第259話

あれから更に数時間が経過。


あともう少しで日が暮れるという時間になっていた。


「何故だ……何故こうなった……」


釣り上げた魚は全部で6尾。


その6尾全てが……


「なんで全部『オジサン』なんだよぉ……」


そう。


何故かラグナが釣り上げた魚は全て『オジサン』


あまりにもオジサンばかり掛かるので、釣りの場所を変えたのだったが……


どの方向に投げ込んでも何故か『オジサン』ばかりが針に掛かってきていた。


確かに……


確かに前世の年齢とあわせれば30歳を超えるけど……


嫌みか……嫌みなのか!?


仕方ない……


釣れただけでも良しと思うことにする。


「やっぱり海鮮BBQなら貝も欲しいよなぁ。」


貝を取るならば、やはり海の中に潜るしかない。


って事で次の日。


エチゴヤ商店で購入したゴーグルと銛を片手に浜辺へとやってきた。


海に潜る前に準備体操をして身体を解す。


そして


「周囲に人影は無し。いざ出陣!」


浜辺から海へと潜っていくのだった。


『うわぁ~。』


思わず声が出てしまいそうになる。


透き通るほど綺麗な海。


集団で泳ぐ小魚に、綺麗な珊瑚。


ゆらゆらと揺れる海藻。


そして海の中から上を見上げると日の光がキラキラと輝いている。


『さてと……』


貝はどこだと潜りながら進むラグナ。


『ん?』 


珊瑚の隙間に黒いトゲトゲとした物体がいる。


『ウニ?』


すぐに鑑定をしてみることに。


『ガンガゼ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


鋭い棘に毒が有るため注意


『毒……』


食用可とは出てるものの……


『毒かぁぁ……』


流石にあの棘に触らないように穫る手段が思いつかない。


『ガンガゼ』 『ガンガゼ』 『ガンガゼ』


しばらく泳いでいると大量に群がるウニの集団を見つけた。


『ガンガゼ』 『ムラサキウニ』 『ガンガゼ』 


『ん!?』


一瞬、視界の中にムラサキウニの表示があったものの……


『この中からムラサキウニだけを取り出すのは無理だぁぁ。』


海草に群がるガンガゼの中にムラサキウニが居るみたいだが、あの中に手を入れるのは無理。


『そもそもウニを捕りに潜ってる訳じゃないし……』


気を取り直して再び珊瑚がある場所へ。


しばらく泳いでいると見たことがある特徴的な形の貝を発見。


『サザエ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


『サザエきたぁぁぁ!』


ちょっと小ぶりだけどサザエを発見。


手で取ると網の中へ。


周囲を鑑定すると再び獲物を発見。


『岩ガキ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


貝毒


発見した岩ガキに手を伸ばそうとしたところで気がつく。


『貝毒かよ!?』


確か前世の父さんが生牡蠣で当たって、ひたすら腹痛に苦しんだのを見た事がある。


その後も複数の岩ガキを発見するが、どれも貝毒の表示が有るものしか無かった。


『なんだ!?』


海底付近を泳いでいると何かが素早く動き、目の前で砂が舞った。


目の前を素早く動いた正体。


『セミエビ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


『なんだ、あの平べったい海老……食用可能って事は食べれるんだろうけど……』


捕獲しようにも思っていたよりも素早い。


近寄ろうにもどんどんバックで逃げられてしまう。


仕方ない。


水の中で使うのは初めてだけど。


『ウォーターウォール』


ラグナはセミエビを覆うようににウォーターウォールを展開。


セミエビの逃げ道を塞ぐとゆっくりと近寄る。


セミエビは迫り来るラグナから逃げようとバックするが、ウォーターウォールにぶつかってしまい逃げ道を失う。


そのセミエビに向けてラグナは手に持つ銛で一突き。


そして海面に出ると


「捕ったどー!!」


一回やってみたかったんだ。


しかし……


「おめぇさん、こんな所まで泳いでるなんてあぶねぇぞ!!魔物が居たらどうすんだ!!」


近くで漁をしていた漁師さんに怒られてしまった……


ごめんなさいと漁師に謝罪し、ラグナは銛に突き刺さったエビを収納魔法でこっそり収納すると急いで浜辺へと泳いで戻るのだった。


「まさか怒られるとは思わなかったぁ……」


仕方ない。


後は浜辺から歩いて入れる範囲で貝を探す。


『ハマグリ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


貝毒


『アサリ』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


貝毒


『ホンビノス』


元は異世界から持ち込まれた種


食用可


貝毒


…………


気がついたこと。


「貝毒って表示されてるやつしか無いじゃん……」


どうすればいいのか分からず、途方に暮れるラグナだった。




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