第240話

「お腹いっぱいで動くのがしんどいな。」


「私も食べ過ぎたかも……普段着てる服とは違うからキツい……」


食事処『漁村』にて金目鯛の煮付けやら秋刀魚の囲炉裏焼き、エビっぽい何かの囲炉裏焼きなど普段食べれないような料理が多々あったので限界まで食べれるだけ頼んでしまった。


「お待たせしました~。」


神殿騎士の2人にも声をかける。


どうやら2人とも既に食事は終わっており、飲み物を飲みながらくつろいでいた。


でもさすが神殿騎士。


任務中だからとアルコール類は一切飲んでいなかった。


お会計を済ませると神殿騎士に付き添われながらエチゴヤの宿へ。


「本日はいろいろと行動を縛ってしまい申し訳ありません。」


「いえいえ。こちらこそいろいろと長時間お待たせして申し訳ありませんでした。それにあの食事処を教えて下さり助かりました。本当に美味しかったですよ!」


「女将さんに伝えておきますよ。今日紹介したお客様が喜んでいたって。ではまたご縁がありましたら我々はすぐに向かいますので、よろしくお願いします。」


「本当にありがとう御座いました!」


神殿騎士2人に別れを告げて宿へと入る事に。


「お帰りなさいませ。ではお部屋までご案内しますね!」


突然後ろから話し掛けられてビクッとする2人だが、エチゴヤの宿の従業員に案内されながら宿泊先の部屋へ階段を上がって行く。


『あれ?いったい後何回階段を上がって行くんだ……?』


イルマは階段を上がり初めてすぐに違和感に気がつく。


一階でもない。


二階でもない。


もしかして三階?と思ったがそのまま階段をのぼっていく。


『う、嘘だろ……』


あれよあれよと登り続けた結果、到着したのは最上階。


一般人ではどれだけお金を積んでもそう簡単には泊まれない部屋。


「な、なぁ。本当にここなのか……?」


「そりゃ驚くよね。僕だって驚いたもん。」


「お、驚いたってこの部屋を選んだのはラグナじゃないのか?」


ラグナの言い方に違和感を感じるイルマ。


どこか他人行儀な感じがする。


「……いろいろあったんだよ。」


ラグナは苦笑いするだけ。


「お連れ様のお荷物はお部屋に置いてありますので~。ではごゆっくり~。」


ニヤニヤっと笑いながら立ち去る従業員には苦笑いしかない。


何をすると思っているんだ。


何を。


「とりあえず部屋を案内するよ。」


ラグナは驚いて固まっているイルマの手を取ると部屋を案内していく。


ラグナが驚いた様にイルマも感動していた。


「いきなり部屋に入ってすぐにこの景色かよ……本当にこんな部屋に泊まったって友達に話をしても信じてくれないよな~。」


イルマは部屋に入ってすぐ目の前に広がるオーシャンビューに心を奪われていた。


何部屋もある部屋を案内していく。


「そしてここがお風呂だよ。」


ラグナに案内されながらお風呂場へと向かうイルマ。


「わぁぁ~!すっげぇ!!」


巨大な露天風呂にテンションがあがっている。


「風呂!風呂が外にあるのかよ!」


テンションがあがるイルマに対してラグナは一つ気がついてしまう。


『やばいな。お風呂の時間はきっちりと分けないとな。男女に分かれて使うように考えられてないし。』


若干ドキドキしてしまうのは男だもん。


仕方のない事だろう。


「そしてここが寝室だよ。」


ラグナはすっかり忘れていた事が一つ。


「おぉ!デカいベッド!何人も寝れそうなくらいデ……」


話してる途中でイルマが固まる。


そして顔が真っ赤になっていく。


「つ、つまり私とラグナは今日……ここ……」


「だ、大丈夫!部屋はいっぱいあるから!俺は他の部屋で寝るから!」


ラグナはラグナでテンパっていた。


堂々と寝室だよ!と部屋を案内してしまったのだから。


そして案内された部屋にあるのは巨大なベッドが一つ。


イルマが勘違いしてしまうのも仕方無いだろう。


「私が他の部屋で寝るよ。だってラグナが泊まってる宿だろう?それなら寝室はラグナが使うべきだ。」


何を言っても引いてくれないイルマに折れてラグナは仕方なく寝室で寝ることになった。


そして改めて海が見える部屋で寛ぐ2人。


「それで……いったい何があったんだ?」


イルマに対してどこまで話したら良いのだろうか。


「どうせ、何か隠そうかと思ってるんだろ?私だってもう11歳だ。学園でもいろいろ学んできたし、ある程度なら理解出来る。だから出来れば隠さずに全部話をしてほしい。」


真剣な目でラグナを見つめるイルマ。


『イルマには全部話をしてもいいか。』


この子には隠し事なんてやめよう。


そんな気分になってきた。


そして……


ラグナは前世の記憶があることも全て話すことを決心するのだった。

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