第222話
賢者リオからダンジョンの存在を聞いてワクワクするラグナ。
『ダンジョンって言葉を聞いてから目がワクワクしてるよ~。やっぱり気になる?』
異世界。
そしてダンジョン。
初代勇者ヒノもこんな気持ちだったのだろうか?
『懐かしいなぁ~。日野っちもダンジョンが存在するって初めて知った時は、今のラグナ君のように目がワクワクしてたからねぇ~。そんでもってエチゴヤに頼み込んで尋常じゃないほどの食料やら水やらをため込んでたっけ~。』
やはりダンジョンって言葉には凄まじい魅力がある。
「ダンジョンってどこにあるんですか?遠く?それとも近く?」
『も~。めっちゃワクワクしてるじゃん~。ちなみに……ダンジョンはねぇ~……入れないんだよね~w』
「えっ……」
ダンジョンに入れない……
嘘だろう……
『日野っちが魔王を倒したあとに判った事なんだけどねぇ~。ダンジョンの入口が無くなってたんだよ~。当時はまだ何十、何百って冒険者がダンジョンアタックしてたのにね~。その冒険者を飲み込んだまま入り口が無くなっちゃったんだぁ。』
ダンジョンの入口があった場所を無理矢理こじ開けようとした事もあったらしいが、強力な結界のようなもので封印されているのかビクともしなかったらしい。
勇者ヒノの全力の攻撃でも全くビクともしなかったとか。
ダンジョン内にいたと思われる冒険者は、そのまま一度も姿を表すことなく死亡扱いになったらしい。
『一応今もダンジョンっぽい物はあるけどねぇ。ただそれは地下深くまで続く洞窟に魔物が住み着いただけだからさぁ。だからお宝なんてものは無いし、魔物臭いしであんまりお勧め出来ないかなぁ。』
さすがにまがい物のダンジョンには興味が沸かなかったラグナは、賢者リオから勇者ヒノと共に行っていたダンジョンアタックの話を聞くことが出来た。
『こんなにも長い時間誰かと会話したのなんて本当に久々だよ~。ありがとね~!』
「こちらこそ、いろいろ話を聞けたので助かりました。」
『あ~、そうそう。ヨハム公爵からパクってきた机だけど、明日の朝に商業ギルドに寄って貰えるかな?ギルド長には話をしておいたからさ。』
リオはラグナと会話をしながらも商業ギルドのギルド長に話を通していた。
『ついでにマリオン商業学園の見学手続きもしといたから~。あれなら学園に通うことも可能だよ~。』
学園という言葉を聞くと、どうしても胸がチクッとする。
魔法学園の仲間の姿が脳裏に浮かんでいた。
『まぁ~無理にとは言わないさぁ~。後はねぇ、お話に付き合ってくれたお姉さんから君にプレゼント。』
リオがそう言うと、どこからかガコンと言う音がした。
そしてふよふよと浮かびながらラグナを目の前に。
「これは……?」
目の前に浮かんでいるのは高級感漂う装飾がされている木札。
特に文字などは書かれていない。
『ラグナ君、まだ宿の予約とかしてないでしょ~。とりあえず一週間分は予約したからそれを見せれば大丈夫だよ~。』
本当に賢者リオは口調を印象とは違って、本来は気が利くお姉さんだったのだろう。
「あ、ありがとうございます。」
『ちなみにね~。場所はここだよ~。』
街の地図が浮かび上がると、赤く点滅している場所が表示されていた。
「わ、わかりました。最後に2つほど質問よろしいですか?」
『ん~?なに~?彼氏ならいないよ~。こんなんだけど募集中~。』
「えーっと……彼氏はいい人が見つかるといいですね。ってそうじゃなくて……さっきから疑問だったんですけど、この浮いたり動いたりって魔法ですか……?」
さっきからずっとツッコミたかった。
なんで浮いたり動いたりしてるんだよって。
『これ~?これはねぇ……内緒~。もっと仲良くなったら教えてあげるよ~。』
「……わかりました。後は、この街に入ってから、誰かから監視されてるような視線を感じたのですが……それらしき人が見つからなくて……」
『視線ー?あぁ、あれね。あれはあたし~。生ラグナ君をずっと見てたの~』
あの、ねっとりとした視線は賢者リオが見ていたからだった。
『あとはもう無いかな~?とりあえず、ラグナ君は特別にここまで自由に出入り出来るようにしておくから、暇だったら遊びにおいで~。』
「わかりました。ありがとうございます。また、遊びに来ます。」
そしてラグナは賢者リオが予約してくれたらしい宿へと向かうのだった。
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