔法書がワナワナと震えている。
「まぁ、どっちでもいいさぁ。魔法神から伝言だよ。『君にはガッカリした。再教育を私自らの手で施す事にするよ。ちょうど忙しい所だからね。』だってぇ。良かったねぇ!」
『いやー!!それだけはい……』
爆炎の魔法書が発狂したように叫んでいる途中で光り輝き、その場から姿を消したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます