第241話

「何から話せばいいのかな。」


イルマにいざ説明と思うと緊張してくる。


「全部。私は全部知りたい。」


「……時間掛かるよ?」


「その為のお泊まりだろ?」


「……確かに。」


ラグナは少し緊張した面持ちで息を整える。


「……イルマは今とは違う記憶があるって言ったら信じる?」


「今とは違う記憶?それってどういう意味?」


やっぱり普通は意味がわからないよな。


「……僕にはこの世界とは違う世界で生きてきた記憶があるんだ。」


「この世界とは違う?」


「そう。全くの別世界。その世界で18年、いや、もう少しで19歳だったか。とにかく別の世界で生きてきた記憶があるんだよ。」


イルマは真剣にラグナを見つめる。


「……嘘じゃないんだな。私には別世界ってのは全く想像出来ないけど、ラグナが嘘を言ってないことだけは信じる。」


「信じてくれてありがとう。まぁとにかくその別世界で死んじゃってさ。イルマは僕が父さんと母さんとは血がつながって無いことは知ってるよね?」


「……うん。」


やはりイルマもこの事は知っていたのか。


「僕は前世で死んだ後に、この世界に転生させて貰うことになったんだよ。」


神様や女神様の名誉のためにも悪神については話さない事にする。


全て話すとはいえ、悪神については話す必要もないから。


「転生?」


「あぁ、そっか。分かりやすく言うと、死んだ記憶を持ったまま赤ちゃんから人生をやり直すって事かな。」


「それが転生かぁ……でもそっかぁ……やっとわかったよ。同じ歳なのに、実はずっとラグナの事を年上のお兄ちゃんの様に感じてたんだ。つまり外見は私と同じ歳だけど中身はもっと年上だったって事かぁ……なんだかエルフみたいだな!」


イルマの言うとおり精神面と外見のチグハグさはエルフのようだな。


「それじゃあなんでラグナが使徒様に?」


「訳あってナルタの商業ギルドに寄ったんだよ。その時に商業ギルド神殿から神託が来たって言われてさ。そのまま神殿に連れて行かれて祭壇の間に行ったら……マリオン様に会ったんだ。」


「えっ!?神託を聞いたんじゃなくて実際に会ったのか!?」


「うん。会ったよ。祭壇の間にいたはずなのに気がついたら全く違う場所にいてさ。そこにマリオン様がいらしたんだ。綺麗なお姉さんって感じだったよ。」


「すげぇ!!女神様ってやっぱり本当にいるんだな!」


「ちなみにマリオン様は地上にも降臨なされたよ。」


「えーー!いつ!?ラグナは見たのか!?」


「アオバ村で亡くなったみんなを送り火で見送るときにね。その時にマリオン様と……」


初めて話をするかもしれない。


俺の本当の契約相手『サリオラ』の事を。


「僕と契約しているサリオラって子が地上に降臨したんだ。」


「それじゃあ私の両親や村の皆は女神様に送ってもらえたのか……亡くなったのは辛いけど……でも女神様に見送ってもらえるなんて光栄な事だよな。それでサリオラ様?ってのはどなたなんだ?」


サリオラ……


サリオラって今立場的には何なんだ?


女神見習いって感じだよな。


「サリオラは女神様の見習いって感じかな。いろいろあって僕と契約する事になったんだよ。」


「へ~。女神様にも見習いってあるのかぁ。でもラグナはマリオン様の使徒じゃなかったのか?」


何て説明したら良いのだろうか。


「マリオン様からは加護を少し貰ってるけど、何て説明したら良いんだろ。マリオン様からは前世の世界の料理をこの世界でも再現出来たら登録して欲しいって言われているくらいなんだよ。別に強制じゃなくて空き時間にでもって感じでさ。一応何品かは商業ギルドに登録したけど。」


「つまりはマリオン様がラグナに願ったって事だろう?じゃあやっぱりラグナはマリオン様の使徒って事じゃん。マリオン様の願いをラグナは叶えているんだもん。凄いなぁ……私もマリオン様には一度会ってみたいな。」


「どうしてマリオン様に?」


「だって、私の両親をわざわざ降臨してまで魂を送ってくれたんだよ?お礼を伝えたいじゃん。」


マリオン様かぁ……


最近連絡すら取れないんだよなぁ。


天界が忙しいみたいだけど……


本当に何があったんだろう。


「マリオン様はいろいろと立て込んでるみたいで僕も連絡が取れないんだよ。あれならばマリオン様の神殿で祈ってみればいいんじゃない?想いは届くと思うよ。」


「そっかぁ。なら明日神殿まで付き合ってくれない?神殿に寄ってから学園に帰るよ。」


そうして明日の予定は決まったのだった。

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