第247話

真っ白だった視界が徐々にクリアになっていく。


そして……


「なっ!?」


隣にいたイルマは眠るように倒れており、自称マリオン様の巫女のゴーレムさんは……


顔面から大の字で倒れていた。


『ラグナ君~。悪いんだけどその身体収納しといて~。困った事に倒れた衝撃で魔法陣が壊れたみたいwよろしく~』


イルマを起こす前にゴーレムを収納しようとして、腕に触れる。


ぷにん。


人肌のような、でも違うような……


気になる感触で、ちょっとだけぷにぷにとゴーレムの腕を触ってしまった。


『キャー、ラグナ君に襲われるー!!動かないからってそんな事するなんて……もうお嫁にいけない……責任とってよね!!』


「と、取りませんよ!!」


ちょっと力を入れて掴んでしまった。


ぐにょんとした反発力。


「やっとわかった!!この感触はこっちの世界にくる前に流行り始めてた、ハード系のグミだ!!」


仕事の休憩時間に、彩華先輩が餌付けと言いながらハード系の固めのグミをくれたから何度か食べた事がある。


『グミ?そういえば日野っちもその言葉を突然言って記憶があるよ。無性にグミ食いてぇって。』


確かに。


その気持ちは判る。


コンビニでたまーにグミが視界に入ると買ってしまうあれは何なんだろう。


何故か急に買ってしまう時があるんだよな。


「うぅぅん……」


やばいと思いすぐにゴーレムを収納。


すぐにイルマへと顔を向ける。


パチリとイルマの目が開くとバッチリ目が合う。


「あ、あれ!?なんで寝てたんだ!?」


マリオン様に祈っていたハズがいつの間にか寝ていたことにパニックになるイルマ。


慌てて立ち上がろうとするイルマを宥める。


「マリオン様の神気に当てられたんじゃないかな?」


「神気……?」


神気と言われてもよく判っていない顔をするイルマ。


「うん。マリオン様からの伝言を伝えるね。『あなたの思いは伝わりました。』だって。」


「は、はぇ……?」


マリオン様からの伝言にポカンとするイルマに更に追い打ちを。


「あとこれ。マリオン様からイルマにだって。」


ラグナは水色の小さな宝石が付いた髪留めをイルマに手渡す。


「なるべく着けておいてね?マリオン様からは御守りって手渡されたからさ。」


「ちょ!おい!マ、マリオン様って!?」


「一緒に祈った時にマリオン様に会ったんだよ。その時にイルマへの伝言とそれを渡してって頼まれたの。」


「ち、違う!そういう意味じゃ!いや、違わない!合ってるのか!?」


ラグナから軽い感じで手渡された髪留め。


それに伝言。


「こ、これ!」


手のひらをプルプルと震えさせながら髪留めを指差す。


「こ、こんな軽い感じで渡していいものじゃないだろ!マリオン様からって事は神器って事だろ!?」


パニック状態に更に追い打ちでパニックになるイルマ。


「うーん……神器なのかなぁ……?まぁせっかくだし着けておきなよ。」


「ちょ、おまっ!着けろって神器だぞ!?神殿に知らせなくてどうする!?」


「だってそれはマリオン様がイルマにってくれたんだよ?神殿は関係なくない?」


「関係あるだろ!そ、そうだ、巫女様!」


イルマはキョロキョロと周囲を見渡すが……


一緒に祈っていたはずの巫女様の姿が無いことに気が付く。


「巫女様は!?」


「巫女様は、何か用があるからって部屋から出て行ったよ。それよりもせっかくマリオン様から貰ったんだから、着けてみなよ。」


ラグナからは着けてみなよと簡単に言われるが……


イルマはただただ戸惑っていた。


何故マリオン様からわざわざ私に!?


しかも祈りが直接届いた上にお返事まで頂ける!?


もうパニック状態の上書きの連続。


「もういいや。ほら貸してごらん。」


ラグナはプルプルと震えている手から髪留めを取るとイルマの髪へとそれを着ける。


「うん、可愛い。水色の宝石がいい感じだよ。」


あまりにも自然に着けられた髪留め。


プルプルと震える手で、恐る恐る髪留めに触れる。


「ほ、本当にいいのか……?やっぱり神殿に伝えた方が……」


「大丈夫。巫女様も知ってるから心配しなくていいよ。」


「ほ、本当に大丈夫なんだろうな!?」


「大丈夫。イルマは気にし過ぎだよ。まぁあえて言うならなるべく着けておいてね。」


「……何があろうと絶対に外さない。」


イルマの決死の覚悟が決まった所で学園へと送っていく。


「いろいろと話を出来て楽しかったよ。」


「私はいろいろと気疲れしたよ‥…」


それじゃあと別れる雰囲気を止める存在が現れた。


「ちゃんと無事に送り届けて下さったのですね。」


バチコンと飛んでくるウィンクをラグナはそっと避ける。


エミリーはイルマをじっと観察し、ほっと一息。


「本当に紳士で安心したわ。あら?可愛い髪留めね、もしかしてプレゼントかしら?」


「え、あっ、はい。」


「使徒様はそういう気遣いも出来るのね♪」


「いや、まぁ、あははは。」


ラグナは笑って誤魔化すと『またね』とイルマと別れたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る