第255話

あけましておめでとうございます。

お待たせしました。

新年一発目の更新になります。




「大丈夫ですか?」


「おっ、おう……」


初めての負荷稼働実験は……


盛大に爆発して終わった。


未だに魔力障壁の先は砂埃が舞っており、どうなっているのか全く見えない状況だった。


「いやぁ~、お前の魔力量舐めてたわ……どんだけ魔力バカなんだよ。どうすりゃそんな魔力量になるんだ。」


アヤトにそう言われたラグナは、苦笑いする事しか出来なかった。


「このままだと時間が掛かりそうだし、とりあえず換気でもするか。まぁ、動けばだけどな……」


アヤトは壁に備え付けられているスイッチに手をかざすと、魔力を流し込んでいく。


ガリガリガリガリ


激しい異音と共に砂埃が上へと吸われていくのが見えた。


「やっぱりどっか壊れたか。まぁ仕方ねぇ、もうちょい魔力障壁張ったまま耐えてくれ。」


しばらくガリガリという異音を聞いていると徐々に砂埃が晴れていく。


…………


ラグナとアヤトはあまりにも悲惨な状況に固まってしまう。


「まじかよ……」


アヤトがそう小さく呟くのも仕方ないのかもしれない。


まるで爆撃でもあったのだろうかと思いたくなるほどのクレーターが出来ていたのだから。


「あんな小さい魔道具でこんな事になるって事は……」


もしも大型の魔道具で負荷稼働実験なんてしていたら……


「本当にごめんなさい!」


ラグナはアヤトに対して深々と頭を下げて謝罪する。


「い、いや、俺もすまなかった。今まで何度も負荷稼働実験はしてきたんだけど、あんな小さい魔道具でこんな事になるなんて思ってもいなかったからな。」


流石のアヤトもこの状況は予想出来なかった。


自身で行ってきた負荷稼働実験や稼働試験で何度も魔道具の暴発を見てきたが、ここまで悲惨な状況は見たことが無かった。


アヤトは改めてラグナの規格外の魔力量を目の当たりにするのだった。


「でも……あれだな。これ、爆発のタイミングさえ操作出来たら完全に手榴弾超えの兵器だよな。」


「確かに。でも、一歩でもタイミングを間違えば……」


「自分ごとドカンだな。」


そんなリスクがある魔道具なんて怖くて使えない。


「とりあえず負荷稼働実験は失敗だな~。本当に小さい魔道具から試してみて良かったぜ。大型の魔道具だったら家ごと吹き飛んでたわ。すまねぇな、怖い思いをさせちまって。」


「こちらこそ、こんなんにして本当にごめんなさい。」


とりあえず今日は解散という流れになった。


アヤトはラグナを見送ったあと


「まじでビビったぁぁぁ。」


足腰の力が抜けてしまい地面に座り込む。


今まで何度も実験をしては爆発させた事はあったが、ここまで命の危険を感じたのは初めてだった。


座り込んだ近くには粉々になった魔道具の欠片が。


「あいつの魔力量ってどんだけだよ……」


これでは、ラグナの魔力を使っての負荷稼働実験なんて危険すぎる。


「負荷稼働実験はやめて、開発中の魔道具の稼働実験に切り替えるか。でもその前に……」


目の前の悲惨な状況になっている実験室の掃除と補修をする事にするのだった。


一方アヤトと別れたラグナは


「はぁ……」


人気のない海岸で海を眺めながら落ち込んでいた。


気にするなとは言われたものの……


流石にあれだけ盛大に壊してしまうと気にしてしまう。


付近に人の姿が見えないことを確認したラグナは、常に身に付けているネックレスを握ると彼女に話し掛ける。


『サリオラ、今大丈夫?』


『うん、大丈夫だよ。それにしても凄かったね。』


『ん?何が?』


『たまたま地上を覗いたらさ。爆発した瞬間だったからびっくりしたよ。』


サリオラはそろそろラグナから連絡が来る時期かなぁと思いながら偶々地上を覗いた所、目の前に向かってくる爆風の映像に驚いたらしい。


慌ててラグナの姿を探したが、ケガもなく無事だったのでサリオラは安堵していた。


『ちょっと失敗しちゃったんだ。』


『あれでちょっとなの?』


『……結構やらかした。』


『それを気にして凹んでるんだ。』


『うぐっ……』


『でも向こうはそこまで気にしてないよ?』


『そうかもしれないけどさぁ……』


『次は気をつければいいんだよ。何事だって経験。』


『……ありがとう。』


サリオラなりにラグナを励ましていた。


ラグナはサリオラの気遣いに感謝しつつ、時間が許す限りお互いの近況を話すのだった。


『それじゃあそろそろ時間だから終わりにするね。』


『いろいろ話を聞いてくれてありがとう。』


『こっちこそ、ありがとう。あんまり危ないことしちゃだめだよ?』


『わかってるよ。気をつける。』


『ならばよし!それじゃあまたね?』


『うん、またね。』


サリオラとの会話が終わった頃には既に日は落ちており、星の光が海を照らしていた。


次にアヤトの家に行くときには改めて謝罪しようと心に決めたラグナだった。



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